大島かおるの市議会リポート
持続可能なまちづくりへの歩み
―コロナに「負けない」未来を―
コロナ禍の一年が明け、早や三月。昨年からの「集中対策期間」が継続され、先の見通しも立たない状況の中、不安や苛立ちがつのる毎日です。私の手帳も、昨年の夏以降は議会日程を除くとほぼ真っ白。まさに「自粛」の日々が続いています。
札幌市議会では、この一年で7回の臨時議会を開催。一人10万円の定額給付金を含めると、約3600億円の補正予算を議決して、医療体制の強化、事業者や市民生活の支援などに全力で取り組んできました。
会派としても3度にわたり秋元市長への緊急要望を行い、補正予算に反映してきましたが、菅政権の対応は後手に回り、機動性や緊張感に欠けるなど、私たちの不満は溜まる一方です。
10都府県の緊急事態宣言、北海道の集中対策期間の解除がいつになるのか、この原稿を書いている時点では見通せませんが、我慢の日々はまだまだ続きそうです。雪解けの喜びや、北海道ならではの初夏の楽しみを期待しながら、もうしばらく、それぞれが地道に感染予防対策に取り組みましょう。
2月17日からは、2021年第一回定例市議会が始まり、一般会計では過去最大となる1兆1140億円、更に新型コロナ対策として294億円、国の経済対策に関連して125億円の補正予算が提出されました。市民生活の安心と未来のまちづくりにつながるよう、議論に臨みます。
ワクチン接種をめぐって
コロナ感染予防対策の「切り札」とされているワクチン接種が、ようやく始まりました。まず、国立病院など医療の中核を担う全国約100カ所、4万人の医療従事者に対して先行実施。これは国の責任で行われます。次いで全国370万人の医療従事者については、都道府県の管轄。その後、4月からとされている65歳以上の高齢者、持病のある人、高齢者施設などの職員、60~65歳、16歳以上の一般へと広げられて、市区町村が担うことになります。
集団免疫
感染拡大に有効なワクチン接種率は人口の60%と言われています。すべてが順調に進んでも達成は秋ごろと予想され、過大な期待は禁物です。
接種体制
札幌市の65歳以上人口は50万人超。仮に8割の人が接種を希望したとしても、延べ80万回の接種が必要となります。高齢者は「かかりつけ医」を中心に進めるとしていますが、1日1万人でも3カ月。気の遠くなるような作業が予想されます。
予約システム
就任早々の担当大臣が、接種記録のマイナンバーへの紐付けを打ち出してひんしゅくを買いました。昨年来の、マイナンバーカード登録窓口の混乱などどこ吹く風。現場に無用の負担を押し付けないよう願いたいものです。
努力義務
ワクチン接種は希望者が対象とされていますが、特別措置法では努力義務ともされていますす。感染者や医療機関に対する差別やバッシングが大きな社会問題となりました。接種を望まない人の権利が守られるよう、十分な対策が求められます。
ワクチンの入手スケジュールや接種開始時期が定まらず、保管や接種場所への輸送体制、医師や看護師の確保、予約や相談窓口の整備など、自治体は多くの不安を抱えたまま繁忙期の3月4月を迎えます。
「東京2020開催はコロナに勝った証し」―繰り返される政府の決意表明に惑わされないよう、慎重かつ丁寧な準備が必要です。
反省や点検のないまま…
2度目の緊急事態宣言の発出を巡る政府の混迷は、Go To トラベルの一時停止の遅れや、首相自身のステーキ会食、自民党国会議員の高級クラブはしご問題と合わせ、政治そのものへの信頼を削ぐ結果となっています。
昨年4月7日から5月25日までの緊急事態宣言は、当初の東京都や大阪府など7都府県から全国へと広がり、日本経済は大きなダメージを受けました。それがトラウマとなって「宣言は出来るだけ避けて、ワクチンに期待したい」「二度と悪夢は見たくない」と、逃げ回ったというのが実情ではないでしょうか。
今冬に大きな感染拡大の波が来ることは専門家からも繰り返し指摘されていました。検査や医療体制の整備をはじめ、区域指定の在り方、営業自粛や施設の使用制限、支援金の基準などについて十分な議論と検討の時間があったはずです。
その責任を放棄し、国会での議論にもフタをしてしまった菅政権のコロナ対策は、厳しく批判されなければなりません。
なぜ、罰則?!
年が明けての通常国会を前にして、感染抑止に応じない感染者や飲食店に罰則を科す法改正案が、大きな議論となりました。
「罰則は差別や偏見を助長する」「まず十分な補償が必要」「罰則によって感染抑制はできない」「行政との信頼関係を損なう」など、世論調査では約7割が反対。政府の専門家会議でも、多くは慎重な意見だったといいます。
刑事法学者からは「著しい私権制限や人権侵害につながる罰則は、なぜ必要かという立法事実を示すことが必要」との批判を受け、結局、懲役や罰金という刑事罰は削除されて、行政罰(過料)とすることで決着を見ました。しかし、行政罰を科すのは自治体であり保健所の役割となります。現場の状況を見れば、入院や検査を拒否する人の事情や、休業や時間短縮に応じない飲食店の営業実態を公平に調査し判断を下すことなど、ほぼ不可能と断言せざるを得ません。まずは、十分な検査・医療体制の整備と、事業者が安心して要請に応じられるきめ細かな対策が求められます。
自助・共助・公助
「自分でできることはまず自分でやってみる。そして家族、地域で互いに助け合う。そのうえで政府がセーフティーネットでお守りする」―菅首相の所信表明は、自助や自己責任をまず求める強者の論理として批判されました。
困ったとき、少しの助けが欲しいとき、共助(地域での支え合い)や公助(公的なサービス)があることによって頑張ることができる。私たちが生きている社会は、そのつながりがあるからこそ成り立っているのではないでしょうか。不安な社会、貧困や格差が広がっている時代だからこそ、共助、公助の果たす役割や領域が広がっています。コロナによる解雇や雇い止めが生活を直撃している一人親家庭や学生、フードバンクや子ども食堂の広がりの背景に目を向けると、おのずと政治が果たす役割は明らかです。
持続可能な都市へ
新型コロナウイルスの感染は、グローバル化した人の移動によって世界に広がり、大都市を中心に急拡大しました。
地方都市における医療機関や高齢者施設でのクラスターによる医療ひっ迫と異なり、医療資源が集中し安全なまちであるはずの東京都が、医療崩壊寸前の危機的状況であったことは、今後の札幌のまちづくりの教訓としなければなりません。それは、国際化・情報化を旗印にしたビルの高層化や大企業の集中と、働く人々の集積による過密な都市構造が、ウイルスに対する「もろさ」につながっているではないか、ということです。
敗戦後、私たちは成長と効率を求めて走り続けてきました。人のつながりが希薄になり、大切な時間も機械やお金に吸い取られていく時代に生きています。東日本大震災―福島原発大事故から10年、そしてコロナ禍の中で、「持続可能な都市」とは何かを、考え続けたいと思います。
秋元市長に2021年度予算要望を手渡す。 |
一般会計予算の概要
東日本大震災から10年
―新たな課題を見つめる―
国土強靭化の名のもとに
この10年間で住宅再建や道路、鉄道、防潮堤などハード面での整備はほぼ完了したといいます。しかし、自治体の再建計画が大幅に縮小されたり、住宅の移転によるコミュニティーの分断や、住民の孤立化が進むなど、新たな課題も明らかになってきています。
復興事業は2021年度から5年間の「第2期復興・創世期間」に移り、岩手、宮城県ではソフト事業に軸足を移すとされていますが、これまでの復興事業の問題点や今後の課題について、厳しい検証が必要ではないでしょうか。
何よりも、東京電力福島第一原発事故で放射能に汚染された地域では、立地自治体を中心に約3万7千人が避難生活を続けていること、その6割以上が「もう故郷にはもどらない、もどれない」と考えていることを忘れてはなりません。
「復興五輪」と名づけられた東京2020は、いつの間にか「コロナ勝利五輪」へと衣替えしてしまいました。政治的思惑に翻弄され、震災の記憶の風化が加速していくことのないように、気持ちを新たにしたいと思います。
行先のない核のゴミ
昨年、寿都町と神恵内村の文献調査で注目された「放射性廃棄物」。いわゆる「核のゴミ」にも色々あるのをご存じでしょうか。
指定廃棄物
福島原発の事故により、放射能汚染は全国に広がりました。関東地域の自治体では、焼却灰や下水汚泥などのうち1㎏あたり8000ベクレル以上のものを指定廃棄物として一時保管しています。都道府県に1カ所の長期管理施設と処分場を建設することになっていますが、全く進んでいません。
除染廃棄物
表土などをはぎ取ったもので、福島県内で約2200万㎥もの量になります。今は原発周辺の仮置き場に野積みされ、中間貯蔵施設に30年、その後「県外で」最終処分との計画ですが、見通しは立っていません。
汚染水
原発事故では核燃料が溶け落ちたため、取り出すために冷やし続けなければなりません。
そのために放射能を含んだ冷却水が1日当たり150t。累計は120万t、タンクにたまり続けています。国は海洋への放出を計画していますが、風評被害を恐れる漁業者の猛反対にあっています。
そして、国が進めている「核燃料サイクル」、通常の原子力発電所の運転によって、毎日増え続ける「低レベル」「高レベル」の核廃棄物があります。
東京2020大会招致のために「(福島原発事故処理)はアンダーコントロール」と言い切った元首相、50年間にわたって「原発は安全」「核のゴミは科学が解決する」と言い続ける政治家・学者・電力会社の皆さんに、真実が見えているのでしょうか。
コロナ禍で困窮する学生に食の支援を
―ほっかいどう若者応援プロジェクト―
地方や道外から札幌・北海道に学びに来ている学生の多くは、学費や生活費をアルバイトで補っています。しかし、新型コロナの感染拡大にともなって収入が大幅に減少し、食事を減らしたりしながら、学業の継続や将来への不安を募らせています。
連合北海道、北海道生活協同組合連合会などが中心となって、一人暮らしの学生が学びと生活をあきらめることがないよう、応援の気持ちを込めて、ささやかな食の支援を行います。第1弾の北海道大学では、1000セットが学生・留学生に手渡されました。今後、市内・道内の各大学に支援の輪を広げる予定です。協賛金・寄付金については左記まで。
事務局・問い合わせ先
連合北海道
電話011・210・0050