大島かおるの市議会リポート
政治不信と未来への希望
―コロナの時代に生きる―
緊急事態宣言やまん延防止特別措置そして集中対策期間―長い長い「自粛」期間を経てようやく衆議院選挙と思いきや、直前、突然の首相交代。気がつくといつの間にか12月、冬の便りを聞く季節になりました。
昨年2月5日のダイアモンド・プリンセス号での感染判明からおよそ1年10カ月。新しいスタートへの熱気はあまり感じられませんが、多くの課題が議論の俎上に上り、政策決定の正当性が問われ続けました。支持率が急落する中での二人の首相の退陣は、コロナ対策「失敗」の責任を取ったということなのでしょうか?
ウィズコロナ、アフターコロナと言われる時代の中で、日本社会の構造的な問題が明らかにされ、矛盾が集中したのは非正規労働者であり、その中でも女性や学生、外国人労働者が大きな影響を受けています。そして子どもたちも置き去りになりました。今後の課題を探ってみたいと思います。
町田副市長に重度障害者のワクチン接種に関する要望書を提出 |
子どもたちは今
この数字を見ると、胸の締め付けられる思いがします。厚生労働省によると、20年度中の全国の児童相談所が対応した児童虐待相談件数は過去最多の20万5029件。文部科学省の調査では、同年度に自殺した小中高生は過去最多の415人、うち女子高校生は前年度から倍増して131人。
親の経済状況の悪化やテレワークと子どもの休校措置や短縮授業が重なり、家庭内でのトラブルや暴力が増えていることが要因だといわれています。
家族の介護の責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートを行っている18歳の未満の子ども―ヤングケアラーへの支援が急がれています。厚生労働省と文部科学省が行った緊急調査によると、「世話をしている家族がいる」と回答したのは、中学2年生5・7%、全日制高校生4・1%でした。札幌市は今後の支援について検討すべく、現在詳細な実態調査を行っています。
「老々介護」や「介護離職」など、これまでも問題とされてきた家族介護の在り方についての、根本的な見直しが必要なのではないでしょうか。
コロナ以前からの課題である子どもの貧困対策や居場所づくりなどについても、一刻も早い改善と中長期的な対策が望まれ、まさに今「所得再分配」が求められています。
そんな中で持ち上がってきた、18歳以下の子供への10万円給付問題。経済対策なのか生活困窮者対策なのか、はたまた子育て支援なのか。中長期の展望を欠き政策目的があいまいなまま、1・8兆円の新たな借金を次の世代に付け回しすることが、果たして公正な「分配」と言えるでしょうか?!
デジタル社会とは??
デジタル技術の急激な進化は社会を大きく変え、AI(人工知能)やスマートフォン、巨大IT企業による情報の占有と支配など、私たちの日常生活とも複雑に絡み合い、その功罪の見極めが大切になってきました。
政府は9月にデジタル庁を発足し担当大臣を配置して、デジタル社会の実現を成長戦略の中心に据え、コロナ化で浮き彫りになった「デジタル敗戦」の失地回復に躍起になっています。自治体に対しては情報システムの標準化とマイナンバー普及の大号令をかけ、「デジタル田園都市構想」なるものも打ち出されました。
一方、生産性の向上や手続きの効率化への期待はあっても、それが目指す社会像が見えない不安が渦巻いています。
今年4月まではマイナンバーカード作成に5千円分のポイントが付きました。今度は新たに、健康保険と銀行口座をひも付きにすると最大2万円分のポイント付与へとグレードアップ。ニンジンをぶら下げてでも無理やり進めるやり方は、制度への不信感をより強くすることにつながらないでしょうか。
急きょ前倒しで進められた、小中学校でのパソコン一人一台を実現する「GIGAスクール構想」は、現場の混乱や多忙化をもたらし地域や収入による格差を生み出していないでしょうか。
2025年度までに地方自治体の17業務について情報システムの標準化・共通化を進めるとされています。業務の見直しやサービス向上の掛け声の下で、デジタル部門への過剰な負担や対人サービス部門の軽視など、総務省が進める「公務員の定員削減」の「錦の御旗」となる危険はないでしょうか。
デジタル技術は生活を守る手段として使われるべきであり、目的と手段を逆転させてはいけません。
過ちの責任はどこに?!
アベノマスク
最近になって、約3分の1(115億円相当)が倉庫に眠っていることが明らかになりました。当初から「小さい」「ガーゼの防止効果は?」「発注先が不明朗」などの批判がありながら、軌道修正がきかずに突っ走ってしまった結果です。
マスク不足が解消されつつあった時期に、わざわざ追加発注された8000万枚。行き先も決まらず、保管の倉庫代が年6億円。アワと消えてしまう運命なのでしょうか。
GoToトラベル
「感染拡大の引き金になる」との医療関係者や自治体首長の危惧や、世論調査では70%以上の開始反対にもかかわらず、当時の菅官房長官の肝入り事業ということで見切り発車をしました。
観光業界からは喝さいを浴びたこの事業も、事業予算の2割を占める3000億円の巨額な委託費が批判にさらされ、高級ホテル・旅館や大手旅行会社が優遇されるような制度設計も、問題視されました。
そして、政府分科会がトラベル事業の見直しを提言して3週間後の12月14日、新規感染者数が全国で3千人を突破してようやく停止の表明がされ、翌年1月7日、首都圏では2度目の緊急事態宣言が発出されることになります。
PCR検査の抑制
感染の全国的な広がりが明らかになってくると、全国の医療関係者や自治体からは、「感染者の早期の発見と感染予防対策にはPCR検査体制の充実・拡大が必要」との声が寄せられていました。
新型インフルエンザが流行した2010年の総括会議報告書には、「地方衛生研究所の検査体制の強化」が示されているにも関わらず、厚労省は無策であったことが明らかになっています。なぜ、大学病院や民間会社をフル動員した検査体制が構築できなかったのか?行政改革の名のもとに、人員削減、コスト削減の対象とされてきた保健衛生部門の強化が求められます。
ワクチンが足りない
4月に「希望する高齢者の7月末接種完了」、5月に「1日100万回接種」の目標を掲げた菅前総理。総務省の幹部を通じて直接自治体への協力要請を行い、集団接種や職域接種が軌道に乗ったと思いきや、6月23日に「職域接種申請の一時停止」、7月9日には「自治体への供給量の見直し」が表明されました。
一方この時期は、5月上旬に全国で7千人を超えた新規感染者数が、6月初めには3千人を割り込み、東京の緊急事態宣言の解除が急がれていました。「コロナに打ち勝った証しとしての東京2020」の有観客開催へと前のめりになり、「五輪ありき」の筋書きの中で全てのコロナ対策が考えられていたといえます。
医療崩壊
爆発的な感染拡大と医療崩壊ともいわれる中、医療現場の限界を超えた努力にもかかわらず、感染者の入院病床が不足し受け入れ先が見つからない状況が、テレビや新聞で繰り返し報道されたことは記憶に新しいと思います。
政府は、入院対象を重症化リスクの高い患者に重点化し他は原則、宿泊療養又は自宅療養へと方針転換を図りましたが、重症化の判断基準や療養者の容態急変、看護体制などに大きな課題を残しました。
さらに、発表される病床確保数と実態の落差はなぜ生じるのか、人材の育成と確保、公立病院の機能強化についての速やかな検討が必要です。
地球温暖化とゼロカーボンへの取り組み
1・5℃未満への道
10月31日から11月12日までイギリスのグラスゴーで開催されたCOP(気候変動枠組み条約第26回締約国会議)で、産業革命前からの気温上昇を1・5℃未満とすること、石炭火力発電を段階的に削減することが合意されました。
2015年のパリ協定で「努力目標」とされた「1・5℃未満への道」が、目標の策定義務化や進捗調査に法的拘束力を持たせることにより、実現へと一歩踏み出すことになります。
現行政策のままなら2・7℃の上昇が避けられないとの試算が明らかにされ、世界中で起きている熱波や洪水が「異常気象」ではなく「日常」の出来事になり始めており、その原因は「地球温暖化=CO2の排出」にあることを国連機関が初めて断言するなど、気候変動への危機感が一気に高まったことが背景にあります。
一方、先進国と途上国の対立や世代間の影響のちがい、貧困層へのしわ寄せなど、気候変動で不利益を強いられる側が、その原因である化石燃料を大量消費してきた側の責任を問う、「気候正義」を求める声が大きくなっているといいます。
今回の会議では、先進国による途上国の温暖化対策への資金援助を、25年までに倍増することも合意しましたが、今後は森林伐採や鉱山開発、ダム建設など、環境破壊につながる行動にも注目しなければなりません。
無事に20周年を迎えた市民風車第1号『はまかぜちゃん』(浜頓別町) |
エネルギー基本計画
日本では、10月22日に第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました。
2050年に温室効果ガス排出の実質ゼロや、30年度の排出量を13年度比で46%削減するとの政府目標の達成に向けた道筋を示すものとされています。
第5次基本計画に比べて、ようやく先進国並みの長期目標を掲げ、再生可能エネルギーの主力電源化が掲げられたとはいえ、課題はなお多いといえます。
第一は電源構成です。
2030年の目標は再エネ36~38%と大幅に増加しましたが、これは既にドイツが達成した数字であり先進諸国から大きく後れをとっています。原子力の20~22%は、現存する原発がフル稼働する計算となり、現実的ではありません。石炭火力19%は、先進国が全廃に向かう中で、日本の本気度が問われる目標となっています。
何よりも、冒頭で福島原発事故は「エネルギー政策を進める上でのすべての原点」と明記しているにもかかわらず、原発の位置づけはあやふやなままです。
第二は制度改革です。
2020年4月から発送電分離がスタートしました。しかし、送電網の開放や増強により新規参入の垣根を低くするなど、さらなる制度改革が必要です。
九州電力管内では、出力調整のために再エネ電力が一時停止させられる事態が発生して注目を浴びました。経済産業省が発表した発電コスト試算においてさえ、2030年には原発と再エネが逆転するとされる中で、世界で起きている劇的な変化への対応力が問われています。
第三は火力依存です。
CCS(炭素回収・貯留)や水素・アンモニアへの燃料転換などの技術革新によって、火力発電を維持するとしていますが、技術面やコスト面からも不透明といえます。
「あらゆる選択肢を追求」「複数シナリオの重要性」などの掛け声の下で、政策転換のタイミングを誤ってはいけません。
環境首都さっぽろへ
札幌市は2021年3月に、これまでの「温暖化対策推進計画」「エネルギービジョン」「市役所エネルギー削減計画」を統合・改定して、2050年にCO2排出量実質ゼロを目標に、新しく「札幌市気候変動対策行動計画」を策定しました。
①SDGsの目標と連動して経済・社会に対しても効果をもたらす②道内の豊富な再生可能エネルギーや資源を活かす③更新時期を迎える公共施設や民間ビルの建て替えに合わせた省エネ・再エネの導入─を取り組み推進の視点としています。
そのために、30年にCO2排出量の16年比55%削減を達成するとして、省エネの部では基準以上の省エネ性能を持つ新築建築物の割合を80%、再エネの部では市内電力消費量に占める再エネの割合を50%、移動の部では自動車台数に占める次世代自動車の割合を60%、資源の部ではごみ焼却量の約10%削減、などの成果指標を掲げています。
目標の実現には、ライフスタイルの変革や技術革新はもとより何よりも「市民の自発的な参加」が欠かせません。個々の政策や事業の推進力としての役割はもちろん、経験をフィードバックし政策へと結びつける「新しい民主主義の回路」をつくりだす必要があるのではないでしょうか。
ミャンマーに平和と自由を‼
―札幌市議会で意見書採択―
ミャンマーで2021年2月に発生した軍事クーデターから10カ月が過ぎようとしています。北海道には約900人のミャンマー人が留学生や技能実習生として暮らしており、札幌においても道内在住のミャンマー人の呼びかけによる「ミャンマーの平和と自由を求める」集会やデモが行われています。
札幌市議会は、7月8日第2回定例会の最終日に、国への「ミャンマーにおける民主的な政治体制の早期回復のための行動を求める意見書」を、全会一致で採択しました。ミャンマー国軍に対して「暴力の即時停止と人権の尊重、不当に拘束された人々の解放」を働きかけること、日本在住のミャンマー人が安心して働き、学び、暮らせるよう必要な施策を講じることを求めるものです。
しかし、国際社会からの非難や国民の抵抗にもかかわらず国軍や警察による暴力や弾圧が続き犠牲者は千人を超えて、現地の状況は悪化の一途をたどっておりミャンマーの民主化運動は孤立を深めているといわれています。
ミャンマーへの政府開発援助(ODA)が世界最大と言われる日本の行動が問われており、私たち一人一人が関心を持ち続けたいと思います。
平和と自由を求める道内在住のミャンマーの人々 |