2020年3月13日金曜日

薫風54号から

大島かおるの市議会リポート
 薫風 第54号 2020年3月5日
豊かさを問う一年に
―ゆるぎなく、一歩ずつ―
記録的な暖冬・少雪の年末年始。冬の観光・レジャーや除雪業者への影響は?と、頭を悩ましていると、二月に入ってからの降雪であっという間に昨年並みとなりました。
自然は気まぐれ。気は許せません。

秋元市長は年頭の職員向けのあいさつの中で、「大きな時代の転換期を前に、アクションプランに掲げた事業の着実な実行と、市民、企業、北海道や他の自治体とともに力を合わせる」との思いを込め、『和』の一字を掲げました。
2月18日からは、過去最大となる一般会計1兆295億円、特別会計、企業会計を合わせると1兆6709億円の予算案を審議する、2020年度第一回定例会が始まりました。未来につながる政策・事業となるよう、議論に臨みます。
昨年12月、秋元市長に予算要望を手渡す


民主主義が壊される!?
今年の干支は「庚子(かのえ・ね)」。その意は「新たな芽吹きと繁栄の始まり」とされています。しかし、国会中継や日々の報道を見てその気持ちが萎えるばかりか、寒々とした気持ちになる方は多いのではないでしょうか。
SDGs(持続可能な開発目標)やCO2削減への取り組み、税や社会保障の将来像など議論すべき課題が山積する中、昨年臨時国会では、公職選挙法違反で二人の大臣が辞任。そして「桜を見る会」をめぐる様々な疑惑。安倍政権が成長戦略の一つと位置付けるIR誘致をめぐっては収賄容疑で国会議員の逮捕。北海道の空をオスプレイが自由に飛び回る。東京高検検事長の定年を勝手に延長する。新型コロナウイルス対策会議を私用で欠席する大臣。などなど、説明責任や知る権利が無残に削ぎ落とされていきます。
何度も繰り返される「真摯に」「丁寧に」―言葉の意味が正しく理解される日は来るのでしょうか。

かすむ地方創生
安倍政権の目玉政策の一つである地方創生が新たなステージに入ろうとしています。2015年にスタートした「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に沿って、札幌市も「地方版総合戦略」である、「さっぽろ未来創生プラン」を策定し、取り組みを進めてきました。
しかし、札幌市も当初掲げたKPI(数値目標)の半分以上は達成したとしていますが、少子化と人口減少の一方、大都市への人口集中が続くいびつな構造には、全く歯止めがかかっていないのが現状です。

今年からスタートする第2期では、新たに「関係人口の創出・拡大」「Society5・0(未来技術)の推進」「SDGsの促進」を掲げますが、その成果には早くも疑問符が投げかけられています。
国が号令をかけ、地方自治体にその結果責任を押し付けるような手法が目につく安倍政権では、政策の深化は望むべくもないということでしょうか。
札幌地区連合新春旗開きでご挨拶











5G(ファイブジー)の未来
最近「5G」という言葉を耳にすることが多くなりました。大容量のデータを瞬時に送受信できる通信規格で、第5世代を意味する「5G」は、2020年に商用サービスが始まります。
遠隔地の画像診断など医療分野の実証実験の様子を、テレビなどで見た方も多いかと思いますが、工場や農業の効率化、交通システムへの応用、さらには行政サービスにおいても日常生活との距離を縮め利便性を高めるとの期待が高まっています。
一方、基地局や端末機器の整備には多額の費用を要することや人材育成、電磁波による健康被害が心配されるなどの指摘もあり、世界が注目する大きなビジネスチャンスとはいえ、浮かれてばかりはいられません。
「夢」に惑わされないよう、しかし「夢」をしっかり追い続けることができるように、動きをしっかりと注視していきたいと思います。
町田市長に、オスプレイ訓練に関する申し入れ












新アクションプランの着実な実行を
―2020年度札幌市予算案―
 楽観視は禁物

 一般会計予算の概要は下記の通りです。

一般会計予算の概要
歳入では、市内経済の緩やかな回復による納税者の増加によって、市税などの一般財源の伸びが見込まれます。
一方歳出では、災害からの復旧や都市基盤の強化、子ども・子育て支援や経済対策など喫緊の課題への対応に加えて、社会保障関係費や老朽化した公共施設の更新に伴う公債費の増加など、楽観視できない状況が続きます。
このような状況の中で、今年度予算は「アクションプラン2019に掲げる目標の実現に向けたスタートダッシュ予算」と位置づけられ、①安心して暮らせるまちづくり②女性の活躍を応援し子供が健やかに育つまちづくり③人材を育み成長を続ける躍動のまちづくり④魅力と活力にあふれるまちづくり―の4つの体系で編成されています。

次への一歩を
消費増税や新型コロナウイルスによる景気全体への影響や米中貿易摩擦の行方などの不安材料がある一方、世界的な平和の祭典である東京2020オリンピック・パラリンピック大会のマラソン、競歩、サッカーの札幌開催に向けた準備を急ぎ、成功へと力を合わせなければなりません。
来年2月開催予定の第3回国際芸術祭と合わせて、国内、国外から多くの人々が訪れる絶好の機会を最大限に生かして、札幌の美しい街並みと北海道が持つ豊かな自然、食や観光の魅力とホスピタリティ(おもてなしの心)を世界に発信する一年でもあります。
開催都市決定のプロセスが大きく変わった、2030冬季オリンピック・パラリンピック招致に向けた取り組みも、いよいよ正念場を迎えます。競技設備についての基本案は、ほぼ合意ができ、ハード・ソフトを含めて本格的に、これからの札幌のまちづくりの方向性と重ね合わせての議論と、市民合意が求められます。
2度目の開催が、50年後も「まちづくりの大きな成果・財産」として語り伝えられる大会となるように、一歩前へ!!

新型コロナウイルスについて考える
─正しく恐れるとは─

この「議会だより」をお届する頃にはどのような状況になっているか予想もつきませんが、新型コロナウイルス感染の広がりが心配されています。
一方、過剰な報道によって不安がより増幅してはいないか。隔離・収容(クルーズ船の漂流)は適切な対策であるのか。感染を防ぐ有効な対策はあるのか。ネットにあふれる不安をあおるデマや、差別的な発言や深刻さを増す経済的な影響など、冷静な議論と問題点を率直に見直すことが求められています。
また、不安の広がりに恐れをなして政策決定を歪めてしまわないよう、常に感染のリスクと人権・人道とのせめぎあいの中で、判断をしなければならない困難を抱えていることも、理解する必要があります。

基本をしっかりと
ウイルスの発染源や効果的な治療法はまだ不明ですが、ウイルスの大まかな特性は明らかになってきています。
咳やくしゃみによる飛沫及び接触感染。多くは比較的軽症で回復し、症状が出ない場合もある。高齢者や持病のある人は重症化しやすく、死亡例も多い。症状はインフルエンザに似ている。感染力はインフルエンザと同じ程度。
したがって私たちの予防対策は、手洗いとうがい、規則正しい生活で免疫力を弱らせない、ということに尽きることになります。

一次情報に振り回されない
毎日のように「新たに〇〇人が感染」「どこどこで初の感染者」「初めての死亡者」など、朝から情報が飛び交い専門家やコメンテーターの見解が述べられます。そして始まる感染者の詮索。
二次感染の広がりが新たな不安となり、「何の落ち度もなく不幸にも感染した患者さん」の個人情報を得ることで、わが身の安全を確認し安心する。そんな身勝手で思いやりや優しさを欠いた姿勢にはなってはいないでしょうか。
心配しすぎて過剰な反応には気をつけたいものです。

市議会議長会が要望書
このような中、札幌市をはじめ全国815の市区の議会が構成メンバーである全国市議会議長会は2月6日、国に対して3点にわたる要望書を提出しました。
1    迅速な検査・治療体制の構築と、地方における医療体制の強化。
2    地方自治体・市民に対する感染予防及び治療体制の、適切な情報提供。
3    観光を含めた地域経済への影響について、風評被害防止など積極的な対策。

全国に「自粛ムード」が広がる中、感染の広がりを一日も早く食い止めることは何よりも優先しなければなりませんが、私たち一人ひとりの冷静な判断が求められます。

感染予防と働き方改革
2019年の訪日外国人は約3100万人。日本人出国者数は、2018年で約1900万人。年間5000万人もの人々が国境を越えて行きかうようになった社会で、感染症の広がりを防ぐことは容易ではありません。
いわゆる水際作戦(検疫による防御)は失敗し、現在は市中感染の初期の段階で抑え込むことに全力が注がれています。
その鉄則に一つは、感染者が動き回らないこと。そのためには、風邪の症状を感じたらまず、外出を控えることだとされています。しかし「ハタラキバチ」と称される日本の勤労者は、「休ませてもらえない、休んだら迷惑がかかる」と気を遣い、企業や上司は「気のゆるみ」と理不尽に非難する風潮にあります。
働き方改革の肝は、ここにあるのではないでしょうか。