大きく動く世界と立ち止まる日本
─危機にある民主主義と多様性─
昨年12月の大雪にはびっくりしましたが、年明け以降は比較的落ち着いた天気となっています。
秋元市長は「災害と同様の対応が必要」として、除排雪予算の前倒し執行を指示し、68億円を追加する補正予算を、2月27日の本会議で可決しました。
来年度の一般会計予算案は、今年度比6・4%増の9965億円となっていますが、北海道が負担していた市立学校の教職員給与が札幌市に移譲されることによるもので、実質的には、1・7%減の9207億円です。
市長は仕事始めの職員への挨拶の中で、今年一年を象徴する漢字として『感』を掲げました。
「市民感覚」を大切にすること。「スピード感」をもって仕事を行うこと。
それぞれの「感性」を大切にしさらに磨くことが、込められています。
一期目の秋元市政も折り返し。次へのステップとなる一年へ、全力で頑張ります。
広がる分断社会
民主主義は何処へ
国民に広がる不安や不満は一様ではありません。
雇用、年金、医療、介護、子育て、教育、災害など多岐にわたり、国政のみならず市民、地域の様々な分野で議論が積み重ねられてきました。
なかなか解決の方向が見えない中、「格差」や「貧困」など社会のありようを根本から問う課題が提起され、さらに「老後破産」「自治体消滅」となると、私たちの頭脳は混乱し思考停止状態に陥っても不思議ではありません。
一方世界を見ても、イギリスのEU離脱、トランプ大統領の誕生、フランス・オランダ・ドイツでは極右政党の台頭と、反グローバリズム、移民排斥の動きが強まっています。
多様な意見を賛否の二つに無理やり分ける手法が、社会の中に分断と亀裂を生み始めている―民主主義そして多様性が問われる時代と言えます。
昨年12月、秋元市長に予算要望書を提出 |
トランプ大統領が唱えたのは「アメリカ第一主義」。
勝因は、ワシントン政治への反感、中国やメキシコ製品への攻撃、移民の排斥など、わかりやすい「敵」を創り上げたことだと言われています。
小池都知事が繰り返すのは「都民ファースト」。
東京五輪施設では組織委員会を、築地市場移転問題では石原元都知事と内田都議を「敵」に仕立て上げて、絶大な人気を得ています。
しかし、都民ファーストにしろ「東京大改革」にしろ、政治家としての理念や信念が全く感じられないのは私だけでしょうか。
東京一極集中によって肥大化し、豊かな財政を享受してきた東京都が、何のために誰のための一番を目指すのかが問われています。
続く「劇場型政治」
古くは「小泉劇場」。
自民党をぶっ壊すと言って総理大臣の椅子を手に入れ、規制緩和の旗印のもと、「弱肉強食」「自己責任」がまかり通る社会への扉を開きました。
自民党の今は?皆さんご承知の通りです。
そして「橋下劇場」。
バラエティー番組の人気を背景に「大阪都構想」を掲げて大阪府知事、そして大阪市長へ。
野党再編の核になるとして「日本維新の会」をけん引するも、カジノ法案、大阪万博誘致を取引材料に、早くも自民党の補完勢力になりつつあります。
「小池劇場」「トランプ劇場」については先述しました。
わかりやすく、一刀両断に―観客気分で拍手喝采のあなた。
あちらこちらに潜んでいる落とし穴に気が付かずに、いつの間にか「この道しかない」と思い込まされていませんか。
次の世代へとつなげる来年度予算
都市の活力と生活の質を高める
国の予算は膨張をつづけ、肝心の「税と社会保障の一体改革」は棚上げ状態となっています。
消費税が3%➡5%➡8%と引き上げられてきましたが、格差と貧困の広がりや、社会保障や子育てへの不安によって、相変わらず税に対する拒否感は高まっていると言えます。
このような中、札幌市の2017年度予算案は、
①子ども・子育て支援
②経済・雇用
③女性の活躍支援―を柱にして、市長公約122項目を盛り込んだ中期計画「アクションプラン2025」の着実な実施を目指しています。
「低い合計特殊出生率」と「若い世代の道外への転出超過」という課題を抱えながらも、都市の活力と生活の質を高め、次の世代へと引き継いでいかなければなりません。
秋元市長は提案説明にあたり、「人を大事にするという原点を忘れずに、若い世代が地元で就職し、結婚し、安心して子供を産み、育て、誰もが笑顔で暮らせるようなまちづくりを加速していく」との決意を述べています。
財政規律を守る
歳出では全体の4割を占める保健福祉費が、前年比1・8%増の3657億円になります。
ここ数年増加していた生活保護費がマイナスに転じる一方、保育所の定員増や障害福祉費の伸びなどによるものです。
建設費は、国の経済対策に伴い112億円が16年度補正予算に前倒し計上されことで、3%減の1121億円となりましたが、道路維持費は増額され、市民要望の多い補修工事を着実に進めます。
歳入では、独自財源である市税収入は、個人市民税や固定資産税が堅調に推移するため、1・3%増の2882億円を見込みますが、市債発行額は、地方交付税の振替処置である臨時財政対策債が505億円から600億円へと大幅に増え、市の貯金である財政調整基金を21億円取り崩すなど、財政規律に配慮した苦心の予算編成となりました。
北海道新幹線の延伸では、札幌市部分の地下トンネル化が明らかにされ、今後ホームの位置や費用負担、北5西1街区や西武跡地を中心とした駅前地区の再開発事業への論議が進められます。
日ハム球団の新球場建設問題がマスコミをにぎわしていますが、市民サービスに直結する公共施設の更新や再配置など、山積するまちづくりの重要課題に、引き続き全力投球します。
文教委員会でプレイパーク「まこまる」を視察 |
2017年度 札幌市予算案
一般会計9965億円
各会計予算額 (単位:億円、%)
会計 17年度予算額
一般会計 9,965〈9,207〉
特別会計 3,977
企業会計 2,590
総計 16,532〈15,775〉
16年度予算額
一般会計 9,366
特別会計 3,895
企業会計 2,750
総計 16,011
比較増減 増減率
一般会計 600〈▲158〉 6.4〈▲1.7〉
特別会計 83 2.1
企業会計 ▲160 ▲5.8
総計 522〈▲236〉 3.3〈▲1.5〉
※〈 〉内は、県費負担教職員の権限移譲の影響を除いた額
2017年度予算案の主な新規事業
- 経済的負担を軽減するため、不妊治療に対する助成 560万円
- 性的マイノリティに関する電話相談窓口を開設 200万円
- 子ども食堂の開設・運営支援 250万円
- アイヌ文化を発信する空間整備(地下鉄南北線さっぽろ駅) 3600万円
- (仮称)さっぽろ女性応援会議を設置 1000万円
- ウィンタースポーツのすそ野を広げるための小学生を対象としたウィンタースポーツ塾 1600万円
- 医療産業の集積に向けたフォーラム開催等 3000万円
- 高齢者の就労促進を目的に小売業等を対象としたセミナーや仕事体験会を実施 600万円
- 防犯カメラ等を整備する保育所等への補助 2億1200万円
- 平岸配水池テニスコートの復旧・整備 2億9000万円
子育て支援や経済活性化などの課題に着実に取り組む堅実予算
まちづくりの取組を着実に実施!!
子ども・子育て支援
アクションプラン計画事業
- 3歳未満の第2子の保育料無償化を実施
- (仮称)子ども貧困対策計画を策定
- 幼稚園での一時預かりを拡大
- 保育の受け皿整備をさらに加速
- 児童相談所の体制強化や在宅での支援を充実
- 不育症治療に対する助成を実施
アクションプラン計画事業
- ワークライフバランスの促進、子育てママの再就職支援、女性が働きやすい建設現場等の環境改善の支援策などに取り組むとともに…
- 女性の社会での活躍を推進するため、「(仮称)さっぽろ女性応援会議」で新たな施策の展開を検討
アクションプラン計画事業
- 本社機能移転をはじめとした企業立地等を促進
- 高齢者の就業を支援
- 食関連企業や外食産業の海外展開促進に向けた支援
- 先進的な医学研究やICTなどの先端技術を活用した産業の創出と育成
- 新たなMICE施設整備を検討するとともに誘致補助金を拡充
今後の札幌の発展のため、女性がその希望に応じて活躍できるよう、社会全体で応援していくことが重要!
社会情勢等の変化を踏まえスピード感を持って予算化!!
性の多様性を尊重する社会へ
『パートナーシップ制度 が始まります』
民間の調査では、人口の約8%とされる性的少数者。
レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(身体と心の性が一致しない人)など、これまで典型的だとされてきた性のありかたにとらわれない人々で、頭文字を取ってLGBTと言います。
当事者が抱える困難
「性別は男女のみであり、恋愛や結婚対象は異性のみ」ということを前提にして、今の法律や制度はつくられ、私たちの意識にも染み付いています。
従って、差別や偏見に苦しみ、職場や学校では嫌がらせやいじめの対象になってきました。
アパートの入居を断られる。病室での付き添いや看護をさせてもらえない。
宿泊施設、店舗などへの入店や施設利用を拒否される。会社の各種制度を利用できない。自分が思っている性別のトイレが利用できない等、社会生活上の困難も抱え続けています。
パートナーシップ制度とは
ヨーロッパ諸国では、同性婚や同性カップルに法的な権利や義務を認める国がありますが、日本ではようやく議論の緒についたばかりです。
そのため、お互いを人生のパートナーとして協力して生活することを約束した二人の関係を、自治体が独自に認証するパートナーシップ制度が注目を浴びています。
法的な権利や義務を生ずるものではありませんが、性の多様性に対応した制度を創設することで、市民理解を進め、一人ひとりの人権が尊重される社会を目指すものです。
これまでに、東京都渋谷区、世田谷区など5市区で始まっていますが、政令市では札幌市が初めての取り組みになります。
那覇市役所に掲げられているレインボーフラッグ |
公立夜間中学の設立へ
未就学者に学びの権利を
「北海道に夜間中学をつくる会」(工藤慶一代表)から提出されていた陳情が、文教常任委員会において全会一致で採択され、具体的な準備が始まることになります。
戦中、戦後の混乱期のみならず、様々な理由により学校に通えなかった人たちの学び(なおし)の場としての夜間中学の開設が望まれてきました。現在、関西圏を中心に31校ありますが、北海道を含む多くの地域には、1校もないのが現状です。
国勢調査によると、道内の未就学者は7374人、札幌市は2001人となっています。年代別では、70代~80代が全体の半数を占めていますが、20代~60代でも相当数に上ります。
札幌遠友塾
自主夜間中学の歩み
国会では昨年12月、ようやく「夜間等において授業を行う学校における就学の機会の提供」明記した法律が成立しました。
札幌市議会においても一昨年12月に国への意見書を可決するなど議論を重ねてきましたが、その大きな推進力になったのは、工藤代表たちによって続けられている、自主夜間中学の25年にわたる営みです。
現在は向陵中学校で週一回の授業が行われていますが、講師をはじめ教材の作成や保管など全てがボランティアスタッフによって支えられ、これまでに400人以上が巣立っています。函館、旭川、釧路にも活動の輪が広がっています。
公立は決められたカリキュラムの習得が求められるため、自主夜間中学が進めてきた、生徒一人ひとりの多様なニーズに合わせた授業が可能となるように、準備を進めていかなければなりません。