第2回定例市議会
市政の基本方針質す
大嶋薫市議が代表質問
代表質問を行う大嶋市議(後方は恩村副議長) |
第2回定例市議会の代表質問が6月29日に行われ、大嶋薫市議が市政の基本方針や財政問題、雇用促進対策など9項目を質問した。
大嶋市議は、子育て支援や地域経済の活性化などを盛り込んだ補正予算案について、「財政規律と未来への投資を意識したメリハリの効いた財政運営」と高く評価。「秋元市長の『人を大事にする市政』、『徹底した地域主義』によるまちづくりをしっかりと支えていく」と表明した。
大嶋市議は、子育て支援や地域経済の活性化などを盛り込んだ補正予算案について、「財政規律と未来への投資を意識したメリハリの効いた財政運営」と高く評価。「秋元市長の『人を大事にする市政』、『徹底した地域主義』によるまちづくりをしっかりと支えていく」と表明した。
(仮称)さっぽろ未来創生プラン戦略ビジョンに沿って策定
秋元克広市長は、地方版「人口ビジョン」と「総合戦略」となる「(仮称)さっぽろ未来創生プラン」の策定にあたっては、「市まちづくり戦略ビジョン」の人口分析を基に、実情にあった計画を策定すると答弁。今後、市議会をはじめ、道との協議会や有識者懇話会などから意見を聞き、「戦略ビジョン」に掲げるまちづくりの方向性に沿って、年内を目処に策定していく考えを示した。
国は昨年11月、少子高齢化の進展と人口減少に対応するため「まち・ひと・しごと創生法」を制定。同法は、地方自治体に対し、国の戦略等を踏まえ、地方版「人口ビジョン」と「総合戦略」を15年度内に策定するよう求めているが、実質的に地方は国の定める事業枠の中にはめられてしまい、国主導の画一的なものになりかねないと危惧されている。
中期実施計画は12月
大嶋市議は、新しい中期実施計画「(仮称)札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン」の策定にあたっては、「市長のバランス感覚を発揮し、本当に必要なものは重点化する一方で、先送りが可能な事業は十分に議論を尽くすことが肝要だ」と指摘。秋元市長は、「選択と集中によるメリハリの効いた財政運営を念頭に置き、市民の意見を聞きながら、費用対効果や実施時期などを精査し、優先的に実施すべき事業を取りまとめる」とした。
同プランは、2019年度までの5カ年計画で12月の策定を予定している。
秋元市長は、市長選の公約を含め、人口減少・超高齢社会の到来に伴う課題に立ち向かうための事業を盛り込む考えを示すとともに、事業の選定にあたっては、「街の再構築や待機児童の解消など、未来への投資となる取り組みを積極的に計画化したい」と答えた。
秋元市長は、市長選の公約を含め、人口減少・超高齢社会の到来に伴う課題に立ち向かうための事業を盛り込む考えを示すとともに、事業の選定にあたっては、「街の再構築や待機児童の解消など、未来への投資となる取り組みを積極的に計画化したい」と答えた。
道との連携を強化
道都として北海道活性化の推進エンジンの役割を果たす」と意気込む秋元市長に対し、大嶋市議は、6月に開催した道と市のトップ同士で話し合う「行政懇談会」を取り上げながら、道とのさらなる連携を求めた。これに対し、「人口減少問題など、オール北海道で取り組まなければならない課題に立ち向かうため、道からさらなる連携強化を求められている」と述べ、道との連携を深めていくとした。
また、「『市民感覚』を大切にした行政運営を進める」とする秋元市長は、「市民と行政との距離感を縮め、信頼関係を深めることが重要だ」と強調。「時間の許す限り地域に出向き、対話の機会を設けていくとともに、職員にも市民の声をしっかりと聴くことを徹底する」と答弁した。
子どもの貧困対策については、「現状の把握を進めるとともに、関係者の意見を聞きながら、さまざまな施策の推進に向け、全庁を挙げて取り組む」と決意を述べた。
教育委員会の代表であった「教育委員長」と、具体的な事務執行責任者の「教育長」を一本化する教育委員会の制度改正をどう受け止めるのかとの質問には、「教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保することは大変重要で、教育委員会の独立性を尊重していく」と答えた。
財政問題
未来への投資は積極的に
目標値設定で市民理解深める
大嶋市議は、扶助費などの義務的経費、市有施設の老朽化に伴う維持管理や更新費用など財政需要が膨らむ中での生産年齢人口の減少は、「市の税収にも影響を及ぼす」とし、今後の財政運営に対する考えを質問。秋元市長は、「財政バランスを重視し、限られた財源で、選択と集中により、メリハリの効いた財政運営を基本」とする見解を述べた。
また、「将来世代に過大な負担を残さないよう財政規律に配慮しながら、未来への投資は積極的に取り組んでいく」とし、事業の進行管理にあたっては、中期実施計画の中で、成果指数についての目標値を設定し、財政状況を市民に分かりやすく伝えることも含め、市民の理解を深めていくと答えた。
また、補正(肉付)予算の編成にあたっては、地域経済の活性化につながる取り組みを積極的に計上したと強調。福祉分野は、「これまでの『人を大事にする』施策は継承しつつ、今回の肉付予算でも上積みを図り、当初予算と一体的に進める」と述べた。
雇用促進対策
職場定着率の向上をフレッシュ塾の内容充実
大嶋市議は、若者がすぐに会社を辞めてしまう傾向が状態化していることを受け、市が昨年度から始めた新卒の未就職者を正社員に結び付けるための「フレッシュスタート塾事業」を取り上げた。
道内の新卒者離職率は就職後3年間で、大卒で全国平均5.8ポイント上回る38.2%、高卒は同10.9ポイントを上回る50.5%となっている。
大嶋市議は、「職場定着を高めることは、本人、企業、さらには社会全体にも重要だ」とし、職場定着の必要性を踏まえた同塾事業の方向性をただした。
町田副市長は、「定着状況の調査を実施していく」と答弁。また、正社員就職率を高める工夫を行うとともに、職場定着を図るために「職業観のかん養に力を入れるなど、研修内容の充実に努めていく」とした。
「子育て女性の多くは短時間就労を望む一方、企業はフルタイムの採用を求め、ミスマッチが生じている」と指摘したことには、子育て女性の就労ニーズに合わせた求人開拓など、企業とのミスマッチを解消するための方策や、再就職に不安を感じている女性へのきめ細かな支援を検討していく考えを示した。
地域コミュニティの活性化
NPO・企業と連携
町内会加入促進で対策強化
急速に少子高齢化が進む中で、地域の活動を担うNPOや企業を含めた地域コミュニティのネットワークの拡大などを求めたのに対し、板垣副市長は、諸団体との情報共有化や交流機会の提供を図りながら、地域ネットワークを活性化していくとした。
大嶋市議は、高齢化や子育てなどの地域課題が増え、活動の担い手不足が懸念されている中でも、町内会や自治会のみならず、ボランティア団体、NPO、企業などさまざまな主体が活動していると指摘。「昼間の地域住民ともいえる地域で活動する主体が、それぞれの得意分野で力を発揮し、協力し合うことが重要だ」と訴えた。
また、減少傾向が続く町内会の加入者対策について、加入の働きかけが困難とされる賃貸共同住宅居住者への施策をただした。板垣副市長は、加入促進に関する協定を結んだ不動産関連団体と、転入者への加入案内や町内会活動のPRを行ってきたとし、今後も関係団体と意見交換をしながら、加入促進の取り組みを進めていくと答えた。
MICEの誘致強化
強まる都市間競争
人員や支援制度の充実図る
国内外の都市間競争が激しさを増す中、大嶋市議は、国際会議や全国規模の学会などの総称であるMICEの誘致を強化することを提案した。
秋元市長は、これまでの誘致実績を踏まえ、「優位性のある医学系、自然科学系の国際会議や、東南アジアからのインセンティブツアーなどを中心に働きかけを強化していく」と述べ、人員面や補助金をはじめとする支援制度の充実に積極的な姿勢を示した。
秋元市長は、これまでの誘致実績を踏まえ、「優位性のある医学系、自然科学系の国際会議や、東南アジアからのインセンティブツアーなどを中心に働きかけを強化していく」と述べ、人員面や補助金をはじめとする支援制度の充実に積極的な姿勢を示した。
MICEは、多数の参加者による経済効果のほか、国際的ブランド力が高まることから、全国各地の自治体で誘致活動に力を入れている。最近は、国内にとどまらず中国やアジア諸国との誘致競争が強まっている。 昨年度に札幌市内で開催された国際会議は東京、京都に次いで国内第3位。開催件数は初めて100件を超えたと言われている。
再開発事業の促進
歩行環境の整備も
まちづくり方針と一体感を持って
市が進めている再開発事業について、吉岡副市長は、都心のにぎわいや魅力づくりと、地下鉄駅周辺などでは生活の利便性を高める施設の集積を図るととともに、「積雪寒冷地にふさわしい安心で快適な歩行環境の整備なども進めていきたい」と答えた。
大嶋市議は、再開発事業を支援することで民間ビルなどの建て替えを誘導するとした秋元市長の公約を取り上げ、「単なるビルの建て替えに終わることなく、市民生活をより豊かにし、市が進めるまちづくりと一体感を持って進めるべき」と提言。都心の魅力向上と歩いて暮らせるまちづくりを進めていくことが大事な視点だと指摘した。
また、南2西3南西地区の再開発事業に追加補助するとの報道について、地区内の意見や要望を踏まえながら、事業計画の内容を十分把握した上で、適切に判断していくことが求められると訴えた。他都市でも、工事費の高騰により再開発事業が遅延する事例が出ている一方、事業計画の甘さによって大きな負債を抱え、計画の根本的見直しを迫られた事例も多い。
障がい者施策
障がい者差別解消の取り組みの一環として、手話を言語と位置づけて普及啓発を図る「手話言語条例」を制定する自治体が増えている。札幌市議会では、13年11月に「手話言語法の制定を求める意見書」、14年3月に「情報コミュニケーション法の早期制定を求める意見書」をそれぞれ可決している。
大嶋市議は、意見書を可決した経緯を説明しながら「法的な整備の必要性は共有されている。障がいの特性に応じたコミュニケーションの環境整備には条例制定が近道」と述べ、見解を求めた。
板垣副市長は、手話は必要不可欠な言語と認識しているとし、「他自治体で制定された条例の意義や効果を検証し、各障がい者団体などの意見を聞きながら条例の策定に向けて検討していく」と答弁した。
幼稚園との連携による待機児童対策
新制度移行の支援を
子ども・子育て制度上の課題指摘
今年4月にスタートした子ども・子育て支援新制度については、幼稚園と連携した取り組みの重要性を指摘し、待機児童対策のさらなる充実を求めた。
これまで幼稚園には原則として道からの助成はあったが、15年度以降は新制度に移行せずに道からの運営費助成を受けるか、認定こども園などの施設型給付の対象に移行し、市から給付を受けるのかを選択することになった。
こうした中、新制度に移行した幼稚園は私立幼稚園全132園のうち、33園にとどまっている。これは新制度の全容が明らかになるのが遅く準備期間が短かったことや、認定こども園になって新制度に移行する際に、給食設備の設置や保育教諭の配置などの課題が背景にある。
市は、幼稚園団体が開催する研修会で意見交換を行うとともに、移行に向けた説明会の開催や、各園からの相談対応をしているが、今後もこうした取り組みを進めて移行に向けた準備が進むよう積極的に支援していくとした。
スポーツの振興
スポーツコミッション設立へ
来年度から具体的に活動
スポーツ振興については、国際競技大会などを戦略的に誘致する組織「地域スポーツコミッション」の設立についての取り組みをただした。
地域スポーツコミッションは、地域のスポーツ振興やスポーツツーリズムを推進するため、地方自治体、民間企業、スポーツ団体等が連携・協働して取り組む地域レベルの組織。
大嶋市議は、2026年冬季オリンピック・パラリンピックの札幌招致に向けて、国際競技大会の開催や、各国競技連盟とのネットワークづくりが重要と指摘し、スポーツコミッション設立にあたり道内のスポーツ団体との連携や、設立に向けたスケジュールを質問。
町田副市長は、高橋知事と秋元市長が行った「北海道・札幌市行政懇談会」で道内各地と連携しながら地域スポーツコミッションの設立を進めることを確認しており、来年度当初から具体的な活動を展開するとした。