本年もよろしくお願い致します。
少し遅れてしまいましたが、昨年末に発行しました「薫風」第42号を掲載します。
薫風第42号 から
未来への責任を果たすのは誰?
年の瀬の突然の解散総選挙。「大義のない解散」といわれ、アベノミクスへの評価も低い中、再び与党自民党の圧勝という結果になりました。
数は力という考えがありますが、私たちは常に、議席の数に表わされない多様な民意を反映することが、議会制民主主義の基本であることを、肝に銘じて政治に携(たずさ)わらなければなりません。
そして、「景気・経済対策」最優先の掛け声の中でかき消されてしまった多くの課題に、腰を据えて議論を深め、取り組みを進めていかなければなりません。
一時中断した予算編成作業が、年末年始の休みを返上して行なわれることになります。
自治体にとっては、消費税2パーセント引き上げが1年先送りされることによる、社会保障や子育て支援の財源確保、景気が減速傾向にある中での補正予算の規模が、当面の課題となります。
「地方創成」のゆくえ
地方財政の自由度を高めるとして、民主党政権の時代に「一括交付金」制度が創られ、自治体から歓迎されました。
「箸の上げ下ろしまで国が決める」として批判された、地方交付税や補助金のあり方を根本から変えようとする試みでした。
しかし、自公政権はこれを廃止し、震災復興と国土強じん化に名を借りた、新たなバラマキへと転換し、これを「地方創成」と名づけています。
地域が本当に必要としている事業や施策は、地域の状況によって異なります。
永田町の画一的なメニューが地域の活力を奪ってきたことの反省と総括から、まず始めなければならないはずです。
「分権改革」の熱気も、いつの間にか雲散霧消したような感がありますが、「地域主権改革」への歩みを止めるわけにはいきません。
引き続き自治体の真価が問われることになります。
エネルギー政策のゆくえ
「できるだけ原発に頼らない」と公約に掲げていた自民党は、「原発をベースロード電源にする」と、見事な方向転換。放射性廃棄物の処分地選定も政府の責任で行なうと、大見得を切っています。
立地自治体の財政難や電気料金の高騰を理由に、「原子力ムラ」が、自民党を村長にして見事に復活しているといってよいでしょう。
原因を作った責任には頬かむりして、時計の針を逆戻りさせることは、絶対に許せません。
そもそも、自然エネルギーへとシフトすることは、原発事故という巨大なリスクを背負うよりも、地域分散型のエネルギー開発の方が、地域の活性化や経済発展にとってプラスになり、雇用や技術開発につながるという国民合意の元に進められたはずです。
私たちは、昨年10月に公表した「札幌市エネルギービジョン」を着実に推進し、脱原発依存社会の実現へと歩んでいかなければなりません。
冬季五輪招致とまちづくり
上田市長は11月27日、第4回定例市議会の本会議冒頭、2026年冬季オリンピック・パラリンピックの札幌招致を正式表明しました。
第3回定例市議会最終日の「決議採択」、10月に行なった市民1万人アンケートの結果を踏まえて決断したものです。
市民力の結集を
開催決定までには多くの手続きを踏まなければなりません。
- 2015年に、日本オリンピック委員会(JOC)が国内招致を判断し、国内希望都市が立候補届け。
- 2016年、JOCが国内候補地を選定。
- 2017年、招致委員会設置。
- 2018年、国際オリンピック委員会(IOC)に立候補届と開催計画を提出。
- 2019年、IOC総会で開催地決定。
気になる財政負担
市が9月に発表した試算では、開催経費は4045億円、市の負担が715億円に対し、経済波及効果は、道内で7737億円、市内で5404億円とされています。
しかし、オリンピックは、規模の拡大と商業主義に対する批判が高まり、IOCでも改革の議論が進められています。
また、2022年の冬季五輪に立候補していたオスロ市(ノルウェー)が、財政負担への市民合意が得られずに撤退したことも、今後の開催計画に大きく影響することが予想されます。
IOCが要求する施設は国際大会の規模に合わせたもので、開催後の維持管理や利用計画について十分な議論をおこない、「未来への投資」が「過大な負担」にならないよう厳しくチェックをしていかなければなりません。
五輪精神に学ぶ
五つの輪は、それぞれに五輪精神の教育的価値を表わしています。
青は努力する喜び。黒はフェアプレー。
赤は他者への敬意。
黄は向上心。緑は体と頭と心のバランス。
しかし、日本では「スポーツ根性物語」が、いまだにもてはやされ「勝利至上主義」がはびこっています。
「日の丸」の過剰な演出によって「愛国心」が鼓舞されることも心配です。
排外主義をあおり「憎悪」をむき出しにする「ヘイトスピーチ」に対して、国際社会からの批判も高まっています。
成熟した国際都市さっぽろが何をアピールし、どのようなオリンピックモデルを示すことができるのか。
「札幌市まちづくり戦略ビジョン」に掲げる「北海道の未来を創造し、世界が憧れるまち」と「互いに手を携え、心豊かにつながる共生のまち」の実現に近づく、大きな一歩にしたいと思います。
暮らしの安心を支える
危険ドラッグなどの薬物使用、子どもの連れ去り、振り込め詐欺や産地偽装。
私たちの身近なところで、さまざまな事件が起きています。
12月9日に行われた財政市民委員会において、「第2次犯罪のない安全で安心なまちづくり等基本計画」と「消費者教育推進プラン」について説明がありました。
大切な「地域力」
札幌市内の刑法犯の数はこの10年で半分に減っています。
しかし、子どもにかかわる事件や性犯罪は横ばいか増加傾向にあり、振り込め詐欺などは77件、被害総額は約3億4400万円に及んでいます。
このため、「地域安全サポーターズ」の取り組み強化、「子ども一一〇番の家」の制度化などに重点的に取り組むこととしています。
かしこい消費者
これまでは受け身と考えられてきた消費者ですが、消費者の行動が社会経済や地球環境に大きな影響を与えるようになってきました。
一方、インターネットや通信販売などの普及によって情報量は飛躍的に増え、悪質商法も次々と生まれています。
したがって、知識や実践的な能力を身につけ、自ら考え、判断することのできる消費者教育が、取り組むべき基本方針とされました。そのための「場」の充実と「担い手」の養成が重点課題になります。