2015年9月10日木曜日

市議会リポート「薫風」第44号から


『地方創生を支える『地域と『人
転換期のまちづくりへ、秋元市政が始動
4月12日に行われた統一自治体選挙を経て、議会・市長ともに5月2日から新しい任期となりました。5月18日の臨時議会で鈴木健雄議長(自民党)恩村一郎副議長(民主党・市民連合)を選出し、6月24日に召集された第2回定例市議会で、秋元克広新市長から施政方針が示され、合わせて公約実現への一歩となる肉付け(補正)予算が提案されて、秋元市政が本格的にスタートしました。
私は6月29日、会派を代表して、市政の基本方針に関わる6点を含め9項目について質問しました。

地方創生戦略とは何か
国は昨年11月、少子高齢化の進行と人口減少に対応するため「まち・ひと・しごと創生法」制定し、地方自治体に対し、今年度内に地方版「人口ビジョン」「総合戦略」を策定するよう求めています。
しかし、地方の課題の解決を地方の手にゆだねるとしながら、市町村は国及び都道府県の「総合戦略」を勘案することとされ、交付金の配分は国が決定権を持っておりその基準も明らかにされていないなど、その手法は極めて中央集権的であり、責任だけを地方に丸投げするものであるとの批判が出されています。
そもそも、地方都市の人口減少と高齢化は70年代から始まっており、人口減少が続いても住む人々はその地に生き続けているという事実から目をそらすことは許されません。
札幌市では既に、人口減少社会と超高齢社会を見据えて、2年間にわたる議論を経た上で「札幌市まちづくり戦略ビジョン」を策定しており、「創生法」に右往左往することなく、「ビジョン」の方向性に沿って「(仮称)札幌未来創生プラン」の策定を進めることになります。

代表質問に立ち、秋元新市長の基本姿勢を問う
札幌の未来を占う4年に
大きな転換期にあるこれからのまちづくりは、引き続き厳しい財政状況の中にあって、予想される困難な課題にしっかりと向き合い、事業の取捨選択はもちろん、上手に小さくして質を高めるような「新たな創造」への知恵も絞る必要があります。
一斉に更新時期を迎える公共施設や、冬季五輪招致を見据えたスポーツ施設、地域の交流拠点の計画的な整備が求められるのと同時に、人口減少時代の中にあっても、国内外から多くの人が集まり活発に活動する魅力的な街であり続けることが求められます。
秋元市長と市政の課題について意見交換
秋元市長と市政の課題について意見交換
秋元市長は、そのためには「市民感覚」を大切にした行政運営を進めることが重要であり、「時間の許す限り地域に出向き、対話の機会を設けていくとともに、職員にも市民の声をしっかりと聴くことを徹底する」と、上田市政12年の中で培われた『市民自治』の理念をしっかりと引き継いでいく決意を明らかにしました。
年内に策定される新しい中期実施計画「(仮称)札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン」は、10年後、20年後の未来を見通し、その土台となるものにして行かなければなりません。



北海道との連携強化
上田市政の時代、その政治手法の違いや経済界の思惑から、高橋はるみ道政との折り合いの悪さを指摘され続けました。長年、道州制や大都市制度の在り方などについての議論が続けられてきましたが、私たちの願いである「地域主権改革」へと更に歩みを進めていかなければなりません。
石狩圏の自治体間の広域連携や旭川市、帯広市、釧路市、函館市など中核市との協力関係を積極的に進めた上田市政に対し、「何もしない知事」として道内自治体の首長からの批判も多かった高橋道政。ようやく軌道修正に踏み切った感があります。

秋元市長は、施政方針の中で「道都として北海道活性化の推進エンジンの役割を果たしていく」としており、今後、住民サービスの充実や行政の効率化の観点はもちろん。経済、雇用、子育てなど直面する課題について、中・長期的な視点での政策形成につなげていくことが求められます。
丘珠空港から直行便で北九州市を訪問

新たな教育委員会制度
滋賀県大津市におけるいじめ事件がきっかけとなり、いじめ等の問題への対応の迅速化や責任体制の明確化、首長との連携強化を目的として法律が改正され、今年4月から新しい教育委員会制度に移行しました。
新制度では、教育委員長と教育長を一本化して、市長が教育長を直接任命すること、市長と教育委員会が、教育行政の大綱や重点施策について協議調整を行う場として、市長が主宰する統合教育会議の設置が定められています。
旧制度においても、国旗・国歌の強制や特定の教科書採択など、首長の過剰な介入が問題となった例があり、文教族と呼ばれる国会議員の政治的圧力が取りざたされるなど、市長の教育政策への関与が大きくなり、市長が変わるたびに教育政策が変わるのではないかとの懸念が消えません。
札幌市の教育委員会はこれまで、それぞれの委員の立場と見識のもと、公正かつ活発な議論によって市民の負託に応えてきました。
秋元市長のもと、引き続き教育の中立性、継続性、安定性を確保し、教育委員会の独立性が尊重され、子供、保護者、地域住民、教員など多様な声が反映されるよう、取り組みを進めます。

若者・女性の雇用対策
平均賃金は低下を続け、非正規雇用の割合は増加し、労働基準法を無視するブラック企業と呼ばれる存在が問題になるなど、雇用情勢は改善に向かっているとはいえ、多くの労働者は景気回復の実感を持てないのが現実です。
札幌市は昨年度から、新卒の未就職者を正社員に結び付けるための「フレッシュスタート塾」を行っていますが、北海道では新規学卒者の離職率が高く、就職後3年以内の離職率は、大卒で38.2%、高卒では50.5%にもなっています。
職場定着を高めることは、本人、企業さらには社会全体にとっても重要であり、就職率を高めるためのきめ細やかな支援と共に、職業観の涵養など研修内容の充実が求められます。
また、札幌市は政令市の中でも女性の有業率が低く、特に20歳から39歳までの未就学児を抱える女性では、37.4%と、政令市平均の44.4%を大きく下回っており、就職を希望しながらもかなえられない女性が多い現実があります。
子育て女性の多くは短時間就労を希望し、企業はフルタイムの採用を求めるといったミスマッチや、再就職への不安の解消など、子育て女性のニーズに合わせた取り組みが必要とされています。
秋元市長も選挙戦の中で訴えたように、「女性の結婚、妊娠、出産などが働くことの障害にならない社会をつくる」ことは、すべての女性の切実な願いであり、私たちが目指す理想でもあります。

手話条例の制定を
障害者を取り巻く環境は近年大きく変化し、2014年1月に「障がい者権利条約」が批准され、来年4月1日には「障がい者差別解消法」が施行されます。この法律は、国や地方公共団体などの行政機関や民間事業者に対して、障害を理由とする差別の禁止や、社会的障壁いわゆる「バリア」の除去についての取り組みを義務付けています。
このように共生社会実現に向けた取り組みが進められる中、手話を言語として位置づけ普及を目指す「手話言語条例」を制定する自治体が増えてきています。
全国初の条例は、1310月に鳥取県で施行され、隣の石狩市では道内初、全国の市町村でも初となる「手話に関する基本条例」が14年4月1日に施行されるなど、手話など障がい者のコミュニケーションを支援・促進するための条例制定は、3県15市町村に広がっています。
札幌市議会をはじめ全国の自治体で「(仮称)手話言語法の制定を求める意見書」が可決されていますが、国の法制化は遅々として進みません。条例の制定に向けて当事者の皆さんと共に検討を進めるとともに、障がい者の権利に基づいた「完全参加と平等」を目指し、一歩ずつ歩んでいきます。

地域コミュニティの活性化
市内には2209の町内会・自治会があり、まちづくりの様々な分野で欠かすことのできない活動主体として、地域コミュニティの中核を担っています。
しかし、町内会の加入世帯はここ数年約3000世帯ずつ増加しているものの、それを上回るペースで核家族化や単身世帯が増加することによって加入率が年々低下し、2015年1月時点では、かろうじて70%を維持しているのが現状です。
また、地域での取り組み課題が増える中で、高齢化や地域のつながりの希薄化などによって、担い手不足が深刻になっています。
今後ますます多様化、複雑化する社会を支える基礎となる地域コミュニティを活性化するためには、不動産業と連携して、アパートなど賃貸共同住宅入居者の加入促進を図るとともに、環境、福祉、子育て支援などを通して、地域で幅広く活動するボランティア団体やNPO、企業を含め、昼間の地域住民ともいえる人々が、それぞれ得意とする分野で力を発揮しながら、お互いに協力し合う関係を創ることが重要になってきているのではないでしょうか。

一票差で否決
安全保障関連法案の廃案を求める意見書
安倍強権政治にNOを
第二回定例会最終日の7月17日、民主党や共産党などで共同提出した意見書案は、残念ながら自民党、公明党の反対により否決されました。会派を代表して峯廻幹事長が、「戦後70年もの間、憲法9条にもとづき『集団的自衛権は行使できない』としてきた歴代内閣の憲法解釈を、時の内閣の一存で勝手に変更することは断じて認められない」として要旨以下の討論を行いました。


●武力行使の新3要件は、1972年の政府見解と照らし合わせても、真逆の結論を導き出しており、「最終的には時の政府が判断する」のであれば、全く歯止めにはならない。
●国民の理解を得ると言いながら抽象的な答弁に終始しており、法案そのものの危険性や曖昧さが、明らかになってきている。
●衆議院での審議時間が100時間を超えたとしているが、1法案ではわずかに10時間に過ぎず、繰り返しの答弁が多く、審議の中断は100回に及ぶ。
●安全保障をめぐる国際環境の変化が、外交や個別的自衛権で対応する限度を越えていることの説明はなく、ただ「脅威」をあおっているに過ぎない。
●戦後日本は、大きな犠牲を出した先の大戦の反省にもとづき専守防衛を柱にした安全保障政策を構築してきた。それを数の力で踏みにじる暴挙は、立憲主義と民主主義を冒涜するものである。

今年も8.6ダイ・インに参加
決してあきらめない
国際政治に疎い独善的な思い込み。相手へのレッテル張り。マスコミ報道への介入。中国・韓国をことさら刺激する言動。近現代史に関する無知。世論に背を向ける頑な態度。
安倍チルドレンと称される若手議員の妄言・暴言は、このような「アベノリスク」とも称される強権的かつ挑発的な政治手法が生み出しているともいえます。
学者・文化人をはじめとして、大学生、高校生、子育て中の母親へと、「戦争法案」反対の声は大きく広がっています。
「日本を取り戻す」のではなく「民主主義を取り戻す」。正念場を迎えます。


新体制でのスタートです
民主党・市民連合は、改選前から2議席を減らし、21名でのスタートになりました。
建設委員会で福井駅再開発を視察
前期の2年間に引き続き議員会長を務めることになりました。「つなげる・つなぐ・つぎへ」―上田前市長の実質的な後継者として誕生した秋元新市長を、地域の皆さんと一緒に、全力で支えていきたいと決意を新たにしています。
新役員は以下の通りです。
 会 長              大嶋  薫(西 区)
 副会長              藤原 広昭(東 区)
  〃               三宅 由美(南 区)
  〃               桑原  透(清田区)
 幹事長              峯廻 紀昌(豊平区)
 副幹事長           村上 裕子(中央区)
 政審会長           長谷川 衛(中央区)
 副政審会長       林  清治(東 区)
   〃         中村  剛(西 区)
*副議長              恩村 一郎(清田区)




2015年7月28日火曜日

民主党さっぽろ877号から



第2回定例市議会

市政の基本方針質す

大嶋薫市議が代表質問
代表質問を行う大嶋市議(後方は恩村副議長)

第2回定例市議会の代表質問が6月29日に行われ、大嶋薫市議が市政の基本方針や財政問題、雇用促進対策など9項目を質問した。

大嶋市議は、子育て支援や地域経済の活性化などを盛り込んだ補正予算案について、「財政規律と未来への投資を意識したメリハリの効いた財政運営」と高く評価。「秋元市長の『人を大事にする市政』、『徹底した地域主義』によるまちづくりをしっかりと支えていく」と表明した。






(仮称)さっぽろ未来創生プラン戦略ビジョンに沿って策定

秋元克広市長は、地方版「人口ビジョン」と「総合戦略」となる「(仮称)さっぽろ未来創生プラン」の策定にあたっては、「市まちづくり戦略ビジョン」の人口分析を基に、実情にあった計画を策定すると答弁。今後、市議会をはじめ、道との協議会や有識者懇話会などから意見を聞き、「戦略ビジョン」に掲げるまちづくりの方向性に沿って、年内を目処に策定していく考えを示した。

国は昨年11月、少子高齢化の進展と人口減少に対応するため「まち・ひと・しごと創生法」を制定。同法は、地方自治体に対し、国の戦略等を踏まえ、地方版「人口ビジョン」と「総合戦略」を15年度内に策定するよう求めているが、実質的に地方は国の定める事業枠の中にはめられてしまい、国主導の画一的なものになりかねないと危惧されている。



中期実施計画は12
大嶋市議は、新しい中期実施計画「(仮称)札幌市まちづくり戦略ビジョン・アクションプラン」の策定にあたっては、「市長のバランス感覚を発揮し、本当に必要なものは重点化する一方で、先送りが可能な事業は十分に議論を尽くすことが肝要だ」と指摘。
秋元市長は、「選択と集中によるメリハリの効いた財政運営を念頭に置き、市民の意見を聞きながら、費用対効果や実施時期などを精査し、優先的に実施すべき事業を取りまとめる」とした。
同プランは、2019年度までの5カ年計画で12月の策定を予定している。

秋元市長は、市長選の公約を含め、人口減少・超高齢社会の到来に伴う課題に立ち向かうための事業を盛り込む考えを示すとともに、事業の選定にあたっては、「街の再構築や待機児童の解消など、未来への投資となる取り組みを積極的に計画化したい」と答えた。



道との連携を強化
道都として北海道活性化の推進エンジンの役割を果たす」と意気込む秋元市長に対し、大嶋市議は、6月に開催した道と市のトップ同士で話し合う「行政懇談会」を取り上げながら、道とのさらなる連携を求めた。これに対し、「人口減少問題など、オール北海道で取り組まなければならない課題に立ち向かうため、道からさらなる連携強化を求められている」と述べ、道との連携を深めていくとした。



また、「『市民感覚』を大切にした行政運営を進める」とする秋元市長は、「市民と行政との距離感を縮め、信頼関係を深めることが重要だ」と強調。「時間の許す限り地域に出向き、対話の機会を設けていくとともに、職員にも市民の声をしっかりと聴くことを徹底する」と答弁した。

子どもの貧困対策については、「現状の把握を進めるとともに、関係者の意見を聞きながら、さまざまな施策の推進に向け、全庁を挙げて取り組む」と決意を述べた。

教育委員会の代表であった「教育委員長」と、具体的な事務執行責任者の「教育長」を一本化する教育委員会の制度改正をどう受け止めるのかとの質問には、「教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保することは大変重要で、教育委員会の独立性を尊重していく」と答えた。



財政問題

未来への投資は積極的に

目標値設定で市民理解深める



大嶋市議は、扶助費などの義務的経費、市有施設の老朽化に伴う維持管理や更新費用など財政需要が膨らむ中での生産年齢人口の減少は、「市の税収にも影響を及ぼす」とし、今後の財政運営に対する考えを質問。秋元市長は、「財政バランスを重視し、限られた財源で、選択と集中により、メリハリの効いた財政運営を基本」とする見解を述べた。

また、「将来世代に過大な負担を残さないよう財政規律に配慮しながら、未来への投資は積極的に取り組んでいく」とし、事業の進行管理にあたっては、中期実施計画の中で、成果指数についての目標値を設定し、財政状況を市民に分かりやすく伝えることも含め、市民の理解を深めていくと答えた。


また、補正(肉付)予算の編成にあたっては、地域経済の活性化につながる取り組みを積極的に計上したと強調。福祉分野は、「これまでの『人を大事にする』施策は継承しつつ、今回の肉付予算でも上積みを図り、当初予算と一体的に進める」と述べた。




雇用促進対策

職場定着率の向上をフレッシュ塾の内容充実



大嶋市議は、若者がすぐに会社を辞めてしまう傾向が状態化していることを受け、市が昨年度から始めた新卒の未就職者を正社員に結び付けるための「フレッシュスタート塾事業」を取り上げた。

道内の新卒者離職率は就職後3年間で、大卒で全国平均5.8ポイント上回る38.2%、高卒は同10.9ポイントを上回る50.5%となっている。

大嶋市議は、「職場定着を高めることは、本人、企業、さらには社会全体にも重要だ」とし、職場定着の必要性を踏まえた同塾事業の方向性をただした。

町田副市長は、「定着状況の調査を実施していく」と答弁。また、正社員就職率を高める工夫を行うとともに、職場定着を図るために「職業観のかん養に力を入れるなど、研修内容の充実に努めていく」とした。

「子育て女性の多くは短時間就労を望む一方、企業はフルタイムの採用を求め、ミスマッチが生じている」と指摘したことには、子育て女性の就労ニーズに合わせた求人開拓など、企業とのミスマッチを解消するための方策や、再就職に不安を感じている女性へのきめ細かな支援を検討していく考えを示した。



地域コミュニティの活性化

NPO・企業と連携

町内会加入促進で対策強化



急速に少子高齢化が進む中で、地域の活動を担うNPOや企業を含めた地域コミュニティのネットワークの拡大などを求めたのに対し、板垣副市長は、諸団体との情報共有化や交流機会の提供を図りながら、地域ネットワークを活性化していくとした。


大嶋市議は、高齢化や子育てなどの地域課題が増え、活動の担い手不足が懸念されている中でも、町内会や自治会のみならず、ボランティア団体、NPO、企業などさまざまな主体が活動していると指摘。「昼間の地域住民ともいえる地域で活動する主体が、それぞれの得意分野で力を発揮し、協力し合うことが重要だ」と訴えた。

また、減少傾向が続く町内会の加入者対策について、加入の働きかけが困難とされる賃貸共同住宅居住者への施策をただした。板垣副市長は、加入促進に関する協定を結んだ不動産関連団体と、転入者への加入案内や町内会活動のPRを行ってきたとし、今後も関係団体と意見交換をしながら、加入促進の取り組みを進めていくと答えた。



MICEの誘致強化

強まる都市間競争

人員や支援制度の充実図る



国内外の都市間競争が激しさを増す中、大嶋市議は、国際会議や全国規模の学会などの総称であるMICEの誘致を強化することを提案した。

秋元市長は、
これまでの誘致実績を踏まえ、「優位性のある医学系、自然科学系の国際会議や、東南アジアからのインセンティブツアーなどを中心に働きかけを強化していく」と述べ、人員面や補助金をはじめとする支援制度の充実に積極的な姿勢を示した。

MICEは、多数の参加者による経済効果のほか、国際的ブランド力が高まることから、全国各地の自治体で誘致活動に力を入れている。最近は、国内にとどまらず中国やアジア諸国との誘致競争が強まっている。 昨年度に札幌市内で開催された国際会議は東京、京都に次いで国内第3位。開催件数は初めて100件を超えたと言われている。



再開発事業の促進

歩行環境の整備も

まちづくり方針と一体感を持って



市が進めている再開発事業について、吉岡副市長は、都心のにぎわいや魅力づくりと、地下鉄駅周辺などでは生活の利便性を高める施設の集積を図るととともに、「積雪寒冷地にふさわしい安心で快適な歩行環境の整備なども進めていきたい」と答えた。

大嶋市議は、再開発事業を支援することで民間ビルなどの建て替えを誘導するとした秋元市長の公約を取り上げ、「単なるビルの建て替えに終わることなく、市民生活をより豊かにし、市が進めるまちづくりと一体感を持って進めるべき」と提言。都心の魅力向上と歩いて暮らせるまちづくりを進めていくことが大事な視点だと指摘した。

また、南2西3南西地区の再開発事業に追加補助するとの報道について、地区内の意見や要望を踏まえながら、事業計画の内容を十分把握した上で、適切に判断していくことが求められると訴えた。他都市でも、工事費の高騰により再開発事業が遅延する事例が出ている一方、事業計画の甘さによって大きな負債を抱え、計画の根本的見直しを迫られた事例も多い。



障がい者施策


大嶋市議は、手話など障がい者のコミュニケーションを支援する条例の制定を提案、板垣副市長は前向きに検討する考えを示した。
障がい者差別解消の取り組みの一環として、手話を言語と位置づけて普及啓発を図る「手話言語条例」を制定する自治体が増えている。札幌市議会では、1311月に「手話言語法の制定を求める意見書」、14年3月に「情報コミュニケーション法の早期制定を求める意見書」をそれぞれ可決している。

大嶋市議は、意見書を可決した経緯を説明しながら「法的な整備の必要性は共有されている。障がいの特性に応じたコミュニケーションの環境整備には条例制定が近道」と述べ、見解を求めた。

板垣副市長は、手話は必要不可欠な言語と認識しているとし、「他自治体で制定された条例の意義や効果を検証し、各障がい者団体などの意見を聞きながら条例の策定に向けて検討していく」と答弁した。



幼稚園との連携による待機児童対策

新制度移行の支援を

子ども・子育て制度上の課題指摘



今年4月にスタートした子ども・子育て支援新制度については、幼稚園と連携した取り組みの重要性を指摘し、待機児童対策のさらなる充実を求めた。

これまで幼稚園には原則として道からの助成はあったが、15年度以降は新制度に移行せずに道からの運営費助成を受けるか、認定こども園などの施設型給付の対象に移行し、市から給付を受けるのかを選択することになった。

こうした中、新制度に移行した幼稚園は私立幼稚園全132園のうち、33園にとどまっている。これは新制度の全容が明らかになるのが遅く準備期間が短かったことや、認定こども園になって新制度に移行する際に、給食設備の設置や保育教諭の配置などの課題が背景にある。

市は、幼稚園団体が開催する研修会で意見交換を行うとともに、移行に向けた説明会の開催や、各園からの相談対応をしているが、今後もこうした取り組みを進めて移行に向けた準備が進むよう積極的に支援していくとした。



スポーツの振興

スポーツコミッション設立へ

来年度から具体的に活動



スポーツ振興については、国際競技大会などを戦略的に誘致する組織「地域スポーツコミッション」の設立についての取り組みをただした。

地域スポーツコミッションは、地域のスポーツ振興やスポーツツーリズムを推進するため、地方自治体、民間企業、スポーツ団体等が連携・協働して取り組む地域レベルの組織。

大嶋市議は、2026年冬季オリンピック・パラリンピックの札幌招致に向けて、国際競技大会の開催や、各国競技連盟とのネットワークづくりが重要と指摘し、スポーツコミッション設立にあたり道内のスポーツ団体との連携や、設立に向けたスケジュールを質問。

町田副市長は、高橋知事と秋元市長が行った「北海道・札幌市行政懇談会」で道内各地と連携しながら地域スポーツコミッションの設立を進めることを確認しており、来年度当初から具体的な活動を展開するとした。


2015年4月8日水曜日

薫風43号から

上田市政をつなぐ、つぎへ
札幌市2015年度予算 
2015年第1回定例市議会が2月12日に開会し、上田文雄市長は全会計総額1兆5443億円となる2015年度予算案と14年度一般会計に今冬の除雪費62億円を含む約103億円の補正予算案など、議案66件を上程した。

健全財政を持続
歳入は、市税が対前年度比0・1%増の2811億円。地方譲与税・地方特例交付税・道交付金等は、地方消費税交付金の増加等で同26・5%増の500億円を見込む。地方交付税は同10・5%減の845億円とし、このうち新市長の補正財源として50億円を留保した。

歳出は、子ども・子育て支援新制度に伴う児童福祉費の増加や障がい児通所サービスの利用者増などにより、保健福祉費が同3・7%増の3443億円と全体の約4割を占めた。

土木費は、同13・5%減の822億円だが、地域経済への影響を配慮し、道路や公園等の社会基本整備費は対前年比約65%の232億円を計上。退職者数増による退職手当の増加などで職員費は同0・5%増の878億円とした。

財政調整基金からの繰り入れは当初予算に計上せず、基金残高は14年度末の126億円を維持。このため行財政改革推進プランのベンチマークで掲げた基金残高100億円を上回る見通し。

市全体の市債残高は前年より113億円減の1兆7042億円を見込む。上田文雄市長は記者会見で、この点について「この12年間、一貫して取り組んできた『健全な財政運営』を最後まで貫くことができた」と語った。

子ども・子育て施策を総合的に推進
当初予算案には、子ども・子育て支援や都心と拠点のまちづくりなど、札幌市まちづくり戦略ビジョンが示す都市像の実現に向けた取り組みが盛り込まれた。

「暮らし・コミュニティ」では、新たに生活困窮者自立支援事業として2億5580万円を計上し、生活や就労に関する相談支援や中学生への学習支援・ホームレスに対する一時的な生活支援などを実施。

また、子ども・子育て支援新制度の開始に伴い、認定こども園の整備や私立保育所の増改築に18億9200万円を補助し、616人の保育定員増を図る。

このほか、旧真駒内小学校敷地に新設する(仮称)南部高等支援学校の実施設計に2億5000万円を充て、支援学校の市内北部偏在を解消する。町内会の加入促進は3000万円で、メディアなどで普及啓発を図るとともに、加入促進を支援する地域を3区から全区に拡大。

除雪費は、175億6400万円とした。

道内連携強化し、地域経済を活性化
産業・活力」では、企業立地促進費として4億3200万円を投入し、地域経済活性化や産業基盤の強化を図る。札幌コンテンツ特区関連は1億3900万円。
市内でのロケ撮影に対する助成や海外プロモーションを行う事業者を支援する。

このほか、6次産業の活性化4400万円、道内市町村との連携事業780万円などを盛り込んだ。
4月開校の市立札幌開成中等教育学校では、国際バカロレアカリキュラムや情報通信機器を活用した学習モデルの研究に2100万円を計上した。

駐輪場の整備や、省エネ等を推進
「低炭素社会・エネルギー転換」では、都心部の駐輪場整備を官民協働や再開発で行うとともに、西2丁目地下駐輪場の工事費に1億9000万円を充て、自転車利用の環境整備に取り組む。

また、環境教育の推進に3億1800万円を計上し、小学校9校、中学校1校に太陽光パネルを設置。これにより15年度末の設置校は小学校107校、中学校43校となる見通し。

このほか、省エネ技術の講習会などに1200万円、家庭の生ごみ減量に対する支援策として電動生ごみ処理機の助成などに1800万円、省エネ・バリアフリーのリフォームに対する補助に1億2000万円など。

市民交流複合施設等、新たな都市空間を創出
創世交流拠点のまちづくりを先導するために、高機能ホールや図書館などを備える(仮称)市民交流複合施設(北1西1)の整備費と同地区再開発事業などに80億5300万円を計上した。

地下鉄白石駅に隣接する市有地に、区役所や保健センター、絵本図書館など地域交流拠点にふさわしい機能を備える白石区複合庁舎等整備関連は13億9100万円で、15年度に工事を本格化し、16年秋以降の供用開始を目指す。

都心と苗穂地区の回遊性を向上させるための苗穂駅周辺地区まちづくり関連費用は15億1300万円で、苗穂駅移転・橋上駅舎化や中央体育館の改築などを行う。

円山動物園では11億5000万円をかけ、ホッキョクグマ・アザラシ館の建設に着手する。

市長公約達成率84・6%
3期目の市長マニフェストに掲げた91項目については、すべての政策に着手した。

達成率は84・6%で、「14年度までに特別養護老人ホーム定員1000人分拡大」「通年型のカーリング場を12年度までに開設」「市民交流複合施設を14年度までに着工」「次世代型の博物館計画を14年度までに策定」など14年度末までの達成見込みを含め77項目。

14年度末までに達成には至らなかったが、15年度以降に達成が見込まれるものは10項目だった。

 一方で、達成困難は4項目。入園者100万人を掲げた円山動物園は、12年度の74万8321人から、13年度95万9431人、14年度も4月から12月までに82万5203人を数えたものの目標に届かなかった。

このほか、「町内会・自治会加入率の上昇」「公契約条例の制定」「まちづくりセンターの自主運営化10カ所増」を目指したが、達成できなかった。

除雪費追加し、市民の安全守る
補正予算は、除雪費や子育て世帯に商品券を交付する費用など、約103億円を提案した。これによる14年度一般会計の歳出予算の総額は9300億9400万円で、対前年伸び率は3・0%増。

除雪費は12月中旬からの降雪が多く、執行率が2月8日時点で81%に達していることから、今年度の除雪費186億6000万円を上回る見通し。そのため、運搬排雪やパートナーシップ排雪などに充てる費用として62億円を上積みする。

除雪費は昨年の第3回定例市議会で労務単価上昇分など5億6000万円を追加し、今回で2度目。これで除雪費総額は約249億円となり、過去最高の12年度213億円を上回る。

子育て世帯に商品券を配布
また、市内の消費喚起や市民の生活支援のために、10%のプレミアムが付いた1枚1100円分の商品券を千円で販売するほか、15年4月1日時点で18歳未満の子どもが3人以上いる子育て世帯に10枚(1万1千円分)、2人以下の世帯に5枚(5500円分)を無料配布する。

利用できる店舗は現在検討中で、商品券の使用期間は今年8月から来年1月までを予定。発行枚数644万8千枚のうち、販売分は550万枚、配布分は94万8千枚で、これらを合わせた発行・交付総額は約71億円。国の緊急経済対策の交付金事業を活用する。

このほか、2026年冬季オリンピック・パラリンピックの招致に向けた開催計画の策定に1億3600万円、定山渓地区の空き店舗の活用や店舗誘致の促進に700万円なども計上した。


2015年4月6日月曜日

薫風 号外から

地域からつくる《希望》
さっぽろの未来をつくる「市民力」

突然の年末解散総選挙。景気回復の実感は全く無く、市民感覚とは真逆の強権政治が行なわれているにもかかわらず、なぜか自民党が圧勝するという「不思議の国」ニッポン。安倍政権の目玉である「地方創成」と「女性活躍」のメッキは、早くもはがれ始めています。

「地方の時代」といわれて20年。しかし、「構造改革」の名のもとに地域が崩壊し、人が切り捨てられる政治が続いてきました。「沖縄」「福島」とつながる《希望》は、まだ見えないままです。
未来へと歩む軸足を「国家」と「地域」のどちらに置くのかの、せめぎ合いの時代が続く今こそ、「地域発」「市民発」「さっぽろ発」のまちづくりを進めていかなければなりません。

市民力による地方創成を
地方再生の切り札は、地元の雇用を支える「地域産業の育成」です。それには、地方の実情を踏まえた長期的な支援策が必要です。

民主党政権の」「地域一括交付金」は、そんな自治体の声に応えるものでした。しかし、あれこれの成功事例を集め、交付金というえさをバラまいて自治体のしりをたたく―官僚主導の古い手法が復活しそうです。

野放しにされる長時間労働と拡大される派遣労働。労働力として、「産む機械」として女性を都合よく利用する。「一握りの強いものだけが生き残る」という安倍政権の本質が、そこに表わされています。

地域ですでに始まっている新たな可能性への挑戦や、自分たちの暮らしに必要な政策やルールを市民力で創り上げる試み―「地域主権改革」への歩みを全力で進めます。

上田市政をつなぐ、つぎへ
今期限りでの引退を表明した上田文雄市長のスタートは、いわゆる「小泉構造改革」の嵐の真っ只中でした。そして、三期目の選挙戦直前の東日本大震災と福島原発事故。

上田市政は、日本の戦後の歩みが根本から問われる困難な時代の中にあって、「未来を切り開いていくためには、「これまで培ってきた市民自治の取り組みを積み重ね、さらに確かなものとしていく『市民自治の推進』と、札幌の持つ多彩な魅力を磨き高め、世界へ発信する『創造都市の推進』をまちづくりの基本理念として掲げ、全力で取り組む」として、揺るぎのない歩みを続けてきました。
市民とともに創り上げた「まちづくり戦略ビジョン」と「エネルギービジョン」を、着実に次の世代へとつないでいきます。

大都市「さっぽろ」の可能性
超高齢社会と人口減少社会。厳しい未来が予想される中にあって、持続可能な大都市のあり方やその方向性について、しっかりとしたビジョンが必要です。

社会環境の変化に対応した、歩いて暮らせるまちづくりや未来を担う人材育成はもちろん、北海道経済を牽引する役割も期待されています。
「北海道新幹線の札幌延伸」や「冬季オリンピックの招致」が、大都市「さっぽろ」の未来像とかさなり、私たちの希望を実現するものでなければなりません。

大都市は常に再生を図り魅力を高めなければならない宿命も持っています。公共施設の建て替え計画と合わせて、50年後には「市民力」が結集した象徴として語り継がれる事業にしていきたいと思います。

原発0(ゼロ)社会へ
放射性廃棄物の処分や再処理問題を棚上げしたまま、福島原発事故により「原発難民」となった10万人を超える人々の行き先も定まらないまま、安倍政権は原発再稼動への道を突き進んでいます。

自然・再生エネルギーの普及を、意図的に制限したり遅らそうという動きも目立ち始めています。
省エネルギーの実践、再生可能エネルギーの活用、分散型エネルギーの創出などを通して、脱原発依存社会、「環境首都さっぽろ」を目指します。