2013年12月12日木曜日

大島かおるの市議会リポート 薫風39号から

薫風39号
第三回定例市議会
公契約条例成立ならず

業界の圧力に屈した自民・公明
上田市長の公約でもある「公契約条例」は、昨年2月の第一回定例市議会に提案されて継続審査となる中、業界団体との話し合いを重ねて意向を反映した上で、今定例会に修正案として改めて提案されたものです。
しかし、商工会議所をはじめとする業界団体は、自らの利害に固執するだけで、社会的な役割には目を瞑(つむ)り、自民・公明と一体となって「働く仲間の賃金や労働環境を改善する第一歩としたい」という願いを否決しました。


なぜ、公契約条例か!!

景気の低迷と苛酷な企業間競争が、パート、臨時、派遣などの非正規労働の拡大と、ワーキングプアと呼ばれる新たな貧困を生み出してきました。一方、「年越し派遣村」や最低賃金と生活保護基準の逆転現象に見られるように、いわゆるセーフティーネットの張り替えが急務であることが、課題とされてきました。

このような中、「札幌市が発注する事業で働く人の賃金を保証するためのルール」を作ることで、賃金の底上げをはかり、安心して働くことのできる環境を確保することを目的として、提案されたのが公契約条例です。

疲弊した地域経済を活性化するためには、何よりも消費を増やすことが必要です。年金も国保も払うことのできない現状こそ、まず変えなければならないのではないでしょうか。10月30日に、上田市長が街頭で直接訴えたように「官製ワーキングプアや貧困を少なくするための第一歩として、行政と市民の責任として仲間を思いやる税金の使い方をしていく」ことが求められています。

強硬な反対はなぜ?

業界団体の反対理由は次のようにまとめられます。

  1. 公共事業の削減と、低価格入札が長く続き企業には体力がない。
  2. 労働者の待遇改善は労使間で決められるものである。
  3. 市が発注する事業に従事する人にだけ、特別な賃金を払うことはできない。
  4. 賃金台帳をつけて報告することは膨大な事務負担になる。入札制度の改革が先である。


何となく理屈が通っているように思えますが、「仕事はどんどんよこせ。儲けをどうするかは経営者の胸先三寸だ」と言っているのに等しい議論ではないでしょうか。

市は、最低制限価格のアップ、地元企業への受注機会の拡大、総合評価に地元貢献度を加える、複数年契約の導入など入札制度の改善を行なってきました。
しかし、市の賃金実態調査では、実際に支払われている賃金が、入札の際に示されている労務単価を大きく下回っていることが、明らかになっています。

公共発注(税金)の事業で「ピンはね」が、まかり通っている現状を認めるわけにはいきません。
また、過度の賃金の切り下げが、優秀な人材の確保と育成、企業の健全な発展の妨げとなっていることにも目を向けるべきです。

議会の動きは
10月29日の財政市民委員会での採決を前に、それまで慎重姿勢だった公明党から民主党に対して修正案の協議が持ち込まれ、一旦は、罰則に関わる条文を削除することで合意し、28日に議員提案として委員会に諮る手続きを進めました。

しかし、27日夕方になって、「どうしても業界団体の理解が得られないので、議員提案はできない」との翻意が伝えられ、否決の流れが一挙に強まります。

財政市民委員会は4対6で否決されましたが、上田市長は30日に街頭に出て訴える一方、キャスチングボードを握ることになった「改革みんなの会(三名)」に働きかけるなど、成立に向けた努力を重ねました。

10月31日、本会議最終日の朝になって「改革みんなの会」から、市長提出の条例案が否決(31対36)された後に、議員提案を行ないたいとの意向が伝えられ、1票差で成立の可能性が生まれることになります。

しかし、「改革みんなの会」の一名がこれに同調せず、議会運営委員会決定の取り扱いを巡って紛糾し、会期を一日延長した翌11月1日、結局僅か1票差(33対34)で否決されました。

残された課題
条例否決の背景には、昨年誕生した自公政権の存在があることは否めません。
業界団体の頑(かたく)なな姿勢には、上田市政との対立構造を意図した政治的な背景が感じられます。

しかし、1年9カ月にわたった論議によって、公契約条例への理解が深まったことは事実であり、入札制度のあり方や委託業務、指定管理者制度など今後の議論に積極的に生かしていく必要があります。
また、市発注業務の賃金状況や先行自治体の現状などの調査と情報発信を行い、「ワーキングプア」対策の必要性を、市民共通のものとしていかなければなりません。




震災復興と防災

石巻市(宮城県)
長岡市(新潟県)

福島第一原発事故による放射能汚染は、原発の再稼動問題も含め、多くのマスコミによって報道されていますが、津波被害からの復興状況はなかなか伝わってきません。

11月13日から15日まで、災害・雪対策調査特別委員会の一員として、東日本大震災からの復興途上にある石巻市と、中越大地震の経験を生かして地域防災に取り組む長岡市を視察しました。

私自身は、一昨年8月に市民運動の仲間と福島県郡山市、南相馬市、いわき市を、昨年6月には同僚議員と宮城県沿岸部と、札幌市が職員を派遣している山元町を訪問したのに続いて、3度目の被災地訪問になります。
石巻市日和山から見る南浜地区
石巻市
甦(よみがえ)る津波の記憶

積み上がっていたガレキはほとんどなくなり、表面上は落ち着きを取りもどしたように見える町並みですが、当時の状況を重ねて語られる職員の説明と、解体されずに残されている建物を前にすると、毎日報道されていた映像が思い出されます。

しかし、現地に立つと、海岸部と北上川に沿って広がる中心市街地の全域が浸水被害を受け、基幹産業である水産業を支えた全漁港が被災し、市場や加工施設が全壊した風景は、三五〇〇人余の死者、行方不明者とともに、被災地の皆さんの脳裏に焼き付き、日々甦(よみがえ)る記憶であることが感じられます。

困難な生活再建
水産加工場の約6割は再建されていますが、卸売市場を含めた港湾設備は、地盤沈下により約1mの嵩上げ工事が必要とのことで、大きく立ち遅れています。

仮設住宅と民間賃貸住宅に仮住まいしている約一万二千世帯の住まいの再建は、復興公営住宅の整備目標四千戸のうち、ようやく二百戸余の工事に着手したばかり。集団移転団地の造成も、対象となる46地区のうち工事着工数は19地区にとどまっています。

仮設住宅での生活の長期化と、再生への道筋が描けない基幹産業である漁業・水産加工業。
立ち遅れが心配される、「絆と共同の共鳴社会づくり」を目指す石巻市震災復興基本計画。
港湾設備の本格的な復旧、北上川堤防の建設、下水処理場の再建、高盛り土(防災)道路の建設など、ようやくスタートする大型の公共インフラ整備事業によって、復興への歩みが加速するのか、生活再建への道筋を描くことができるのか。

東日本大震災から3年目も残すところ4カ月、被災地はまだまだ、困難な課題を抱え続けています。
石巻市役所前


津波被害を物語る称法寺(南浜)



長岡市
防災拠点としての学校

04年10月に発生した中越大地震によって長岡市は震度6弱を記録し、ライフライン復旧までの1週間、およそ3万人(最大時5万人)が避難生活を送りました。
避難所の中心は当然ながら学校の体育館でありグランドだったということです。

長岡市は、学校アンケートなどによって避難所としての課題を整理し、既設学校については3年間1億円の事業費で、
  1. 体育館出入り口のスロープ
  2. 体育館に最低1カ所の洋式トイレ
  3. 体育館にテレビと電話配線
  4. 受水層に飲料用の蛇口
  5. プロパンガス変換機の接続口
  6. 防災用品の備蓄庫の設置
を行なってきました。
訪問した宮内中学校は改築に当たって、避難所機能を更に強化する観点から、また教育活動に支障のないよう、避難エリアとなる体育館、武道館、給食室と教室を中心としたエリアとに分けられるよう配置を工夫しています。
更に、
  • 保健室が中庭を通じて避難エリアと行き来ができる。
  • 体育館に通じる屋根つき広場によって、救急車両の進入や避難物資の搬入が容易になる。
  • ほぼ中央のPTA室が災害時には対策本部として利用可能。
  • 体育館に障がい者用トイレと温水シャワー室を設置する。
など、地域防災拠点としての役割が期待されます。

長岡市市民防災センター


地震体験車
防災シビックコア
旧国鉄長岡操車場跡地を利用して開発された防災シビックコア地区には、消防本部庁舎、防災センター、防災公園が集中して整備されていました。

本部庁舎は5階建てながら免震構造となっており、天然ガスのコージェネレーションシステムを導入しています。また、市役所の災害対策本部会議室には、雪害や風水害にも対応できる大型ディスプレイが設置され、市内22カ所の定点カメラの映像などの情報を同時に見ることができます。

防災公園の大部分は芝生の多目的広場となっており、災害時には避難テント475張が建てられる広さです。地下には60tの雨水貯留槽、100tの飲料水用貯水槽が設置され、24基の非常用トイレと合わせて、市民の防災拠点となります。

 市民防災センターの1階部分には子育て支援センターが開設され、床面をゴムチップで舗装した直径約24mの屋根付き広場とともに、大規模災害時には「ボランティアセンター」として活用できるように工夫がされています。

2階部分が防災学習・研修拠点として整備され、体験型学習・訓練や防災学習コンテンツの貸し出しなどが行われています。
また06年度に、地域防災リーダーの育成を目的に開講した「中越防災安全大学」は、5カ月間で26講座、受講料一万五千円という募集内容にもかかわらず、既に三百人を越える卒業生が「中越市民防災安全士」として活躍しているとのことでした。


市民力で進む家庭ごみ減量化
着実に進むスリムシティさっぽろ計画

09年7月、家庭ごみの有料化と同時にスタートした新ゴミルールも5年目を迎え、多くの市民の協力によって生活の中に溶け込み、減量とリサイクルの取り組みが着実に進められています。

計画に定める五つの管理目標のうち、廃棄ごみ量、焼却ごみ量、埋め立て処分量は、既に17年度の最終目標を達成し、篠路清掃工場の建て替えが不要になったことはご承知のとおりです。
残るリサイクル率と1日一人当たりの廃棄ゴミ量については、中間目標は達成しているものの、足踏み状態といったところでしょうか。生ゴミの減量化や、雑紙・プラスチック類の分別徹底が課題とされています。


第三回定例会、第二部決算特別委員会

家庭ごみ処理手数料の行く先

約30億円の収入の使い道は、
  • 「雑紙」や「枝・葉・草」など、新たな収集体制の整備や資源物(「ビン・缶・ペットボトル」「容器包装プラスチック」)の増加に対応する収集・資源化の費用など、直接リサイクルに関わるものが約20億円。
  • 集団資源回収奨励金や地区リサイクルセンターの運営費などに約3億円。
  • ゴミパト隊監視パトロールや管理器材購入費助成に約1億円。収集日カレンダー、ゴミ分けガイドの作成・配布や、リサイクルプラザの運営に約1億円。

指定ゴミ袋の製造・保管に約5億円など、まさに市民自らの力によって、札幌市のリサイクル事業を支えているといえます。

悩みのゴミステーション管理
ゴミステーションでは排出マナーが問題になることから、戸別収集についての検討が進められてきました。しかし、
  1. 収集に要する時間が現状の3倍以上
  2. 必要車両台数が2・5倍
  3. 年間収集経費が3倍の92億円
  4. 冬期間は更に収集効率が悪化
などの理由と、市民の約7割がステーション方式に理解を示していることから、現行方式の中で管理負担の軽減に取り組むこととなりました。

このため、約三千カ所のステーションで、ゴミパト隊と町内会が協力して、重点的な改善の取り組みを行う一方、20〜30世帯に一カ所から10〜15世帯に一カ所へと小規模化をはかり、既存共同住宅には専用化を促しています。

この取り組みによって、共同住宅の専用ゴミステーションは新築で約三千カ所、既設で約五千カ所増え、共用ステーションは若干減少との成果を生んでいます。

新たな取り組み

さわやか収集
自力でゴミステーションまで排出することが困難で、身近に支援を受ける人がいない要介護者や障がい者のゴミ出し支援を行なう事業です。安否確認を行なうことで地域の支え合いの役割も果たすことが期待されています。
民主党の提案で09年7月にスタートしましたが、利用要件の拡大に向けて昨年10月から西区でモデル事業を実施、来年度から新たな見直し内容で全市で実施されます。

小型家電リサイクル
 金、銀、リチウム、プラチナなどの希少金属を使用し、「都市鉱山」とも呼ばれる小型家電のリサイクル事業が10月から始まりました。回収する家電は一辺30㎝以下のもので、これまで「燃やせないゴミ」として破砕工場に送られていたり、家庭で眠っていた家電から、有用金属を取り出すことができるようになります。この事業も民主党が早期の取り組みを求めていたものです。

各区役所など市内23カ所の市有施設と、国から認定を受けたリサイクル事業者マティックが5カ所に回収ボックスが設置されます。