転換期にある札幌の未来像
まちづくり戦略ビジョン春の訪れと共にメディアでは「アベノミクス」が踊っています。円安と株高で日本経済は一息ついたと言われますが、私たちにその実感はないのが現実です。13兆円の補正予算と92兆円の今年度予算は、歴代の自民党政権が借金を積み上げてきた政策の焼き直しに過ぎませんし、次々と打ち上げられる政策らしきものも、そのバックボーンは何なのか、将来どのような社会につながるのか、あいまいなまま美しい衣だけをまとっているように感じます。
社会保障改革の議論がまったく進まないばかりか、非正規労働者の割合は増え続け、介護労働の現場では若者が希望を失い、慢性的な人手不足にあえいでいます。東日本大震災の被災地では、復興を支えるマンパワーが足りず、資材や人件費の高騰が懸念されています。とりわけ、原発事故によって避難生活を強いられている人々(未だに15万人超)の生活は深刻です。
私たちは時代におもねることなく、現実としっかりと向き合いながら、札幌のまちづくりに挑戦したいと思います。
新型低床車両試乗会、隣は中央区村上ゆうこ市議 |
将来を見据えて
これまで、まちづくりの基本となる長期計画は、約20年間を見通すものとして作成されてきました。成長や科学技術の発展を前提としたものであり、かなり楽観的な将来予測を基にしていたと言ってよいでしょう。
近年、「パラダイムシフト」という言葉をよく耳にします。「ある時代に中で規準となる考え方の変更」という意味ですが、社会情勢の大きな変化にふさわしい判断と行動が求められているということでもあります。少子高齢社会や人口減少、更には環境とエネルギー問題など、私たちが避けて通れない困難な課題に、193万人の札幌市民が未来に向かって果敢に挑戦するための方向性がしっかりと示されなければなりません。
おおよそ10年間の基本指針となる新たな長期計画である「まちづくり戦略ビジョン」。市議会では、先の第一回定例会で「ビジョン編」について議決をしました。
目指すべき都市像
「北海道の未来を創造し、世界が憧れるまち」「互いに手を携え、心豊かにつながる共生のまち」│「ビジョン編」に示された二つの都市像は、これからの都市機能や公共サービスの充実、地域や自治体間の連携などコミュニティーの再生、環境首都や創造都市の実現を目指して市民の皆さんと共有し、共に取り組んでいくことを目的としています。
「地域」「経済」「子ども・若者」「安全・安心」「環境」「文化」「都市空間」の七つの重要な視点に沿って24の基本目標が掲げられ、それぞれに「実現に向けて私たちが取り組むこと」として挙げられた具体的な課題は、今秋に策定を目指して策定作業が行なわれる「戦略編」の中に、実施計画として活かされていくことになります。
9割以上の市民が「好きだ」と思い、毎年行なわれる都市ブランド調査での「魅力度」でも、2年連続一位に輝く札幌。その札幌型のライフスタイルを未来に伝え、全国に世界に発信していくスタートは「今でしょ!!」。
新たな都市経営戦略
右肩上がりの成長を続けてきた時代は、新たな事業や政策への予算も、既存の予算はそのままに上乗せすることができました。しかし、人口減少は収入の基本である税収の減少であり、急速な高齢化は社会保障費の増大につながります。
「地方主権改革」や「社会保障と税の一体改革」など、国の制度改正は遅れており、札幌市の財政見通しは依然として厳しく不透明であるといえます。
そこで「戦略編(案)」では、先に挙げた7つのまちづくりの分野を横断的に整理し、「選択と集中」の視点から、「暮らし・コミュニティー」「産業・活力」「低炭素社会・エネルギー転換」の3分野に、人材や税金を集中するとしています。
そのためには、①市民自治の更なる推進、町内会やNPOはもとより社会的企業などの「新しい公共」の育成と支援、積極的な連携、②行政サービスや公共施設整備のあり方の見直しと人材育成、③計画的かつ機動的な財政運営と、北海道や道内市町村との連携などに、徹底した情報提供と市民議論を通じて取り組む必要があります。
憲法と自治と暮らし
現憲法は「悪者」ですか?憲法改正論議がにわかにかまびすしくなっています。それも、本質論はさておいて手続きだけまず変えてしまおうというのですから、「あれれ?」という感じがしています。ある新聞のコラムでは「96条の改正は裏口入学にひとしい」との指摘がありました。
まず確認しなければならないのは、現憲法下で具体的な政策決定や法律制定の際にできないことは何なのか? ということです。
私のつたない知識では、「軍隊の保持」と「大統領(首相公選)制」に尽きると思います。
注意しなければならないのは、この二つとも強大な権力の集中と行使を前提としていることです。そして「国民」よりも「国家」の利益を優先することです。
閉塞感と不安感が漂う中で膨らんでいる「強さ」への憧れ。きわめて内向きな発想である「新自由主義」と隣り合わせといえるでしょう。
市民自治と地方主権改革は、これからも私たちにとって大切な取り組みであり続けます。国際化社会の中で、自治体外交や民衆による安全保障、多文化共生社会の実現へと向かうとき、「強さ」を誇示し「憲法改正」へと暴走することは、まさに「国益」を損ねることにつながるのではないでしょうか。
全道メーデーで「憲法擁護」を訴える上田市長 |
積み重ねられてきた歩み
国の法律や制度の壁によって跳ね返されながらも、市民は粘り強い交渉や裁判に訴えることによって、自治体は独自の条例を制定したり、いわゆる「横だし」することによって、憲法の理念を実現する努力を続けてきました。
今は当たり前とされている「男女共同参画」や「共生社会」という考え方や、「環境権」「子どもの権利」という新たな権利概念、「情報公開」という市民社会のツールがそうですし、厳しい公害規制や新たな福祉制度は、70年代のいわゆる「革新市政」を起源としています。
これに対して、大きな抵抗勢力として存在したのが、かつての自民党政治であり、官僚政治であったといえます。
憲法をないがしろにしてきた人たちが今、「変えられぬ政治」への不満を巧みに利用して、「憲法改正で日本は良くなる」という幻想に国民を組み込もうとしている。これって、「改革の本丸は郵政民営化」と絶叫した元首相の手法と似ていませんか。
再び、生活保護について
繰り返すまでもありませんが、生活保護法は「憲法第二十五条 全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上に務めなければならない」に拠っています。
問題の一つは、自民党の憲法改正草案にある「家族主義」が持ち出されていることです。生活保護受給者は様々な事情を抱えており、家族関係も複雑な場合が多くあります。「家族の扶養義務」を強調することは、憲法十三条に示される「全て国民は、個人として尊重される」としている、近代市民社会の原理を踏みにじることにつながる恐れがあります。
二つ目は、生活賃金との比較です。最低賃金を上回るとして保護基準の引き下げを主張する人がいます。バッシング社会の典型といえますが、まさに本末転倒。「最低限度の生活」を保障するとして決められた水準に達していない、最低賃金こそが憲法違反といえます。非正規労働者が増加する中で、年金や医療を含めたセーフティーネットの張替えを急がなければなりません。
全道メーデー会場にて同僚議員と共に |
前文が示す
憲法の「肝(きも)」
少し長くなりますが、「日本国憲法」の前文を引用します。
『(略)そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
(略)われらは、平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。(略)』
護憲、活憲、加憲、改憲と皆さんにもいろいろな考えがあることと思いますが、現憲法のエッセンスは前文に示されていると思います。何よりも、私たちにとっての基本原理である憲法が、時代のちょっとした雰囲気や政治家のポピュリズム(大衆迎合主義)によって変えられてはなりません。
「居直り」と「逆切れ」
日本維新の会橋下徹大阪市長にみる政治家の言葉「(軍隊に)慰安婦制度が必要なのはだれだってわかる」│更には、沖縄の米海兵隊司令官に「もっと風俗業を活用して欲しい」│橋下発言が波紋を呼んでいます。
歴史との向き合い方、更には人権感覚、居酒屋談義以下の論評に値しないほど稚拙なものですが、公党の代表であり大都市の首長の発言となれば、その責任は重いといえます。
しかし、各方面から批判を受けると、そこからが橋下流。論点をずらし自分で勝手に土俵を作り、一見するとまともそうな理屈で相手を徹底的にやり込める。今度も、「売春婦は昔から存在した」「風俗業をセックスと結びつけるのは心外」と言い訳を重ね、更に問い詰められると、メディア報道を「大誤報」と居直り、ついには「日本人の読解力不足」と逆切れしています。
93年の河野官房長官談話は、国民と国際社会に向けて発せられたものであり、政治に携わるものはこれを尊重しなければなりません。
私たちはこれまでも、「失言」「妄言」によって職を辞した政治家を多く見てきました。そして、それがトカゲの尻尾切りに終わり、単に政治家個人への失望にとどまらず、政治不信つながっていることを肝に銘じなければなりません。
札幌市議会は08年11月の第四回定例会で「慰安婦問題の真相究明と被害者の尊厳回復」を求める意見書を採択しており、決して見過ごしてはならない問題であると考えます。
道外視察から
公共図書館の新たな役割佐賀県武雄市の試みから
樋渡(ひわたし)武雄市長から説明を受ける視察団 |
市民にとって「知」の財産ともいえる図書館も、自治体の財政難を理由とした「民営化」に揺れています。その背景には、利用者の減少や固定化、開館時間の延長などのサービス充実を望む声があります。当然、専門性や公共性の観点から、「民営化」にはなじまないとの反論も多くあります。
このような中、全国的にも話題となっている武雄市立図書館を訪れました。
図書館のイメージを変える実験
改築期を迎えた図書館を、何とか「まちづくりの起爆剤に」と考えた樋渡(ひわたし)市長自らが、TUTAYA社長と交渉し、わずか1年で計画を創り上げたという、いわば「コンビニ型図書館」。開館時間は午前9時から午後9時まで、年中無休を売り物にしています。
正面から入るとすぐにスターバックスが運営するコーヒーショップ、そしてTUTAYA書店とCDレンタルコーナーが出迎えてくれます。図書館とは全く異なる賑わいと明るさに、面食らうことは間違いありません。
蔵書についても、徹底したマーケティング調査の結果として雑誌類を多く取り入れ、分類法は書店と似た形に変更し、更に、検索機があちこちに設置され、ポイントカードも導入されています。
既成の概念を根本から変える壮大な実験とも言えるでしょう。
市長の英断となるのか?
リニューアルオープンして初の視察団ということで、市長じきじきに説明と案内役をしていただくという歓迎を受けました。
マスコミの注目度も高く、開館一週間の来館者数と図書貸し出し数は、それぞれ前年比658%、279%と好調で、スターバックスの売上も全国3本の指に入るということです。
また、改革派を自認する、総務省出身の若手市長の挑戦には好意的な市民も多いとのことです。
一方、民間事業者の占めるスペースが公共施設の顔となっていることを含めて、「公共性」や「情報管理」、4年毎の契約更新の条件、民業圧迫などの課題にどう応えて行くのか?初発の人気が定着するのか?など、検証が必要な点も多く、これからもしっかりとした追跡調査が必要です。
会派の会長に就任しました
市議会民主党・市民連合(会員23名)では、任期の後半を迎えて新たな役員体制を決定しました。前半の約一年十一カ月間は副議長という大役をいただき、貴重な経験を積むことができました。多くの方々の支えに心から感謝を申し上げます。
副議長職は藤原廣昭議員(東区)にバトンタッチし、向こう二年間は会派のまとめ役として、難局に臨むことになります。上田市政をしっかり支え、その成果を市民に伝えると共に、将来を見据えて、新たな課題にも全力で挑戦します。是非、率直なご意見、ご批判をお寄せください。
他の役員は以下の通りです。
副会長 小野 正美(手稲区)
〃 恩村 一郎(清田区)
〃 三宅 由美(南区)
幹事長 桑原 透(清田区)
幹事長代理 峯廻 紀昌(豊平区)
副幹事長 小川 直人(厚別区)
政審会長 長谷川 衛(中央区)
副政審会長 宝本 英明(北区)