2013年3月6日水曜日

大島かおるの市議会リポート 薫風37号から

                                      
【薫風 37号】

どこにむかう?「地域主権」改革

昨年12月の衆議院選挙の結果、自公連立による第二次安倍内閣がスタートしました。
外交や経済政策から憲法改正まで、すでに様々な場面で論じられておりますが、ずいぶんと荒っぽい議論のように思えてなりません。

「力づく」でアジア地域の平和と発展が保障されるのか。
公共事業の復活と円安・株高は、市民生活にプラスになるのか。
憲法改正で具体的に何がどうなるのか。

威勢のいい決意表明に踊ることなく、丁寧に議論を進めて欲しいものです。そして、すっかり蚊帳の外に置かれた感じの「地域主権」。どうも逆向きに進もうとしている感があり、自治体議員としては一番気になるところです。

「地方交付税」の削減
小泉政権の時代、補助金と同時に地方交付税がカットされ、自治体の財政は疲弊しました。ようやく民主党政権で回復したと思ったのも束の間、再び自治体いじめが始まりました。使い道の自由度を高めるとして創設された「一括交付金」制度も風前の灯です。

財政再建の名の下に、限界を超えて職員削減を行ったことによって、東日本大震災の被災自治体では復興に必要なマンパワーが不足し、全国の自治体でも、最低限必要な住民サービスの提供に不安が生じる事態になっています。全国知事会をはじめとする地方6団体の強い反対によって、来年度予算に限り別枠で補てんされることになりましたが、今後の財政運営に大きな影を落とすことになりそうです。

道州制と大阪都構想
国と基礎自治体(市町村)の間にあって、大きな権限と財源を握っている都道府県。
中央省庁に加えて都道府県という強大な二つの権力が、地方自治の発展を妨げているとして、これまでの地方分権論議の中で課題とされてきたのが「道州制」問題です。

しかし、国の統治機構を根本から変える大改革であるにもかかわらず、とりあえず「改革」のポーズを示すための免罪符に使われている、というのが正直なところではないでしょうか。国の権限を分散化しスリム化するという建て前には、誰も反対できませんが、新たに強大な権力が集中するのであれば、たまったものではありません。

何よりも、戦時下の特殊な事情で作られた中央集権的な制度である東京都を真似て、「大阪都」構想を熱心に説く橋下維新の会が、「地域主権」を進める側から「道州制」を主張しているとは思えないのです。

生活保護基準の切り下げ
昨年来の生活保護バッシングはとどまるところを知らず、安倍政権は、とうとうセーフティーネットの最後の砦でもある保護基準の切り下げに手をつけようとしています。

稼動可能世帯には就労支援や職業訓練の充実、母子家庭には母親の自立への支援、子どもの育ちや教育を保障する仕組みづくり、高齢者には不十分な国民年金との隙間を埋める制度の創設など、制度そのものの見直しが必要であることは、これまでも訴えてきました。

生活保護制度を支え、自治体の現場で苦悩するケースワーカーの声をしっかりと受け止めること。そして、上田市長もメンバーとして加わった、厚労省「生活困窮者の支援のあり方に関する特別部会」の報告書に沿って議論が進められることが望まれます。

札幌市中央図書館に開設された、障害者が働く3店目の元気カフェ「本の森」オープニング
上田市長、長谷川議員(中央区)とともに

札幌の将来を見据えて

第一回定例市議会がスタート
2月13日、来年度予算案を審議する2013年度第一回定例市議会が召集されました。
上田市政3期目の折り返しの時期でもあり、この10年の「市民自治」の歩みを更にステップアップする重要な節目にも当たります。

上田市長は議案説明に先立ち、「この10年を振り返りますと、私たちは、時代の転換点とも言うべき歴史的な出来事を幾度となく経験し、生活を取り巻く環境は大きく変化しました。特にリーマンショックを契機とした世界的な金融危機や、国政における2度の政権交代、そして、今なお記憶に新しい福島第一原子力発電所の大事故を含む東日本大震災は、これまでの常識や価値観、更には一人ひとりのライフスタイルを見つめなおす大きな契機となりました。」
「市民自治の積み重ねと市民力の結集が、未来を切り開いていく力になると信じています。」と、所信を述べています。

今後10年間の新たなまちづくりの指針となる「札幌市まちづくり戦略ビジョン」も提案され、3月28日までの44日間にわたって熱い議論が展開されます。

将来への種まきを
予算編成の基本方針は、「戦略ビジョンの策定に向けて、2年間にわたって行なわれてきた市民議論を踏まえ、新たに見つかった課題への対応と、将来のまちづくりに向けての種となるような取り組み」と、「喫緊の課題である防災力の強化や地域経済の活性化を後押しすること」とされています。

予算規模は、一般会計8524億円、特別会計3518億円、企業会計2483億円の総額1兆5524億円と、ほぼ横ばいとなっていますが、地域経済対策としての補正予算、一般会計162億円、企業会計50億円を含めると、1・7%増となります。雪対策についても20億円が追加されました。

歳入について、根幹である市税は、景気低迷による所得減少の影響で個人市民税の減少はあるものの、固定資産税やたばこ税の増加で、ほぼ前年並みを確保。地方交付税は、国の財源不足によって振り替えられている臨時財政対策債への依存度がさらに増加し、将来への影響が懸念されます。

なお不足する財源122億円については、「札幌市行財政改革プラン」に沿った歳出の見直しで111億円、不足する11億円は財政調整基金からの取り崩しによって補てんするとしています。

切れ目ない経済対策
事業の柱としては、①暮らし・コミュニティー②産業・活力③エネルギー転換の3点が示されています。

「暮らしコミュニティー」では、昨年1月に発生した姉妹孤立死などを受けて、民生委員による知的障害者の見守り活動を支援するほか、各区役所に保健福祉の総合相談窓口を開設してワンストップサービスを強化します。秋には、急病時の市民相談に24時間・365日対応する「(仮称)救急安心センターさっぽろ」の開設が予定されています。

「産業・活力」では、フードコンプレックス特区と、さっぽろコンテンツ特区を、最大限活用する取り組みを強化し、来年夏の開催をめざす「国際芸術祭」の準備を本格化します。また、学校施設の耐震化や橋梁の長寿命化事業を前倒しするほか、路面電車のループ化に着手し、新型低床車両2両が導入されます。

「エネルギー転換」では、原発に依存しない社会を目指し、再生可能エネルギーや省エネルギーを推進するエネルギー計画が策定されます。この計画を総合的に統括し進めるための組織が新たに設置されるほか、市有施設や民間住宅への次世代型エネルギーシステムの普及拡大が図られま
 す。

 新年を迎え、ご挨拶

1月5日 札幌市聴覚障害者協会新年交礼会
 

1月8日 子ども議会本会議

元気の種コレクション

市職員が議場で職場の取り組みを発表
札幌市の職員が普段の仕事の中から生み出される新しい取り組みや業務改善策などを発表する「元気の種コレクション」(種コレ)が2月7日に行われました。

種コレは職員が出したアイディアや取り組みが札幌を元気にする「種」で、市民が元気なる施策を展開して「芽」がでるようにと05年から行われていますが、今年は多くの市民に見てもらおうと市議会本会議場で開催され、インターネット中継も行われました。

窓口で自殺のサインを察知する対応策などをまとめたカードを活用した事例や、来庁した市民の利便性を図るために担当部署ハンドブックを活用した取り組みなどがプロジェクターや寸劇、区のマスコットキャラクターなどを駆使して紹介されました

日中新時代への思い

一月末、中日友好協会(唐家?会長)の招待で、北海道日中友好協会訪問団の一員として北京を訪問しました。
「中国社会科学院」正門にて

ご承知のように昨年は日中国交正常化40周年。札幌市ではPMFオーケストラが初めての海外公演として北京市、瀋陽市で演奏会を行い、瀋陽市からは市民合唱団が来札して市役所ロビーでコンサートを行うなど、友好・交流を深める行事が重ねられました。

 しかし、秋口に入ってから尖閣列島国有化を巡って一気に政治的緊張が高まり、経済や観光分野ばかりか民間交流にまで大きな影響を及ぼしました。

今年は中国のお正月である「春節」と重なり、団体客が期待された「さっぽろ雪まつり」もさっぱりだったということです。

 「一衣帯水」といわれる日本と中国の関係が、このままの状態で良いと思っている人はいないはずです。
毎日のように伝えられる尖閣諸島の映像の一方には、瀋陽市と札幌市が姉妹都市提携をして32年の交流を重ね、千人を超える留学生が学び、そして札幌を永住の地として事業を営む人も年々増加しているという「あたりまえの歴史の積み重ね」があります。

中日友好協会との会談をはじめ、中国社会科学院が主催するシンポジウムへの参加、中華青年連合会や北京市民間国際交流協会との交流、歴代の駐札幌総領事の皆さんとの再会など、あわただしい日程ではありましたが、実りの多い訪問になりました。
今回の訪中を通じて、私自身が感じたこと、再確認したことを以下に記します。

「民間先行」について
これは「民が官を促す」の意味でもあり、唐会長も繰り返し強調され、「2千年にわたる友好交流の歴史に、私たちは改めて学ぶ必要がある」との提言もされました。

中国では政権の移行期であり習近平体制が固まっておらず、日本もまた、政治的にも社会的にも閉塞感が漂う中で将来の目標が見えづらい時期にあります。

内政面で不安定要素を抱えるとき、あるいは国民の不満が大きいとき、政府は外交面での強行姿勢で支持を集めようとする傾向があります。

政治的な主張を繰り返して力を誇示するだけでは、対話の糸口さえつかむことができません。お互いの立ち位置を理解しあうこと、交流の歩みを止めないこと、そして、相手のふところに飛び込んで対話を重ねることが、私たち自治体交流や民間外交の変わらぬミッションではないでしょうか。

「戦略的互恵関係」とは
 これも唐会長が指摘されたことですが、「互恵」が、あまりに経済関係に偏りすぎていたことを反省し、未来に向けて再定義をすることが望まれます。

まず、急速な経済発展に伴う社会的な矛盾の広がりに悩む中国と、新たな社会・経済モデルを描けずに苦闘する日本というステレオタイプで描かれる対立構造から脱しなければなりません。また「互恵」にとって優越感や対抗意識は無用といえます。

 「政令経熱」で済まされていた時代は去り、これまでとは全く異なる国際環境の下で、日中間だけではなく、アジア太平洋地域の平和と発展への、目標や課題を共有することが求められています。

この10年、私たち自身も内向きな思考にとらわれ続けてきました。「国益」というものがあるとすれば、ウィンウィンの関係があってはじめて守られるのではないでしょうか。

私たち自身が日々の活動の中で積み重ねてきことを、より多くの人に伝え、広く発信していきたいと思います。