2013年12月12日木曜日

大島かおるの市議会リポート 薫風39号から

薫風39号
第三回定例市議会
公契約条例成立ならず

業界の圧力に屈した自民・公明
上田市長の公約でもある「公契約条例」は、昨年2月の第一回定例市議会に提案されて継続審査となる中、業界団体との話し合いを重ねて意向を反映した上で、今定例会に修正案として改めて提案されたものです。
しかし、商工会議所をはじめとする業界団体は、自らの利害に固執するだけで、社会的な役割には目を瞑(つむ)り、自民・公明と一体となって「働く仲間の賃金や労働環境を改善する第一歩としたい」という願いを否決しました。


なぜ、公契約条例か!!

景気の低迷と苛酷な企業間競争が、パート、臨時、派遣などの非正規労働の拡大と、ワーキングプアと呼ばれる新たな貧困を生み出してきました。一方、「年越し派遣村」や最低賃金と生活保護基準の逆転現象に見られるように、いわゆるセーフティーネットの張り替えが急務であることが、課題とされてきました。

このような中、「札幌市が発注する事業で働く人の賃金を保証するためのルール」を作ることで、賃金の底上げをはかり、安心して働くことのできる環境を確保することを目的として、提案されたのが公契約条例です。

疲弊した地域経済を活性化するためには、何よりも消費を増やすことが必要です。年金も国保も払うことのできない現状こそ、まず変えなければならないのではないでしょうか。10月30日に、上田市長が街頭で直接訴えたように「官製ワーキングプアや貧困を少なくするための第一歩として、行政と市民の責任として仲間を思いやる税金の使い方をしていく」ことが求められています。

強硬な反対はなぜ?

業界団体の反対理由は次のようにまとめられます。

  1. 公共事業の削減と、低価格入札が長く続き企業には体力がない。
  2. 労働者の待遇改善は労使間で決められるものである。
  3. 市が発注する事業に従事する人にだけ、特別な賃金を払うことはできない。
  4. 賃金台帳をつけて報告することは膨大な事務負担になる。入札制度の改革が先である。


何となく理屈が通っているように思えますが、「仕事はどんどんよこせ。儲けをどうするかは経営者の胸先三寸だ」と言っているのに等しい議論ではないでしょうか。

市は、最低制限価格のアップ、地元企業への受注機会の拡大、総合評価に地元貢献度を加える、複数年契約の導入など入札制度の改善を行なってきました。
しかし、市の賃金実態調査では、実際に支払われている賃金が、入札の際に示されている労務単価を大きく下回っていることが、明らかになっています。

公共発注(税金)の事業で「ピンはね」が、まかり通っている現状を認めるわけにはいきません。
また、過度の賃金の切り下げが、優秀な人材の確保と育成、企業の健全な発展の妨げとなっていることにも目を向けるべきです。

議会の動きは
10月29日の財政市民委員会での採決を前に、それまで慎重姿勢だった公明党から民主党に対して修正案の協議が持ち込まれ、一旦は、罰則に関わる条文を削除することで合意し、28日に議員提案として委員会に諮る手続きを進めました。

しかし、27日夕方になって、「どうしても業界団体の理解が得られないので、議員提案はできない」との翻意が伝えられ、否決の流れが一挙に強まります。

財政市民委員会は4対6で否決されましたが、上田市長は30日に街頭に出て訴える一方、キャスチングボードを握ることになった「改革みんなの会(三名)」に働きかけるなど、成立に向けた努力を重ねました。

10月31日、本会議最終日の朝になって「改革みんなの会」から、市長提出の条例案が否決(31対36)された後に、議員提案を行ないたいとの意向が伝えられ、1票差で成立の可能性が生まれることになります。

しかし、「改革みんなの会」の一名がこれに同調せず、議会運営委員会決定の取り扱いを巡って紛糾し、会期を一日延長した翌11月1日、結局僅か1票差(33対34)で否決されました。

残された課題
条例否決の背景には、昨年誕生した自公政権の存在があることは否めません。
業界団体の頑(かたく)なな姿勢には、上田市政との対立構造を意図した政治的な背景が感じられます。

しかし、1年9カ月にわたった論議によって、公契約条例への理解が深まったことは事実であり、入札制度のあり方や委託業務、指定管理者制度など今後の議論に積極的に生かしていく必要があります。
また、市発注業務の賃金状況や先行自治体の現状などの調査と情報発信を行い、「ワーキングプア」対策の必要性を、市民共通のものとしていかなければなりません。




震災復興と防災

石巻市(宮城県)
長岡市(新潟県)

福島第一原発事故による放射能汚染は、原発の再稼動問題も含め、多くのマスコミによって報道されていますが、津波被害からの復興状況はなかなか伝わってきません。

11月13日から15日まで、災害・雪対策調査特別委員会の一員として、東日本大震災からの復興途上にある石巻市と、中越大地震の経験を生かして地域防災に取り組む長岡市を視察しました。

私自身は、一昨年8月に市民運動の仲間と福島県郡山市、南相馬市、いわき市を、昨年6月には同僚議員と宮城県沿岸部と、札幌市が職員を派遣している山元町を訪問したのに続いて、3度目の被災地訪問になります。
石巻市日和山から見る南浜地区
石巻市
甦(よみがえ)る津波の記憶

積み上がっていたガレキはほとんどなくなり、表面上は落ち着きを取りもどしたように見える町並みですが、当時の状況を重ねて語られる職員の説明と、解体されずに残されている建物を前にすると、毎日報道されていた映像が思い出されます。

しかし、現地に立つと、海岸部と北上川に沿って広がる中心市街地の全域が浸水被害を受け、基幹産業である水産業を支えた全漁港が被災し、市場や加工施設が全壊した風景は、三五〇〇人余の死者、行方不明者とともに、被災地の皆さんの脳裏に焼き付き、日々甦(よみがえ)る記憶であることが感じられます。

困難な生活再建
水産加工場の約6割は再建されていますが、卸売市場を含めた港湾設備は、地盤沈下により約1mの嵩上げ工事が必要とのことで、大きく立ち遅れています。

仮設住宅と民間賃貸住宅に仮住まいしている約一万二千世帯の住まいの再建は、復興公営住宅の整備目標四千戸のうち、ようやく二百戸余の工事に着手したばかり。集団移転団地の造成も、対象となる46地区のうち工事着工数は19地区にとどまっています。

仮設住宅での生活の長期化と、再生への道筋が描けない基幹産業である漁業・水産加工業。
立ち遅れが心配される、「絆と共同の共鳴社会づくり」を目指す石巻市震災復興基本計画。
港湾設備の本格的な復旧、北上川堤防の建設、下水処理場の再建、高盛り土(防災)道路の建設など、ようやくスタートする大型の公共インフラ整備事業によって、復興への歩みが加速するのか、生活再建への道筋を描くことができるのか。

東日本大震災から3年目も残すところ4カ月、被災地はまだまだ、困難な課題を抱え続けています。
石巻市役所前


津波被害を物語る称法寺(南浜)



長岡市
防災拠点としての学校

04年10月に発生した中越大地震によって長岡市は震度6弱を記録し、ライフライン復旧までの1週間、およそ3万人(最大時5万人)が避難生活を送りました。
避難所の中心は当然ながら学校の体育館でありグランドだったということです。

長岡市は、学校アンケートなどによって避難所としての課題を整理し、既設学校については3年間1億円の事業費で、
  1. 体育館出入り口のスロープ
  2. 体育館に最低1カ所の洋式トイレ
  3. 体育館にテレビと電話配線
  4. 受水層に飲料用の蛇口
  5. プロパンガス変換機の接続口
  6. 防災用品の備蓄庫の設置
を行なってきました。
訪問した宮内中学校は改築に当たって、避難所機能を更に強化する観点から、また教育活動に支障のないよう、避難エリアとなる体育館、武道館、給食室と教室を中心としたエリアとに分けられるよう配置を工夫しています。
更に、
  • 保健室が中庭を通じて避難エリアと行き来ができる。
  • 体育館に通じる屋根つき広場によって、救急車両の進入や避難物資の搬入が容易になる。
  • ほぼ中央のPTA室が災害時には対策本部として利用可能。
  • 体育館に障がい者用トイレと温水シャワー室を設置する。
など、地域防災拠点としての役割が期待されます。

長岡市市民防災センター


地震体験車
防災シビックコア
旧国鉄長岡操車場跡地を利用して開発された防災シビックコア地区には、消防本部庁舎、防災センター、防災公園が集中して整備されていました。

本部庁舎は5階建てながら免震構造となっており、天然ガスのコージェネレーションシステムを導入しています。また、市役所の災害対策本部会議室には、雪害や風水害にも対応できる大型ディスプレイが設置され、市内22カ所の定点カメラの映像などの情報を同時に見ることができます。

防災公園の大部分は芝生の多目的広場となっており、災害時には避難テント475張が建てられる広さです。地下には60tの雨水貯留槽、100tの飲料水用貯水槽が設置され、24基の非常用トイレと合わせて、市民の防災拠点となります。

 市民防災センターの1階部分には子育て支援センターが開設され、床面をゴムチップで舗装した直径約24mの屋根付き広場とともに、大規模災害時には「ボランティアセンター」として活用できるように工夫がされています。

2階部分が防災学習・研修拠点として整備され、体験型学習・訓練や防災学習コンテンツの貸し出しなどが行われています。
また06年度に、地域防災リーダーの育成を目的に開講した「中越防災安全大学」は、5カ月間で26講座、受講料一万五千円という募集内容にもかかわらず、既に三百人を越える卒業生が「中越市民防災安全士」として活躍しているとのことでした。


市民力で進む家庭ごみ減量化
着実に進むスリムシティさっぽろ計画

09年7月、家庭ごみの有料化と同時にスタートした新ゴミルールも5年目を迎え、多くの市民の協力によって生活の中に溶け込み、減量とリサイクルの取り組みが着実に進められています。

計画に定める五つの管理目標のうち、廃棄ごみ量、焼却ごみ量、埋め立て処分量は、既に17年度の最終目標を達成し、篠路清掃工場の建て替えが不要になったことはご承知のとおりです。
残るリサイクル率と1日一人当たりの廃棄ゴミ量については、中間目標は達成しているものの、足踏み状態といったところでしょうか。生ゴミの減量化や、雑紙・プラスチック類の分別徹底が課題とされています。


第三回定例会、第二部決算特別委員会

家庭ごみ処理手数料の行く先

約30億円の収入の使い道は、
  • 「雑紙」や「枝・葉・草」など、新たな収集体制の整備や資源物(「ビン・缶・ペットボトル」「容器包装プラスチック」)の増加に対応する収集・資源化の費用など、直接リサイクルに関わるものが約20億円。
  • 集団資源回収奨励金や地区リサイクルセンターの運営費などに約3億円。
  • ゴミパト隊監視パトロールや管理器材購入費助成に約1億円。収集日カレンダー、ゴミ分けガイドの作成・配布や、リサイクルプラザの運営に約1億円。

指定ゴミ袋の製造・保管に約5億円など、まさに市民自らの力によって、札幌市のリサイクル事業を支えているといえます。

悩みのゴミステーション管理
ゴミステーションでは排出マナーが問題になることから、戸別収集についての検討が進められてきました。しかし、
  1. 収集に要する時間が現状の3倍以上
  2. 必要車両台数が2・5倍
  3. 年間収集経費が3倍の92億円
  4. 冬期間は更に収集効率が悪化
などの理由と、市民の約7割がステーション方式に理解を示していることから、現行方式の中で管理負担の軽減に取り組むこととなりました。

このため、約三千カ所のステーションで、ゴミパト隊と町内会が協力して、重点的な改善の取り組みを行う一方、20〜30世帯に一カ所から10〜15世帯に一カ所へと小規模化をはかり、既存共同住宅には専用化を促しています。

この取り組みによって、共同住宅の専用ゴミステーションは新築で約三千カ所、既設で約五千カ所増え、共用ステーションは若干減少との成果を生んでいます。

新たな取り組み

さわやか収集
自力でゴミステーションまで排出することが困難で、身近に支援を受ける人がいない要介護者や障がい者のゴミ出し支援を行なう事業です。安否確認を行なうことで地域の支え合いの役割も果たすことが期待されています。
民主党の提案で09年7月にスタートしましたが、利用要件の拡大に向けて昨年10月から西区でモデル事業を実施、来年度から新たな見直し内容で全市で実施されます。

小型家電リサイクル
 金、銀、リチウム、プラチナなどの希少金属を使用し、「都市鉱山」とも呼ばれる小型家電のリサイクル事業が10月から始まりました。回収する家電は一辺30㎝以下のもので、これまで「燃やせないゴミ」として破砕工場に送られていたり、家庭で眠っていた家電から、有用金属を取り出すことができるようになります。この事業も民主党が早期の取り組みを求めていたものです。

各区役所など市内23カ所の市有施設と、国から認定を受けたリサイクル事業者マティックが5カ所に回収ボックスが設置されます。

2013年6月12日水曜日

大島かおるの市議会リポート薫風38号から

転換期にある札幌の未来像 

まちづくり戦略ビジョン 
春の訪れと共にメディアでは「アベノミクス」が踊っています。円安と株高で日本経済は一息ついたと言われますが、私たちにその実感はないのが現実です。13兆円の補正予算と92兆円の今年度予算は、歴代の自民党政権が借金を積み上げてきた政策の焼き直しに過ぎませんし、次々と打ち上げられる政策らしきものも、そのバックボーンは何なのか、将来どのような社会につながるのか、あいまいなまま美しい衣だけをまとっているように感じます。

社会保障改革の議論がまったく進まないばかりか、非正規労働者の割合は増え続け、介護労働の現場では若者が希望を失い、慢性的な人手不足にあえいでいます。東日本大震災の被災地では、復興を支えるマンパワーが足りず、資材や人件費の高騰が懸念されています。とりわけ、原発事故によって避難生活を強いられている人々(未だに15万人超)の生活は深刻です。
私たちは時代におもねることなく、現実としっかりと向き合いながら、札幌のまちづくりに挑戦したいと思います。
新型低床車両試乗会、隣は中央区村上ゆうこ市議

 
将来を見据えて
これまで、まちづくりの基本となる長期計画は、約20年間を見通すものとして作成されてきました。成長や科学技術の発展を前提としたものであり、かなり楽観的な将来予測を基にしていたと言ってよいでしょう。

近年、「パラダイムシフト」という言葉をよく耳にします。「ある時代に中で規準となる考え方の変更」という意味ですが、社会情勢の大きな変化にふさわしい判断と行動が求められているということでもあります。少子高齢社会や人口減少、更には環境とエネルギー問題など、私たちが避けて通れない困難な課題に、193万人の札幌市民が未来に向かって果敢に挑戦するための方向性がしっかりと示されなければなりません。

おおよそ10年間の基本指針となる新たな長期計画である「まちづくり戦略ビジョン」。市議会では、先の第一回定例会で「ビジョン編」について議決をしました。

目指すべき都市像
「北海道の未来を創造し、世界が憧れるまち」「互いに手を携え、心豊かにつながる共生のまち」│「ビジョン編」に示された二つの都市像は、これからの都市機能や公共サービスの充実、地域や自治体間の連携などコミュニティーの再生、環境首都や創造都市の実現を目指して市民の皆さんと共有し、共に取り組んでいくことを目的としています。

「地域」「経済」「子ども・若者」「安全・安心」「環境」「文化」「都市空間」の七つの重要な視点に沿って24の基本目標が掲げられ、それぞれに「実現に向けて私たちが取り組むこと」として挙げられた具体的な課題は、今秋に策定を目指して策定作業が行なわれる「戦略編」の中に、実施計画として活かされていくことになります。

9割以上の市民が「好きだ」と思い、毎年行なわれる都市ブランド調査での「魅力度」でも、2年連続一位に輝く札幌。その札幌型のライフスタイルを未来に伝え、全国に世界に発信していくスタートは「今でしょ!!」。


新たな都市経営戦略

右肩上がりの成長を続けてきた時代は、新たな事業や政策への予算も、既存の予算はそのままに上乗せすることができました。しかし、人口減少は収入の基本である税収の減少であり、急速な高齢化は社会保障費の増大につながります。

「地方主権改革」や「社会保障と税の一体改革」など、国の制度改正は遅れており、札幌市の財政見通しは依然として厳しく不透明であるといえます。

そこで「戦略編(案)」では、先に挙げた7つのまちづくりの分野を横断的に整理し、「選択と集中」の視点から、「暮らし・コミュニティー」「産業・活力」「低炭素社会・エネルギー転換」の3分野に、人材や税金を集中するとしています。
そのためには、①市民自治の更なる推進、町内会やNPOはもとより社会的企業などの「新しい公共」の育成と支援、積極的な連携、②行政サービスや公共施設整備のあり方の見直しと人材育成、③計画的かつ機動的な財政運営と、北海道や道内市町村との連携などに、徹底した情報提供と市民議論を通じて取り組む必要があります。

憲法と自治と暮らし 

現憲法は「悪者」ですか?

憲法改正論議がにわかにかまびすしくなっています。それも、本質論はさておいて手続きだけまず変えてしまおうというのですから、「あれれ?」という感じがしています。ある新聞のコラムでは「96条の改正は裏口入学にひとしい」との指摘がありました。

まず確認しなければならないのは、現憲法下で具体的な政策決定や法律制定の際にできないことは何なのか? ということです。
私のつたない知識では、「軍隊の保持」と「大統領(首相公選)制」に尽きると思います。
注意しなければならないのは、この二つとも強大な権力の集中と行使を前提としていることです。そして「国民」よりも「国家」の利益を優先することです。

閉塞感と不安感が漂う中で膨らんでいる「強さ」への憧れ。きわめて内向きな発想である「新自由主義」と隣り合わせといえるでしょう。

市民自治と地方主権改革は、これからも私たちにとって大切な取り組みであり続けます。国際化社会の中で、自治体外交や民衆による安全保障、多文化共生社会の実現へと向かうとき、「強さ」を誇示し「憲法改正」へと暴走することは、まさに「国益」を損ねることにつながるのではないでしょうか。
全道メーデーで「憲法擁護」を訴える上田市長


積み重ねられてきた歩み
国の法律や制度の壁によって跳ね返されながらも、市民は粘り強い交渉や裁判に訴えることによって、自治体は独自の条例を制定したり、いわゆる「横だし」することによって、憲法の理念を実現する努力を続けてきました。

今は当たり前とされている「男女共同参画」や「共生社会」という考え方や、「環境権」「子どもの権利」という新たな権利概念、「情報公開」という市民社会のツールがそうですし、厳しい公害規制や新たな福祉制度は、70年代のいわゆる「革新市政」を起源としています。
これに対して、大きな抵抗勢力として存在したのが、かつての自民党政治であり、官僚政治であったといえます。

憲法をないがしろにしてきた人たちが今、「変えられぬ政治」への不満を巧みに利用して、「憲法改正で日本は良くなる」という幻想に国民を組み込もうとしている。これって、「改革の本丸は郵政民営化」と絶叫した元首相の手法と似ていませんか。

再び、生活保護について
繰り返すまでもありませんが、生活保護法は「憲法第二十五条 全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上に務めなければならない」に拠っています。

問題の一つは、自民党の憲法改正草案にある「家族主義」が持ち出されていることです。生活保護受給者は様々な事情を抱えており、家族関係も複雑な場合が多くあります。「家族の扶養義務」を強調することは、憲法十三条に示される「全て国民は、個人として尊重される」としている、近代市民社会の原理を踏みにじることにつながる恐れがあります。

二つ目は、生活賃金との比較です。最低賃金を上回るとして保護基準の引き下げを主張する人がいます。バッシング社会の典型といえますが、まさに本末転倒。「最低限度の生活」を保障するとして決められた水準に達していない、最低賃金こそが憲法違反といえます。非正規労働者が増加する中で、年金や医療を含めたセーフティーネットの張替えを急がなければなりません。
全道メーデー会場にて同僚議員と共に

前文が示す
憲法の「肝(きも)」

少し長くなりますが、「日本国憲法」の前文を引用します。

 『(略)そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。

(略)われらは、平和を維持し、専制と隷属、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。

われらは、いずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。(略)』

護憲、活憲、加憲、改憲と皆さんにもいろいろな考えがあることと思いますが、現憲法のエッセンスは前文に示されていると思います。何よりも、私たちにとっての基本原理である憲法が、時代のちょっとした雰囲気や政治家のポピュリズム(大衆迎合主義)によって変えられてはなりません。


「居直り」と「逆切れ」

日本維新の会橋下徹大阪市長にみる政治家の言葉

「(軍隊に)慰安婦制度が必要なのはだれだってわかる」│更には、沖縄の米海兵隊司令官に「もっと風俗業を活用して欲しい」│橋下発言が波紋を呼んでいます。

歴史との向き合い方、更には人権感覚、居酒屋談義以下の論評に値しないほど稚拙なものですが、公党の代表であり大都市の首長の発言となれば、その責任は重いといえます。

しかし、各方面から批判を受けると、そこからが橋下流。論点をずらし自分で勝手に土俵を作り、一見するとまともそうな理屈で相手を徹底的にやり込める。今度も、「売春婦は昔から存在した」「風俗業をセックスと結びつけるのは心外」と言い訳を重ね、更に問い詰められると、メディア報道を「大誤報」と居直り、ついには「日本人の読解力不足」と逆切れしています。

93年の河野官房長官談話は、国民と国際社会に向けて発せられたものであり、政治に携わるものはこれを尊重しなければなりません。
私たちはこれまでも、「失言」「妄言」によって職を辞した政治家を多く見てきました。そして、それがトカゲの尻尾切りに終わり、単に政治家個人への失望にとどまらず、政治不信つながっていることを肝に銘じなければなりません。

札幌市議会は08年11月の第四回定例会で「慰安婦問題の真相究明と被害者の尊厳回復」を求める意見書を採択しており、決して見過ごしてはならない問題であると考えます。

道外視察から

公共図書館の新たな役割
佐賀県武雄市の試みから
樋渡(ひわたし)武雄市長から説明を受ける視察団


市民にとって「知」の財産ともいえる図書館も、自治体の財政難を理由とした「民営化」に揺れています。その背景には、利用者の減少や固定化、開館時間の延長などのサービス充実を望む声があります。当然、専門性や公共性の観点から、「民営化」にはなじまないとの反論も多くあります。
このような中、全国的にも話題となっている武雄市立図書館を訪れました。

図書館のイメージを変える実験

改築期を迎えた図書館を、何とか「まちづくりの起爆剤に」と考えた樋渡(ひわたし)市長自らが、TUTAYA社長と交渉し、わずか1年で計画を創り上げたという、いわば「コンビニ型図書館」。開館時間は午前9時から午後9時まで、年中無休を売り物にしています。

正面から入るとすぐにスターバックスが運営するコーヒーショップ、そしてTUTAYA書店とCDレンタルコーナーが出迎えてくれます。図書館とは全く異なる賑わいと明るさに、面食らうことは間違いありません。
蔵書についても、徹底したマーケティング調査の結果として雑誌類を多く取り入れ、分類法は書店と似た形に変更し、更に、検索機があちこちに設置され、ポイントカードも導入されています。
既成の概念を根本から変える壮大な実験とも言えるでしょう。

市長の英断となるのか?
リニューアルオープンして初の視察団ということで、市長じきじきに説明と案内役をしていただくという歓迎を受けました。
マスコミの注目度も高く、開館一週間の来館者数と図書貸し出し数は、それぞれ前年比658%、279%と好調で、スターバックスの売上も全国3本の指に入るということです。
また、改革派を自認する、総務省出身の若手市長の挑戦には好意的な市民も多いとのことです。

一方、民間事業者の占めるスペースが公共施設の顔となっていることを含めて、「公共性」や「情報管理」、4年毎の契約更新の条件、民業圧迫などの課題にどう応えて行くのか?初発の人気が定着するのか?など、検証が必要な点も多く、これからもしっかりとした追跡調査が必要です。

会派の会長に就任しました

市議会民主党・市民連合(会員23名)では、任期の後半を迎えて新たな役員体制を決定しました。

前半の約一年十一カ月間は副議長という大役をいただき、貴重な経験を積むことができました。多くの方々の支えに心から感謝を申し上げます。

副議長職は藤原廣昭議員(東区)にバトンタッチし、向こう二年間は会派のまとめ役として、難局に臨むことになります。上田市政をしっかり支え、その成果を市民に伝えると共に、将来を見据えて、新たな課題にも全力で挑戦します。是非、率直なご意見、ご批判をお寄せください。

他の役員は以下の通りです。
副会長 小野 正美(手稲区)
 〃  恩村 一郎(清田区)
 〃  三宅 由美(南区)
幹事長 桑原 透(清田区)
幹事長代理 峯廻 紀昌(豊平区)
副幹事長 小川 直人(厚別区)
政審会長 長谷川 衛(中央区)
副政審会長 宝本 英明(北区) 

2013年3月6日水曜日

大島かおるの市議会リポート 薫風37号から

                                      
【薫風 37号】

どこにむかう?「地域主権」改革

昨年12月の衆議院選挙の結果、自公連立による第二次安倍内閣がスタートしました。
外交や経済政策から憲法改正まで、すでに様々な場面で論じられておりますが、ずいぶんと荒っぽい議論のように思えてなりません。

「力づく」でアジア地域の平和と発展が保障されるのか。
公共事業の復活と円安・株高は、市民生活にプラスになるのか。
憲法改正で具体的に何がどうなるのか。

威勢のいい決意表明に踊ることなく、丁寧に議論を進めて欲しいものです。そして、すっかり蚊帳の外に置かれた感じの「地域主権」。どうも逆向きに進もうとしている感があり、自治体議員としては一番気になるところです。

「地方交付税」の削減
小泉政権の時代、補助金と同時に地方交付税がカットされ、自治体の財政は疲弊しました。ようやく民主党政権で回復したと思ったのも束の間、再び自治体いじめが始まりました。使い道の自由度を高めるとして創設された「一括交付金」制度も風前の灯です。

財政再建の名の下に、限界を超えて職員削減を行ったことによって、東日本大震災の被災自治体では復興に必要なマンパワーが不足し、全国の自治体でも、最低限必要な住民サービスの提供に不安が生じる事態になっています。全国知事会をはじめとする地方6団体の強い反対によって、来年度予算に限り別枠で補てんされることになりましたが、今後の財政運営に大きな影を落とすことになりそうです。

道州制と大阪都構想
国と基礎自治体(市町村)の間にあって、大きな権限と財源を握っている都道府県。
中央省庁に加えて都道府県という強大な二つの権力が、地方自治の発展を妨げているとして、これまでの地方分権論議の中で課題とされてきたのが「道州制」問題です。

しかし、国の統治機構を根本から変える大改革であるにもかかわらず、とりあえず「改革」のポーズを示すための免罪符に使われている、というのが正直なところではないでしょうか。国の権限を分散化しスリム化するという建て前には、誰も反対できませんが、新たに強大な権力が集中するのであれば、たまったものではありません。

何よりも、戦時下の特殊な事情で作られた中央集権的な制度である東京都を真似て、「大阪都」構想を熱心に説く橋下維新の会が、「地域主権」を進める側から「道州制」を主張しているとは思えないのです。

生活保護基準の切り下げ
昨年来の生活保護バッシングはとどまるところを知らず、安倍政権は、とうとうセーフティーネットの最後の砦でもある保護基準の切り下げに手をつけようとしています。

稼動可能世帯には就労支援や職業訓練の充実、母子家庭には母親の自立への支援、子どもの育ちや教育を保障する仕組みづくり、高齢者には不十分な国民年金との隙間を埋める制度の創設など、制度そのものの見直しが必要であることは、これまでも訴えてきました。

生活保護制度を支え、自治体の現場で苦悩するケースワーカーの声をしっかりと受け止めること。そして、上田市長もメンバーとして加わった、厚労省「生活困窮者の支援のあり方に関する特別部会」の報告書に沿って議論が進められることが望まれます。

札幌市中央図書館に開設された、障害者が働く3店目の元気カフェ「本の森」オープニング
上田市長、長谷川議員(中央区)とともに

札幌の将来を見据えて

第一回定例市議会がスタート
2月13日、来年度予算案を審議する2013年度第一回定例市議会が召集されました。
上田市政3期目の折り返しの時期でもあり、この10年の「市民自治」の歩みを更にステップアップする重要な節目にも当たります。

上田市長は議案説明に先立ち、「この10年を振り返りますと、私たちは、時代の転換点とも言うべき歴史的な出来事を幾度となく経験し、生活を取り巻く環境は大きく変化しました。特にリーマンショックを契機とした世界的な金融危機や、国政における2度の政権交代、そして、今なお記憶に新しい福島第一原子力発電所の大事故を含む東日本大震災は、これまでの常識や価値観、更には一人ひとりのライフスタイルを見つめなおす大きな契機となりました。」
「市民自治の積み重ねと市民力の結集が、未来を切り開いていく力になると信じています。」と、所信を述べています。

今後10年間の新たなまちづくりの指針となる「札幌市まちづくり戦略ビジョン」も提案され、3月28日までの44日間にわたって熱い議論が展開されます。

将来への種まきを
予算編成の基本方針は、「戦略ビジョンの策定に向けて、2年間にわたって行なわれてきた市民議論を踏まえ、新たに見つかった課題への対応と、将来のまちづくりに向けての種となるような取り組み」と、「喫緊の課題である防災力の強化や地域経済の活性化を後押しすること」とされています。

予算規模は、一般会計8524億円、特別会計3518億円、企業会計2483億円の総額1兆5524億円と、ほぼ横ばいとなっていますが、地域経済対策としての補正予算、一般会計162億円、企業会計50億円を含めると、1・7%増となります。雪対策についても20億円が追加されました。

歳入について、根幹である市税は、景気低迷による所得減少の影響で個人市民税の減少はあるものの、固定資産税やたばこ税の増加で、ほぼ前年並みを確保。地方交付税は、国の財源不足によって振り替えられている臨時財政対策債への依存度がさらに増加し、将来への影響が懸念されます。

なお不足する財源122億円については、「札幌市行財政改革プラン」に沿った歳出の見直しで111億円、不足する11億円は財政調整基金からの取り崩しによって補てんするとしています。

切れ目ない経済対策
事業の柱としては、①暮らし・コミュニティー②産業・活力③エネルギー転換の3点が示されています。

「暮らしコミュニティー」では、昨年1月に発生した姉妹孤立死などを受けて、民生委員による知的障害者の見守り活動を支援するほか、各区役所に保健福祉の総合相談窓口を開設してワンストップサービスを強化します。秋には、急病時の市民相談に24時間・365日対応する「(仮称)救急安心センターさっぽろ」の開設が予定されています。

「産業・活力」では、フードコンプレックス特区と、さっぽろコンテンツ特区を、最大限活用する取り組みを強化し、来年夏の開催をめざす「国際芸術祭」の準備を本格化します。また、学校施設の耐震化や橋梁の長寿命化事業を前倒しするほか、路面電車のループ化に着手し、新型低床車両2両が導入されます。

「エネルギー転換」では、原発に依存しない社会を目指し、再生可能エネルギーや省エネルギーを推進するエネルギー計画が策定されます。この計画を総合的に統括し進めるための組織が新たに設置されるほか、市有施設や民間住宅への次世代型エネルギーシステムの普及拡大が図られま
 す。

 新年を迎え、ご挨拶

1月5日 札幌市聴覚障害者協会新年交礼会
 

1月8日 子ども議会本会議

元気の種コレクション

市職員が議場で職場の取り組みを発表
札幌市の職員が普段の仕事の中から生み出される新しい取り組みや業務改善策などを発表する「元気の種コレクション」(種コレ)が2月7日に行われました。

種コレは職員が出したアイディアや取り組みが札幌を元気にする「種」で、市民が元気なる施策を展開して「芽」がでるようにと05年から行われていますが、今年は多くの市民に見てもらおうと市議会本会議場で開催され、インターネット中継も行われました。

窓口で自殺のサインを察知する対応策などをまとめたカードを活用した事例や、来庁した市民の利便性を図るために担当部署ハンドブックを活用した取り組みなどがプロジェクターや寸劇、区のマスコットキャラクターなどを駆使して紹介されました

日中新時代への思い

一月末、中日友好協会(唐家?会長)の招待で、北海道日中友好協会訪問団の一員として北京を訪問しました。
「中国社会科学院」正門にて

ご承知のように昨年は日中国交正常化40周年。札幌市ではPMFオーケストラが初めての海外公演として北京市、瀋陽市で演奏会を行い、瀋陽市からは市民合唱団が来札して市役所ロビーでコンサートを行うなど、友好・交流を深める行事が重ねられました。

 しかし、秋口に入ってから尖閣列島国有化を巡って一気に政治的緊張が高まり、経済や観光分野ばかりか民間交流にまで大きな影響を及ぼしました。

今年は中国のお正月である「春節」と重なり、団体客が期待された「さっぽろ雪まつり」もさっぱりだったということです。

 「一衣帯水」といわれる日本と中国の関係が、このままの状態で良いと思っている人はいないはずです。
毎日のように伝えられる尖閣諸島の映像の一方には、瀋陽市と札幌市が姉妹都市提携をして32年の交流を重ね、千人を超える留学生が学び、そして札幌を永住の地として事業を営む人も年々増加しているという「あたりまえの歴史の積み重ね」があります。

中日友好協会との会談をはじめ、中国社会科学院が主催するシンポジウムへの参加、中華青年連合会や北京市民間国際交流協会との交流、歴代の駐札幌総領事の皆さんとの再会など、あわただしい日程ではありましたが、実りの多い訪問になりました。
今回の訪中を通じて、私自身が感じたこと、再確認したことを以下に記します。

「民間先行」について
これは「民が官を促す」の意味でもあり、唐会長も繰り返し強調され、「2千年にわたる友好交流の歴史に、私たちは改めて学ぶ必要がある」との提言もされました。

中国では政権の移行期であり習近平体制が固まっておらず、日本もまた、政治的にも社会的にも閉塞感が漂う中で将来の目標が見えづらい時期にあります。

内政面で不安定要素を抱えるとき、あるいは国民の不満が大きいとき、政府は外交面での強行姿勢で支持を集めようとする傾向があります。

政治的な主張を繰り返して力を誇示するだけでは、対話の糸口さえつかむことができません。お互いの立ち位置を理解しあうこと、交流の歩みを止めないこと、そして、相手のふところに飛び込んで対話を重ねることが、私たち自治体交流や民間外交の変わらぬミッションではないでしょうか。

「戦略的互恵関係」とは
 これも唐会長が指摘されたことですが、「互恵」が、あまりに経済関係に偏りすぎていたことを反省し、未来に向けて再定義をすることが望まれます。

まず、急速な経済発展に伴う社会的な矛盾の広がりに悩む中国と、新たな社会・経済モデルを描けずに苦闘する日本というステレオタイプで描かれる対立構造から脱しなければなりません。また「互恵」にとって優越感や対抗意識は無用といえます。

 「政令経熱」で済まされていた時代は去り、これまでとは全く異なる国際環境の下で、日中間だけではなく、アジア太平洋地域の平和と発展への、目標や課題を共有することが求められています。

この10年、私たち自身も内向きな思考にとらわれ続けてきました。「国益」というものがあるとすれば、ウィンウィンの関係があってはじめて守られるのではないでしょうか。

私たち自身が日々の活動の中で積み重ねてきことを、より多くの人に伝え、広く発信していきたいと思います。