一人ひとりが新たな「希望」を生み出す年に
復興が「希望」へとつながるように
厳しい寒さもようやく緩み、雪解け、旅立ちの春が訪れようとしています。そして、東日本大震災、福島原発事故から一年。マンパワーの不足、進まないガレキの撤去、放射能汚染の広がりなど、復興への歩みが遅々として進まない中で、被災地に住む人、避難生活を送る人にとっては、「希望」への更なる一歩を踏み出すことができるかどうかが問われる春でもあります。東北の被災地は、これまで「成長」や「繁栄」から取り残された地域であると思い込まされてきました。大震災の報道によって、豊かな自然の恵みの中で生き続け、家族や地域を大切に生きてきた彼らの日常に、改めて気づかされた方も多いと思います。また、「成長」と「繁栄」の象徴であった原子力発電所の大事故による放射能汚染が、地域を分断し、復興への足かせになっていることに、怒りと苛立ちを感じています。
何よりも、生活と雇用の再建を急がなければなりません。そして、復興が単に元に戻ることではなく、新たな社会を創り出す「希望」と重なるよう、この一年の歩みをしっかりと振り返り、次の一歩をより多くの人たちと共有していきたいと思います。
「成長神話」を問い直す
昨年11月、ブータン国王夫妻の来日を機に大きな話題となった言葉にGNH(国民幸福度)があります。これまで経済的な豊かさや成長の指標として使われていた、GDP(国内総生産)やGNP(国民総生産)に代わるものとして、注目され始めています。また、千葉大学の広井教授による全国自治体アンケートでは、今後の地域社会や政策の方向性に関する質問の回答として、「可能な限り経済に拡大・成長が実現されていく」が11・2%に対し、「拡大・成長ではなく、生活の豊かさや質的充実が実現される」が72・2%との結果が報告されています。
20年前、バブル経済の崩壊を経験した私たちは、リーマンショックや最近のアメリカ、ヨーロッパの経済不安を前に、ようやく「成長神話」から解き放たれようとしているのではないでしょうか。とはいえ、現代社会はまだまだ、「市場」と「競争」の中であえいでおり、その分け前をめぐって右往左往しているのも現実です。「支え合い」そして「分かち合う」社会へ。鍵を握るのは、市民一人ひとりの力にほかなりません。
「創造」への一歩を
上田市長は、第1回定例市議会の提案説明にあたり、「今回の災害を受けて、私たちは改めて、人が人を支える力の強さを認識した」として、「人と人との支え合いの心、すなわち『人の和』を生かす市民自治をさらに充実する」と述べ、「札幌に潜在する魅力を引き出し、創造性豊かな人材を育む『創造都市さっぽろ』への取り組みを広げ、経済の活性化にもつなげる」との所信を明らかにされました。今年の干支は、壬辰です。「壬」には「草木の内部に新しい種子が宿る」という意味があり、「辰」は、十二支の中で唯一架空の動物である「龍」に通じていますが、「動いて伸びる」ことを意味しているとされています。干支にあやかるわけではありませんが、時代の変革を先取りする一年でありたいと願っています。
第一回定例会
代表質問から
まちづくりへの新たな一歩
来年度予算は、上田市長三期目のマニュフェストを実現するために策定された「第三次札幌新まちづくり計画」「札幌市行財政改革推進プラン」の第一歩を踏み出すものとして、提案されました。8522億円の一般会計予算は、前年比で実質0・3%増となっているものの、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療会計などへの繰出し金(仕送り)は、引き続き増加傾向にあり、地方交付税に占める新たな借金(臨時財政対策債)の割合は、大幅な増加となっており、将来の見通しは依然として厳しいものがあります。
一方、保育所定員の拡大や認可外保育所への新たな支援、児童クラブ開設時間の延長などの子育て支援、特別養護老人ホーム整備や障がい児の通学支援などの福祉施策、食・バイオ関連施設の整備や「札幌コンテンツ特区」事業への支援などの経済対策、新エネ・省エネ機器導入への補助や再生エネルギー導入、環境都市札幌への取り組みなど、新たなニーズに積極的に応えていくことが求められています。
このような中、引き続き見込まれる128億円の財源不足のうち、行財政改革プランによって102億円(うち受益者負担の見直しなどで9億円)、財政調整基金の取り崩しで26億円が補填されることになります。税収の伸びなど歳入の増加が見込めない中で、安定した市民サービスを行うためには、行政の効率化や経費の削減に引き続き全力で取り組むことと併せて、札幌市が単独で実施している事業や利用料の軽減策についても、最小限の見直しを図っていく必要があります。
働く仲間の安心のために
─公契約条例─景気の低迷が続く中、公共事業の入札においても低価格競争が続き、そのしわ寄せが賃金の引き下げなど雇用条件の悪化につながっていることは、繰り返し指摘されてきました。また、現業部門の民間委託化や指定管理者制度が、事業の効率化を目的にしながらも、コスト削減のみが優先され、いわゆる「官製ワーキングプア」をうみ出しているとの批判も受けています。
これらは、雇用不安や労働意欲の低下を招き、地域経済の健全な発展にも影響を与えかねないとの考えから、私たち民主党は、以前から「公契約条例」についての勉強会を積み重ね、その制定を求めてきました。
上田市長は「市が発注する工事などの請負や業務の委託契約、公の施設の管理に対する管理の協定、すなわち公契約に関して、これらの作業に従事するものの適正な労働環境を確保し、事業の質の向上を図り、市民が安心して働き、暮らすことのできる地域社会を実現する」とし、「低落札、低賃金がもたらしている『負のスパイラル』を絶つ」と、提案に当たっての強い決意を示しています。
経済界からは反対や懸念の声が出されていますが、地方発で、公正で安心の社会を実現する大きな転換点を創り出していきたいと思います。
環境と地域活性化へ
─路面電車のループ化─地下鉄の開業と自家用車の普及によって、現在の「西4丁目〜すすきの」間だけが、取り残されたように走り続けている路面電車。その存続に向けて長い間、議論が続けられてきました。それは、公共交通としての必要性だけではなく、都心部の活性化や環境都市さっぽろを象徴するインフラ、高齢社会への対応など、これからのまちづくりに欠くことができない大切な財産として、将来の延伸も視野に入れたものでもあります。
提案されている西4丁目とすすきの電停間の接続(=ループ化)に併せて、新型低床車両の導入や停留所のバリアフリー化、優先信号の設置による時間短縮を目指し、利便性の向上を図り、魅力や機能性を高めていくことも明らかにされました。
一方、輸送人員の減少傾向により厳しい経営状況が続く中で、更なる経営の効率化が、独立採算が原則の公営企業にとっては大きな課題となってきます。長年にわたって据え置かれてきた均一運賃(170円/地下鉄、バスは初乗り200円)の改定に向けた議論も必要です。
所有車両30台中24台が製造から50年を超え、整備工場や車庫も築44年というぎりぎりの状態で走り続ける路面電車。「乗ったこともないし乗る機会もないのに、何でお金を使うの?」と思われる方も多いでしょう。しかし、ヨーロッパでは、新型の軽量低床車両(LRT)が走る風景はあたり前。国内でも、路面電車を活かしたまちづくりへの取り組みが増えてきました。邪魔者扱いから新たな価値の創造へ‼市民の大切な財産として路面電車を守り育てていきたいものです。
地域における支えあい
─白石区姉妹孤立死事件─電気やガスが止められる中、姉が病気で急死し、知的障害のある妹は近所に助けを求めることなく凍死していたという白石区の事件は、その後、釧路市、さいたま市、立川市などで同様の事件が相次ぎ、都会の片隅で公的支援を受けることなくひっそりと暮らしている「孤立」の問題を浮き彫りにしました。
姉妹の状況を整理してみます。姉は、2年ほど前から三度、生活保護相談に訪れていましたが、雇用保険や職業訓練による雇用給付金を受給し、妹の障害年金が入る予定もあるとのことで、申請には至らなかったとされています。昨年からは、体調を崩しながらも求職活動を続けるなど、困窮の中でも必死に自活の道を探っていた様子が伺えます。
室内のテーブルには現金が残されていました。妹は、姉と同居する前に住んでいた滝川市では、障害者施設に通所していました。札幌市に転居して相談支援事業所の訪問を受けましたが、なぜか面会を拒絶して、サービスの利用につなぐことができず、近所づきあいもほとんどないまま、非常に痛ましい結果となりました。
札幌市は、電気・ガス事業者に対する情報提供への協力要請、約1400人の福祉サービスを受けていない知的障害者の現況調査、民生委員の皆さんの協力による見守り活動、多くの福祉事業所やNPO、ボランティア団体のネットワークによる支え合いなど、「二度と同じことを繰り返さない」ための行動をスタートしています。
また、生活保護の担当者は申請を促したり、訪問して困窮の様子を確認するなど、もう一歩踏み込んだ対応ができなかったのか、障害者相談支援では、定期的に訪問を重ねて信頼関係をつくるなど、当事者に「よりそう」姿勢が必要ではないか、との声に真摯に向き合っていかなければなりません。
しかし、立ちはだかっているのが、プライバシーの侵害、個人情報保護という、私たちが創り上げてきた市民社会の大切なルールです。「いらぬおせっかい」と言われても、気になったらひと声かけ続ける、新しい地域の「絆」創りが求められているのではないでしょうか。
街角探検
ご存知ですか? 自転車指導走行帯
札幌市ではこれまで、急増する自転車利用対策として、放置自転車問題や駐輪場整備に重点的に取り組んできました。しかし、自転車による対人事故がマスコミ等でも取り上げられるようになり、交通事故防止という側面から、自転車走行帯の整備が課題に上ってきました。理想的には、自転車専用道路の整備が望まれますが、道路拡幅や荷捌きや私用での駐車対策などの困難さから、全国的にも足踏み状態にあるのが現状です。このようなことから昨年10月、琴似川添通りの約700メートルの間の車道両端約1メートルをカラー舗装して、「自転車指導走行帯」とする実証実験が行われました。
昨年9月中旬の事前と10月中旬の事後に行われた、4日間延べ12時間のビデオ調査と、アンケート12000枚(回収率約15%)による検証結果を見てみます。
事前事後の変化を比較すると、自転車は休日で19%、平日の朝夕は23%増加しており、走行帯整備の効果がうかがえます。アンケートでは、「歩行者と分離され走りやすい」273件の一方、「自動車との接触の危険を感じる」259件、が目立ち、「安全だ」187件、「路上駐車が多い」125件となっており、自動車との関係が課題として浮かび上がります。また、歩道上の自転車危険走行が150件、ルール・マナー違反が132件あったことも明らかになりました。
全体としてみると、
①並行する琴似栄町通では、自転車交通量と歩行者の錯綜回数が減少
②川添通の自転車の車道通行の増加は2割止まり
③歩行者から自転車の歩道走行への意見が多い
④自動車の路上駐車が指導走行帯利用の妨げになっている。
などが、今後の利用促進と整備拡大の検討課題となります。
警察庁は「自転車は車両であり、車道通行が原則」との考えを明確にしました。車優先の交通行政と自転車の歩道走行に慣れ親しんできた私たちも、発想の転換を急がなければなりません。
歩行者にも自転車にも優しいまちづくりを目指して、知恵を絞りたいと思います。
橋下流政治(= ハシズム)って何??
「維新」だ「船中八策」だと話題にこと欠かない橋下徹大阪市長。誰が名づけたか「ハシズム」まっしぐら。既成政党もこぞってなびくという超人気ぶりで、まるで「救世主」扱いだ。時代の閉塞感を巧みに操って登場し、政治ショーを演じ続ける橋下流政治の特徴をみる。その1 バッシング政治
弁護士でありながら、ワイドショーで活躍したタレントでもある橋下氏は、視聴者に取り入る術を心得ている。わかりやすいダメ出しと激しい攻撃である。閉塞する社会や政治への不満の矛先を、議会、公務員、労働組合、さらには既成政党に向け、「既得権集団」として「敵」に仕立て上げ、徹底的なバッシングを繰り返し続ける。その2 巧妙な論理のすり替え
自らの著書で、話術の極意として「相手に考える間を与えない、感情的な議論を吹っかける」と記しているように、橋下氏との議論はそもそも成立しない。山口二郎北大教授との討論番組に見られるように、「いかにも学者の意見」「学者がちまちま言う」などと相手を貶(おとし)め、まともに疑問に答えずに攻撃に転じて、自分が優位であるかのように振る舞う。
その3 新自由主義への郷愁
過酷なリストラ社会、格差社会の中で、競争によってはじき飛ばされる人、もともとそのスタートラインにさえ立てない人が急増している。橋下氏は、既成の制度や仕組みを全て破壊して、市場原理を徹底すれば、問題は全て解決するような幻想を振りまき、彼らから圧倒的な支持を受けている。維新の会の「船中八策」は、徹底した新自由主義である。閉塞する政治のおとし子ともいえる橋下流政治。「反面教師」として注目していきたい。