2010年11月29日月曜日

薫風 号外

大島かおるの市議会リポート

上田市政を一歩前へ
試される市民の力
昨年8月の劇的な政権交代から1年あまりが経ちました。しかし、鳩山政権から菅政権へとバトンが引き継がれてなお、民主党政権をとりまく状況は厳しいものがあります。7月の参議院選挙、10月の衆議院5区補欠選挙の結果には、「政治とカネ」の問題にとどまらず、「政権が目指す未来像が見えない」「政治主導と言いながらリーダシップが発揮されていない」という現状への苛立ちが表われています。
しかし、「政権交代」は、いわば歴史の必然でもありました。いま、社会のシステムや経済・産業構造の根本的な転換が求められており、民主党はその使命と責任を負わされたのだと思います。その自覚のもとに、この間の国民の審判を率直に受け止めて、次への一歩としていきたいと決意を新たにしています。

さて、来年4月10日は統一自治体選挙。私も皆さんからの審判を仰ぐことになります。

「民主党政権」を先取りして「市民自治が息づくまちづくり」を進めてきた上田市政を、さらに大きく飛躍させていかなければなりません。引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。

地域主権へ
国の最大の役割は、税の公平な分配にあるといえます。しかし、自民党の長期政権の下、大型公共事業や業界団体が生む利権によって配分がゆがめられ、既得権益化し、中央官庁が肥大化しました。福祉や教育、環境といった市民にとって最も身近なサービスさえも、国からの補助金次第といういびつな構造が作られました。そして、私たちは、利権や補助金を得るための膨大なコスト(企業献金や陳情行政)を払わせられています。
このような構造を根本から断ち切り、国のあり方そのものを変えていく大きな手がかりが「地域主権改革」です。これまで、補助金や交付金は自治体の手足を縛るとともに、国に対する依存体質を強めてきました。私たち自身も地域に根ざした、新たな自立への道を創り上げていかなければなりません。

議会改革
いわゆる「改革派知事」が果たした役割は大きいものがありますが、最近はパフォーマンスと人気だけを頼りに、議会を敵視し、独裁に近い権力を欲しがる「エセ改革派」が目立っています。一方、議会の側も「ゴリ押ししてでも住民要求を通す偉いセンセイ」から「公開と参加により政策立案を行い市民自治を実現する一市民」への脱皮が迫られています。いたずらに対立をあおるのではなく、課題を明らかにして解決への道筋を、議論を重ねて作り上げていく役割が求められています。
 札幌市議会においても、議会改革検討委員会を設置して多くの改革を実現するとともに、「議会基本条例」の制定に向けて課題を整理し、さらに市民の負託に応える努力を続けています。民主主義の基本である議会が、市民にとってより身近な存在となるよう歩みを進めていきます。

市民評価(事業仕分け)のその後
今年6月に、行政評価制度の一環として行われた札幌市の「事業仕分け」では、対象とされた89事業のうち、不要14、廃止を含む見直し17、見直し44、効果の検証が必要5、現行どおり9という厳しい判定が下されました。また、対象とされた事業は市民や事業者と直接かかわりのある事業であることから、7月から8月に行われた「市民評価の結果に対する市民意見の募集」には約1400人から1600件もの意見が寄せられ、関心の高さが示されています。
 一方、国の事業仕分けと異なり、札幌市では2005年から行政評価制度を導入しており、議会でも、予・決算の特別委員会などを通じて、一つ一つの事業の成果や課題について議論を積み重ねてきました。機器や設備が老朽化している、事業そのものの目的が不透明、時間の経過とともに役割が変化しているなど、評価の視点も事業によって異なっており、市民参加を一層進めようとする市民評価の結果を真摯に受け止めるとともに、利用者や事業者の意見も踏まえ議会としての考えを示していかなければなりません。

姉妹都市交流と外交問題
札幌市と中国・瀋陽市は今年、姉妹都市提携30年を迎え、8月下旬から市民訪問団を含めて約200人が瀋陽市を訪問し、今後の友好・交流事業の発展を確認しました。自治体や民間でのこのような積み重ねが、教科書問題や、靖国参拝、歴史認識など、国レベルでの多くの障害を乗り越える原動力になってきたといえます。
そして、尖閣諸島沖での中国漁船々長の逮捕と保釈を巡る、日本と中国双方の混乱。外交レベルでの交渉の適否はおくとしても、政府の対応に苛立ちを感ずる人は多いのではないでしょうか。そもそも、「尖閣諸島は日本固有の領土である」「国内法にもとづく断固たる処置を」とこぶしを振り上げるだけでは、何の問題の解決にならないのは明らかです。反日デモを繰り返し報道するマスコミも、その背景にある失業や経済格差についての言及はありません。
 「国益」とか「売国」などの勇ましい主張に、どうしても気持ちがなびいてしまう私たちですが、「戦略的互恵関係」を創り上げるためには、相手の置かれている状況を見極める冷静さと、粘り強く交渉を続ける勇気、これまでの歴史を生かす「知恵」が求められているといえます。

2010年8月27日金曜日

納涼ふれあいIN西区


8月21日に、二十四軒の「北海道料理宮之森」で焼き肉としゃぶしゃぶの夏祭りが開催されました。

今年は例年にない暑さですが、皆さんとともに、元気に焼き肉とビールで乾杯しました。

2010年8月19日木曜日

薫風33号

大島かおるの市議会リポート
薫風33号より(2010年5月20日発行)

「創造都市」さっぽろへ
上田市長二期目、最後の本格予算がスタート
今年度の第一回定例市議会は3月30日に閉会し、一般会計、補正予算合わせて約8325億円の事業が4月から執行されます。
上田市長は、予算の提案にあたり、昨年7月から実施された家庭ごみ収集体制の変更によって、ごみ減量が飛躍的に進み、篠路清掃工場の運転休止が3年前倒しされたことに触れて、「まさに市民自治の力を示したもの」とし、「次世代に良好な環境を整え、新しい札幌を創造する」との決意を述べています。 前年対比4・4%増とはいえ、依然厳しい財政状況が続くことが予想され、「選択と集中」への取り組みをさらに進めていかなければなりません。


間断のない経済・雇用対策  
普通建設事業費では、既存施設の維持・修繕などの小規模工事や、バリアフリー、環境などの事業を拡大することで、前年度を上回る726億円の事業量を確保し、市の臨時職員として100名を採用するなど、1028人の雇用機会を確保します。また、省エネやバリアフリーに関わる住宅リフォームの補助制度や、商店街のクーポン券付きPR誌作成への助成など、札幌の経済を支える中小企業を支援します。

福祉の充実、暮らしへの支援
待機児童解消のために保育所定員を大幅拡大(820人)し、政令市では初めて、乳幼児のヒブによる髄膜炎などの重感染症を予防するワクチン接種への助成を行います。
地下鉄全駅にエレベーターの設置が完了し、JR駅や歩道のバリアフリー化のペースアップを図ります。また、10区の税務部を5カ所の市税事務所として統合・集約して、収納対策の強化と、区役所窓口の利便性、快適性の向上を図ります。

「環境首都・札幌」への大きな一歩
小中高37校、札幌ドーム、中央図書館、保育所などに太陽光発電を設置(約800kW)。
清田区役所など9施設、街路灯・公園灯約3千灯をLED化(4年間で1万2千灯に拡大)。
さらに、木質ペレットストーブの普及、高断熱・高気密仕様住宅(パッシフハウス)に関する調査研究、太陽光パネルや省エネ給湯器の導入補助など、エコ市役所、エコタウンを目指します。

札幌市の魅力発信
創成川アンダーパスの連続化工事が完成し、地上部が水とみどりを生かした親水公園へと生まれ変わります。
また、来年3月には札幌駅前通地下歩行空間がようやく完成し、多様な情報を発信する大型映像装置などが設置され、地下鉄大通駅からバスセンター前駅のコンコースを「500メートル美術館」とする環境整備など、新たな創造空間が生まれます。  
このような札幌の魅力を内外に発信するため、コンベンションをはじめ、展示会や企業ミーティングの誘致強化や、中国・韓国へのPR活動、国際芸術展開催の検討など、シティプロモートを強化します。

独自施策で雇用創出を
緊急雇用対策事業  
新年度がスタートし、就職氷河期といわれる厳しい状況の中、若者たちが新たな思いを胸に社会人の仲間入りをしました。
しかし、厚生労働省の発表では、今年2月時点での就職内定率は、大学生が80・0%、高校生が81・1%と過去最低となっており、道内はさらに低く、不安を抱えたままで卒業し4月を迎えた若者が多いのも事実です。何よりも景気の回復が望まれますが、自治体独自の工夫による対策が求められています。札幌市は国の「重点分野雇用創造事業」を活かして、新たな事業に取り組みます。

人材派遣会社と連携
就職の決まっていない大学・短大・高専・専門学校の卒業生を対象に、150人を5月から半年間雇用して企業実習やビジネスマナーの研修などを行い、早期の就職に結びつける「ジョブスタートプログラム」が始まります。
人材派遣会社が行うことにより、求職情報も得られやすく、本人の希望や特性を生かした就職につながることが期待されます。

まちづくりの人材育成
地域の課題や市民のニーズが多様化する中で、その解決には行政だけではなく地域で活動するNPOや町内会などの力が必要です。
地域活性化や人材育成のモデル事業に取り組みます。  
「地域のまちづくりサポーター雇用創出事業」は、高齢化や担い手不足に悩む町内会に、地域のまちづくり活動を支援する助っ人を派遣します。  
「地域密着型雇用創出事業」は、子育て、介護、環境など8分野の社会的事業の解決を目指す事業を、NPOからの企画提案を受けて実施します。  
「新しい公共の担い手事業」は、市内に約700あるNPOの活動内容を把握し、企業との連携が可能な団体を発掘します。

NPOの活用
「デザイン系人材育成研修事業」は、施設デザインや商品デザインなどの実践的な技術習得のため、「都市型農業人材育成研修事業」は、農業未経験者に対して、野菜や花卉などの都市型農業の基礎的な技術を習得するための研修を、いずれもNPO法人が実施します。  
「地域資源コーディネーター養成事業」は、NPOへの就労を通じて地域資源コーディネーターとしての能力を高め、経理や労務管理などの基礎的な知識を養います。

たゆまぬ行政改革への一里塚
【6月に「事業仕分け」を実施】
札幌市はこれまで行ってきた行政評価の成果を踏まえ、今年6月から7月にかけて「市民参加を一層推進し市政に関する透明性を高める」ため、公開の場で市民が直接事業仕分けを行う「市民評価」を実施します。結果は、来年度予算はもちろん次期の行財政改革プランにも活かされることになりますが、自治体の事業は市民生活と直接結びつくものであり、多くの市民の理解が得られるよう、できるだけわかりやすい方法で行う必要があります。

本来の目的は行政改革
国の「事業仕分け」は、歳出削減の切り札のように扱われましたが、本来の目的は行政改革にあります。
一つの事業の必要性を議論する中で背後にある組織や制度を洗い直し、「地域主権」の時代にふさわしい、自治体職員や市民の意識改革を促すことであるといえます。
対象となるおよそ100事業の選定に当たっては、市民の意向を評価に反映させるため、2月に実施された「市民満足度調査」の結果を参考にするなどの工夫がされ ます。

市民参加で課題を明確に
「市民評価」は、1班7名の3班体制で4日間、1事業あたり約45分かけて行われます。

仕分け人は各班に学識経験者2名、無作為抽出した千人の中から選ばれた市民4人、さらにコーディネーター1名が配置され、仕分け人には事業内容の事前の説明が行われます。
また、傍聴者にも資料の配布を行い、仕分け後には市民意見の募集が行われます。
「事業仕分け」は公開の場での議論や、議論を通じて課題や問題点を明らかにすることの大切さを気づかせてくれるのと同時に、国の制度や事業の仕組みについての課題も見えてくるはずです。

問われる大都市の未来像
成熟社会に対応したまちづくり戦略を

札幌市に限らず日本の大都市は、経済成長とともに人口が増加し、都市機能も拡大することで発展を続けてきました。しかし、少子高齢化の急速な進展や価値観やライフスタイルの多様化など、経済・社会構造の大きな変化は大都市の存立そのものを脅かし始めています。
これまでのような行政主導の画一的なまちづくりに頼っていては、衰退の道を歩むよりほかはありません。支店経済と言われながらも、札幌は流通・消費都市として発展を遂げ、独自の都市文化を育ててきました。明確な将来像を示し、課題を市民と共有し知恵を出し合うことが求められます。

札幌の魅力を発信する都心
都心は「道都さっぽろの顔」であり、世界に札幌の魅力を発信し続ける大切な空間です。
にぎわいと楽しさを味わうことのできる駅前通、みどりと多様な活動の場である大通公園、新たな水辺空間としてやすらぎを提供する創成川通、歴史的価値を継承し新たな魅力を創出する北三条通。四つの骨格軸を中心とした「都心まちづくり戦略」の策定が進められています。
90年には「第4次長期総合計画」が、92年には「都心まちづくり計画」が策定され、長期的な構想の下に進められてきた都市基盤の整備も、社会情勢の変化や、
新たなまちづくりの方向性に対応した、戦略的な計画へと転換していかなければなりません。

都市の魅力を高める路面電車
自家用車の普及に伴い邪魔者扱いされてきた路面電車ですが、最近は国内でも、都市の活力や環境負荷の低減、高齢者をはじめとする交通弱者の移動利便性の確保などによってその良さが見直され始めています。一方、老朽化した施設・設備を更新するためには多額の費用が必要なことから、存続についての論議が積み重ねられてきました。  
今後は、「都心のまちづくり」や「環境対策」、さらに「観光とコンベンションの振興」への活用が期待される路線延伸に向けた検討が行われます。
経営基盤の強化や費用負担のあり方など、十分な市民論議が必要ですが、LRT(新型低床車両)が走るまちづくりをスタートしたいものです。

★現任期の最終年度が始まりました。★
引き続き、議会運営委員長の重責を担うと共に、昨年から議会選出の農業委員として、後継者難や耕作放棄地の増加に悩む農業の現実と向き合い勉強をしています。
常任委員会は初めて、経済局、観光文化局、市立病院を所管する経済委員会に所属することになりました。中小企業の振興や雇用対策、地産地消への取り組み、藻岩山再整備計画、カーリング場建設の検討、シティプロモート、病院事業では経営の健全化と精神病棟建設など、多くの課題がありますが、皆さんの期待に応えることができるように頑張ります。
引き続きよろしくお願いします。

地域での雇用創出につながる環境産業
スーパーエコタウン事業を視察
民主党・市民連合は4月15日(木)〜17日(金)の日程で政策審議会メンバーを中心に、東京都で行っているスーパーエコタウン事業を視察しました。
この事業は、国の都市再生プロジェクトの一環として2002年に開始され、城南島地区と中央防波堤内側埋立地区に計9社のリサイクル施設が稼動しています。
いずれも公募によって選定され、用地の取得、施設の整備・運営は事業者の責任で行われています。
私たちは、国も注目しており、3月には鳩山由紀夫総理大臣も視察に訪れたという、城南島地区のバイオエナジー株式会社と株式会社リーテムの2社を視察しました。

「生ゴミがエネルギーに
最初に訪れたバイオエナジー社は、従来、不適物が混入して焼却処理をせざるを得なかった生ゴミの中から独自の方法で食品廃棄物だけを取り出してメタンガスを発生させ、燃料電池とガスエンジンを組み合わせた「コジェネレーションシステム」により、1日で約24000kWh(約2400世帯の電気量に
相当する)の発電を行っています。
そのうち約60%は電力会社に売電をし、残りは自家消費されて、工場で使われている電力はすべてまかなわれています。
これによるCO2の削減効果は年間で約5000トンということでした。  
また、当初予定していた生ゴミのカロリーより、実際の生ゴミが高カロリーで、余剰ガスをただ燃やしている状態のため、精製して、東京ガスに売る計画を進めて いるとのことです。
札幌市も今後のごみ対策においては、家庭系・事業系ともに生ゴミの減量対策とリサイクルが大きな課題です。
堆肥化して循環型社会を目指すことは大事な取り組みですが、分別や管理、利用先の確保が大きなネックとなり、なかなか進まないのが現実です。
大都市においては、このような形での生ゴミの循環型リサイクルが非常に有効な方法であることを実感しました。

「埋め立てゼロの実現
続いて訪れたリーテム社は、使用済みの電気・通信機器類などを受け入れて、分解をし、選別され、適切な処理を行った後、高純度の原料回収をしています。  
破砕処理されたものはすべて原料として生まれ変わり、出荷・利用できるため「ゼロ・エミッション(埋め立てゼロのこと)」も実現できるとのことです。  
また、ほとんどの資源を輸入に頼っている日本では、資源の再利用、特にレアメタル(希少金属)の回収は、重要な課題です。
さらに、茨城県水戸市で誕生し、昨年には中国江蘇省に工場を新設したという成長性には、目を見張るものがあります。  
先日の新聞報道で、北海道がこのレアメタルの収集について実証実験を行う記事がありましたが、現在、回収ルートは全国にまたがっているとのことです。
電気、電信機器の製造会社が協力して、せめて都道府県単位にこのような施設が展開されれば、運搬コストの大幅な削減と同時に地域での新たな雇用につながる のではないでしょうか。



  

2010年2月16日火曜日

薫風第32号より

大島かおるの市議会リポート 「薫風」

「成長神話」から「持続可能」な時代へ
政権交代から未来を展望する

戦後日本の政治史上初めて、野党第一党が過半数を得て政権を担う日となった、8月30日から5カ月が過ぎました。
変革=チェンジを期待した国民の声に応えきれているのか? との問いに、「Yes!!」と答えられないもどかしさはあっても、永田町の風景が変わったことは確かです。
鳩山首相は指導力不足との指摘もありますが、全員野球が鳩山内閣のチームカラー。
官僚が敷いたレールを追認する閣議から、大臣同士が議論を尽くし、結果に責任を持つ「政治主導」へ。 前年度比で9兆円減少という想定外の税収見通しの中、未来につなぐ予算の実現・実行へ向けて、政権政党としての責任を果たしていかなければなりません。
今年も上田市政を支えて全力で歩んでいきます。よろしくお願いします。

「足元」を見つめなおす
・・・・・・・・・・・・・ 市民の手で未来の社会のイメージを
経済の停滞や将来の社会保障への不安。
私たちは、「成長神話」を前提として組み立てられてきた社会の仕組みそのものを根本から問い直し、そして創り変える時代に直面しています。

20年ほど前から、政府―行政―業界が一体となって政治・経済を支配した「護送船団方式」と呼ばれる仕組みの機能不全が指摘されてきました。
そして、この古い体質を引きずった自民党を「ぶっこわす」として登場した小泉政権の構造改革路は、新たな社会への道筋を示すことなく、基盤となる社会保障システムを「ぶっこわして」退場しました。
世界では経済のグローバル化が進み、国内では貧困が広がり格差が拡大する―私たち自身がどのような社会を選択するのかを、今ほど厳しく問われている時代はないといえます。
 
市民に直接サービスを提供する自治体の財政が疲弊しては、安心の社会を創ることはできません。
低賃金の非正規労働者が急増すれば、年金や健康保険制度が成り立たちません。
男性の長時間労働の規制と保育サービスの充実がなければ、女性の社会参加も少子化対策も絵に描いた餅になるでしょう。
 
朝日新聞の世論調査では、「どのような国づくりを望むか」という問いに対し、35%が「福祉国家」と答え、「平和・文化国家」32%、「経済大国」はわずか10 %しかありません。一方、日本の租税負担率は23%と、スウェーデンの49%はもとより、イギリスの38%、アメリカの26%と比べても少なく、社会的支出の対GDP比は、スウェーデン31%、イギリス20%、日本18 %、アメリカ16 %となっています。
 
国民の願いと政治の大きなギャップの原因は、旧来の政治手法の機能不全と政治不信にありました。
「あきらめ」や「お上まかせ」から脱し、支出のあり方や負担の構造について私たち自身が積極的に論議に参加する時代を迎えています。

「地域主権」と自治
・・・・・・・・・・・・・・・ 問われる「国のかたち」と「地域力」

 
民主党はマニュフェストで「明治維新以来続いた中央集権体制を抜本的に改め、『地域主権国家』へと転換する」としました。
まさに「箸の上げ下げ」まで細かく自治体を支配してきた霞が関の権限を解体して地方政府を確立していく、新しい「国のかたち」を創りあげようとする試みでもあります。
「地域主権」には地域を元気にするという目的もあります。「三位一体改革」も「構造改革」も、結局のところ地方切り捨て政策でした。

地方に自由度が全くない画一的な経済雇用対策は、一時しのぎで、ほとんど役に立たないものでした。民主党が掲げる「みどりの分権改革」は、地域の中で資源やサービスをまかなえる仕組みを自らの力で考え出すことでもあります。そのために、国が総力を挙げて支援することが求められます。
地産地消を柱にして、加工や流通も地域で連携して新たな雇用に結びつける6次産業の発想や、太陽光や風力、小水力などの自然エネルギーの利用拡大を、地域循環型の経済に結びつけるなど、新たな可能性への挑戦も始まっています。
札幌市は上田市長を先頭にして市民自治を根づかせ、市民との共同によって「新たな公共」を創り、自分たちの暮らしに必要な政策やルールを「地域力」によって決める取り組みを進めてきました。さらに情報公開と市民参加を進め、公共サービスの確保、行政改革や自治機能の強化に務めていかなければなりません。

コンクリートから人へ
・・・・・・・・・・・・・ 新たな「公共」の担い手を

「ガソリン税の暫定税率廃止は、地方自治体の道路財源を直撃する」―このことに象徴されるように、自治体財政も地方経済も、土建国家ニッポンの構造に絡め取られてきました。

高速道路やダムの見直しに対しても、地元自治体は猛烈な反発を示しています。  
しかし、自治体が今、本当に必要としているのは、市民生活とつながる公共財(生活道路、公園、公共施設、公営住宅など)の、適切な管理、補修、更新のための費用だといえます。
また、地方の生活や一次産業を支えるための基盤整備や流通網の確保には、重点化や戦略的な取り組みが求められているのではないでしょうか。
札幌市の土木費も、最盛期から比べると半減していますが、補修が追いつかない、除排雪に必要な人員や機材が確保できないなどのひずみが生じています。
 
歴代の自民党政権は、公共事業の分配をその拠り所としてきました。
小泉「構造改革」においても、国土交通省や農林水産省が行う国の直轄事業は聖域とされ、自治体には負担金としてツケ回しをする仕組みが、あたりまえのように続いてきました。
「鉄とコンクリート」が成長のシンボルである時代に、いつまでも決別できなかった結果が、800兆円もの借金だといえるでしょう。
 
地方が疲弊し、自治体財政が破綻の危機の中にあっても揺らぐことのなかった政・官・業のトライアングルが、ようやく終わりを迎えようとしています。

「事業仕分け」フィーバー
・・・・・・・・・ 求められる「選択と集中」への基本戦略


昨年11 月、予算編成を前に行われた「事業仕分け」は、繰り返しマスコミで報道されたこともあって、大きな関心を集めました。
これまで密室の中で行われていた予算査定を、公開で、市民参加のもとで行うことが新鮮であり、衝撃的でもあったのだと思います。
しかし、「事業仕分け」が万能の神かというと、そう簡単な話ではありません。

仕分け対象の事業を選ぶ基準をどうするか。仕分け人の選定方法は公平か。わずか1時間の議論で結論を出すのはあまりに拙速ではないか。
費用対効果や効率性という基準のみで事業の有効性を計れるのか。などなど、多くの課題が指摘されています。
 
そもそも、政府や自治体が行う事業や施策には、費用対効果という基準がなじまないものも多く含まれています。
科学技術の研究開発やスポーツ・文化の公的支援は、その代表といえるでしょう。
政権の「大きな物語」ともいうべき基本戦略である、政策の方向性と優先順位を明確にすることや、制度そのものの不備や問題点に踏み込んだ議論が不可欠です。
 
札幌市は、05年に行政評価制度を導入し、約1600に及ぶ事業について仕分けを行い、12 名の第三者委員による外部評価も積み重ねてきました。
議会においても、とりわけ予算・決算特別委員会では、一つ一つの事業のあり方や成果、課題についての論議が行われています。
 
「事業仕分け」は、政・官・業の癒着構造の中、観客席で指をくわえて見ているしかなかった国家予算や政策決定過程に、市民の口出しが可能なことを明らかにした政治イベントでした。

国民的な合意を形成する武器として、どう進化させていくのかが問われます。

「ひとこと」
政治とカネ
小沢幹事長の政治資金報告書問題が、鳩山政権の屋台骨を揺るがしています。あぶり出しのような検察の捜査手法、マスコミ報道(とりわけあいまいな取材源)のあり方には、確かに国策捜査の雰囲気がただよっています。しかし、億単位の巨額な政治資金に、なぜ、テレビドラマの闇の世界のように紙袋で持ち運びされたり、不動産に化けたり、記載を忘れたりするようなことが起きるのか、市民には理解し難いことだといえるでしょう。
検察の狙いは、ダム工事の入札に絡んだ談合への関与だといわれています。
贈収賄罪に問われるようなことはないと信じますが、小沢氏個人の資産なのか、政治資金管理団体「陸山会」の資金なのか、どのような性格のお金なのか明らかにすべきです。
金権体質は批判されなければなりませんし、お金の問題が政治不信を引き起こすようなことがあってはなりません。

日米安保50年
アメリカ合衆国と旧ソビエト連邦の対立による冷戦構造が崩壊して20年が過ぎました。
しかし、日本の安全保障戦略は冷戦思考から抜け出せないまま、アメリカの軍事戦略を無条件に受け入れ、防衛予算も拡大してきました。 今や日本は、世界最大の海外拠点基地となっています。  
普天間基地の辺野古移転問題に揺れる沖縄の米軍基地問題は、日米同盟を盾にして解決を先送りしてきた歴代政権のツケ回し体質が象徴的に表われているといえます。
新たな基地の固定化につながる現計画に、沖縄県民が強く反対するのは当然であり、なぜ一旦合意したグァムへの全面移転が不可能なのかの理由も明らかではありません。
政権交代は日米安保を見直すチャンスでもあります。旧政権やアメリカ政府高官の言動に惑わされることなく、堂々と議論を進めるべきではないでしょうか。


新春対談
官民連携で新しい働き方を発信
― 元気ジョブの果たす役割 ―
 
札幌市は、清掃や印刷などの業務を民間企業から受注し、小規模作業所などへ仕事を振り分ける役割を担うアウトソーシングセンター「元気ジョブ」を、昨年12 月に開設しました。
この事業は国の「ふるさと雇用再生特別対策推進事業」を活用したもので、北海道社会福祉協議会が実施する「マッチング事業(共同受注システム)」と連携して取り組まれます。
事業を受託したNPO札幌障害者活動支援センターライフの石澤所長を訪ね、元気ジョブの活動や今後の障害者の就労支援などについて伺いました。

障害者雇用の可能性

大嶋 元気ジョブが本格稼働しました。これまでにない新しい取り組みとして期待されます。

石澤 障害者1人を含む4人の営業員を雇用して活動をしています。市内には清掃、印刷、データ入力、袋詰め、ポスティング、草取りなどの業務を手がける小規模作業所が約200カ所前後ありますが、民間企業にはあまり知られていません。
施設の側も1カ所ではこなせる仕事に限りがありますが、共同受注すれば企業側のニーズにも応えられます。

大嶋 元気ジョブは業務を各施設に振り分けるだけではなく、事業規模が小さい福祉施設に安定した仕事を確保する。
また、障害者の収入の安定、雇用の促進という意味でも期待が持たれています。
また、それを当事者がやろうとすることに大きな意義があります。

石澤 2011年で補助金がなくなるので、それまでに活動の基盤を確立させなければなりません。
正直、これまで日本の障害者支援策は、補助金を渡して活動を継続させるというもので、仕事をきちんとこなして利益を得るという視点が抜け落ちている気がします。
単に役所に仕事をもらって障害者が利益を得るということではなくて、働きたくても働けない人たちの受け皿になるような場所にしたいと思っています。

大嶋 今の話はまさしく「協働」というものをどうしていくのかということにつながる話です。
これは石澤さんが参加している「雇用創出・地域戦略会議」にも大きな関係がありそうですね。

地域に根ざした活動を土台に
石澤
 雇用創出戦略会議は官民が連携して、行政の仕事の外部委託などを通じて、派遣切りされた若者や障害者らの雇用を生み出していく考えのもと、地域ぐるみで雇用問題に取り組もうというものです。
これまでの政府の雇用対策は短期雇用モデルばかりです。それとITなどのパソコン講習などが大半を占めています。
それでは絶対に就労に結びつきません。講習ではなく、まずは働くということに視点をうつすべきです。
働く場を創りだすことが何よりも大切であり、それが社会参加であり、協働ということにつながっていくのです。

大嶋 失業している人が新たな技術を勉強して違う道に行くのは相当な困難がありますが、失業している人の能力を活かす場所を提供するようなコーディネーター的なものがあれば、例えば手に職を持っているような人たちは即戦力ということになりますね。

石澤 これは簡単にいかない話かもしれません。しかし、発想の転換次第です。これまでのライフスタイルを変える必要があるかもしれません。 つまり年収は多くなくても豊かな生活だと感じられるかどうかだと思います。

大嶋 民主党はコンクリートから人を大事にするというスローガンをどう実践していくのかということが今、問われています。
官民連携のもとで取り組む雇用創出戦略会議は、人を大事にする、地域に根ざすということはどういうことなのかを再認識させてくれるものになっていくような気がします。
最後に上田市政への期待、提言をお願いします。

石澤 市長は、私たちの提案にすぐに賛同してくれました。そして、雇用問題にとどまらず他都市と連携して地域全体が元気にならなければいけない、行政だけでは雇用問題は解決できないとの持論を語ってくれました。行政主導から転換して私たちに任せてくれた意義は大きいと思います。
上田市長とともに是非、札幌から新しい雇用の形態、働き方を全国に発信していきたいと思います。