2008年4月4日金曜日

大島かおるの市議会リポート 「薫風」第27号から

市民自治さっぽろスタイル確立へ


上田市政二期目 初の本格予算

2月13 日に開会した第1回定例市議会、上田市長は「景気の先行きは不透明感が増しているが、伸ばすべきは伸ばし変えるべきものは思い切って変えていく、という基本方針を堅持しながら、『人を大事にする』『地域力を高める』『市民や企業と連携する』という3つの視点のもと、将来の世代に負担を先送りしない財政構造への転換を進める」と所信を述べながら、08年度予算を提案しました。

厳しいヤリクリが続くさっぽろのオサイフ

市民税などの独自財源の増収が見込めない中で、国からの地方交付税は58億円の削減。一方、扶助費や公債費の増は170億円にのぼり、昨年5月の「中期財政見通し」で198億円と見込んでいた収支不足額は224億円に拡大しました。このため、「行財政改革プラン」に示されている人件費や事務的経費などの内部努力による見直しを前倒しし、基金や財産の有効活用によって178億円の効果を見込み、なお不足する分は、ヘソクリともいえる財政調整基金をあてる、まさに綱渡りの予算編成となっています。前年度比〇・5%減の7762億円となった一般会計予算、将来のまちづくりに生きる施策や事業となるよう、しっかりとチェックし知恵も出していきたいと思います。

市民自治への新たな挑戦

4月には『市民まちづくり活動促進条例』が施行され、7月の北海道洞爺湖サミットを機に「環境首都・さっぽろ」宣言が行われる予定です。さらに6月の第2回定例議会には、『子どもの権利条例』と、今後のゴミ行政の基本となる『スリムシティさっぽろ計画』実現に向けての条例提案が行われることになっています。成熟期を迎えている189万都市札幌。北海道そして北方圏の拠点都市としての役割を果たしていくためには、市民一人一人が自分たちの住む地域やまちづくりに関心を持ち、行動していく責任があります。バラ色の未来を描くことはできなくても、夢と希望を持ち続ける社会を創りだすことは可能です。試されているのは私たちの『自治』の力ではないでしょうか。

札幌市2008年度一般会計

新規事業とレベルアップ事業

  • 子どもを産み育てやすく、健やかにはぐくむ街

子どもを生み育てやすい環境づくり

●ワーク・ライフ・バランス取組企業を応援●豊平区で休日保育を実施●乳幼児医療費原則無料化(8月から)●産婦人科医療機関情報の一元化と周産期医療の普及啓発●しんえい幼稚園で幼・保一元事業●公園のバリアフリー化(1カ所)とキッズコーナー設置(5カ所)

未来を担う子どもが健やかに育つ環境の充実

●北郷小学校・平岸西小学校改築●札幌市立大学に大学院設置(2010年開学)●奨学金支給枠を2010年までに倍増●幼児教育センター設置●スクールカウンセラーの派遣時間を拡大●特別支援教育支援員を120校に導入●体験型美術ギャラリーの新設●ミニ児童会館増設(6カ所)●小規模校で放課後子ども教室

  • 主体的な活動が生まれ、経済の活力がみなぎる街

市民の主体的な地域づくりの支援

●まちづくりセンター運営を地域に委託(モデル事業)●市民まちづくり活動基本計画策定と基金の造成●市民会館代替施設運営

札幌の経済を支える企業・人の支援

●小規模事業者への元気がんばれ資金●業種別懇談会など中小企業ネットワークの構築●ワンストップ型の各種就労支援●団塊の世代及び女性の「起業塾」を実施

札幌らしい新産業の育成と企業の誘致

●IT時代の著作権に関する国際会議アイコモンズ・サミット開催●インターネット上にコンテンツマーケットを創出●NPOとの連携によるフイルムコミッションの強化●「北大リサーチ&ビジネスパーク構想」の推進

  • 高齢者・障がい者へのぬくもりがあふれる街

高齢者の地域生活支援の充実

●福祉のまち推進センターステップアップ事業●ねんりんピック(09年9月開催)準備への支援●高齢消費者被害防止ネットワーク事業●社会福祉協議会で法人後見事業を開始●地域密着型特別養護老人ホーム新築(2カ所)

障がい者の自立支援の促進

●退院可能な精神障がい者の地域生活移行を支援●元気ショップ2号店開設にむけた調査●障がい者と健常者が共に働く協働事業への補助●地下鉄駅エレベーター整備(北12 条・北18 条駅)●ユニバーサルデザインの公園づくり

  • 安全・安心で、人と環境にやさしい街

水とみどりの保全・育成と創出

●植樹祭、市民メモリアル植樹園の実施●一家庭一植樹運動の推進●国際園芸博覧会(花博)構想の検討地球環境問題への対応と循環型社会の構築●円山動物園に野生復帰ゾーンと自然体験ゾーン●札幌・エネルギー eco プロジェクト(融資枠10 億円)●古紙など資源物を持ち込める地区リサイクルセンター運営●家庭用廃食油回収拠点の拡大●家庭からの生ゴミ資源化モデル事業●雑がみ分別収集モデル実験●資源物売却益の一部をごみステーション対策に還元

日常の身近な暮らしの安心の確保

●平和事業担当部署の創設と平和イベント開催●消防ヘリコプター新規購入●(仮称)安心で安全なまちづくり条例制定

災害に強い安全なまちの整備

●公共施設9カ所の耐震補強と建替え●市有建築物の長寿命化保計画の作成●土砂災害避難体制の整備

  • 文化の薫る、都市の魅力が輝き、にぎわう街

札幌の特色を活かした文化芸術の振興

●サッポロ・シティ・ジャズ開催●文化活動練習会場学校開放事業●旧曙小学校跡地に文化活動の拠点を整備●文化芸術振興条例に基づく基本計画策定

スポーツを楽しむ環境の充実と健康づくりの推進

●厚別清掃工場跡地にパークゴルフ場やリユース広場●子どもを対象にしたウインタースポーツ体験事業●子どもの体力向上を目指すプログラム開発や指導者育成

将来を見据えた魅力ある都市の整備

●札幌駅交流拠点再整備構想の策定●市民会館後継施設の整備方針検討●創成川通に親水緑地空間を創出●路面電車活用方針検討調査

新たな集客交流資源の創出と魅力の発信

●冬の大通公園にスケーティンクを開設●北海道洞爺湖サミットにあわせ子ども環境サミットや市民セミナーを開催●「食」をテーマとした新たなイベントの開催●道内市町村と連携した食と観光の魅力発信

道路利権を許すガソリン税は一般財源化を

国会では、道路特定財源を巡る論戦が山場を迎えている。民主党が①道路特定財源は地方分も含めすべて一般財源化②暫定税率を廃止し自治体の減収分は直轄事業負担金の廃止などで確保③地球環境問題への取り組みを進めるため(仮称)地球温暖税を創設する、との大綱を示したにもかかわらず、自民・公明の政府与党は、予算案と一括で衆議院での採決を強行した。いつまでも利権にしがみつき、道路を聖域化することは、絶対に許されない。

利権に群がる道路族

そもそも10 年間で59兆円の「中期計画」とは何か? 現在の税率と制度をそのままに、帳尻だけを合わせただけのものである。必要な道路は何かよりも族議員の言い分そのままに数字を積み上げ、官僚が鉛筆をひとなめして作られたものだ。天下りの温床となり、ムダがまかり通る仕組みそのものを変えることこそが、改革の本丸と言えるのではないだろうか。

地方分権に逆行する特定財源

造るか造らないかのみならず、道路の基準、使途の細目まで国が関与するこの制度は、市民に一番近い自治体が税金の使い道を判断するという、「地方分権」の流れと真っ向から対立するものである。財源不足に悩む市町村長に、地方交付税や補助金の削減で恫喝し、首根っこを押さえて「廃止反対」の大合唱を誘導する国土交通省は、まさに「悪代官」といってよい。まず、権限、財源を地方にゆだねることが自治と民主主義の原点であり、地域の活性化にもつながることを肝に銘ずるべきである。

巨龍・中国と向き合う

昨年11月、札幌市が中国への市内企業の販路開拓や観光プロモーションを目的に催している「北京・札幌節」に、上田市長を団長とする50名を越える市や企業関係者の訪問団の一員として中国・北京市を訪れた。5度目の訪中となるが、北京は3度目である。模倣品(コピー商品)対策のための特許法や商標法整備の中核となっている魏弁護士の講演。「北海道・札幌の夕べ」での中国人作家や映画監督による「中国人による中国人のための北海道観光」と題したフォーラムや、料理研究家星澤幸子さんの講演&実演による北海道料理夕食会。現在北京市7店舗、成都市2店舗を展開し、今年度中に5店舗の新規開業を準備中というイトーヨーカ堂食品売り場の視察と、現地法人城木総経理と海老子食品部長のお話。道産食品展示商談会視察。日本貿易振興機構(ジェトロ)北京センター、日本観光振興会北京観光宣伝事務所を訪問しての意見交換。中日友好協会、人民代表大会常務委員会の表敬訪問などのほか、新聞記者や北海道出身の留学生、事業家との交流など、多彩で有益な4泊5日(正味3日間)の旅であった。今年の北京五輪、2年後の上海万博開催に向けて急速な経済成長を続ける姿を脅威と見るか、巨大なマーケットととらえるか。成長に伴う環境汚染や貧富の差の拡大を後進性と片付けるか、先進国への仲間入りへの一里塚と見るか。中国の切り口は様々であり、切り口の分だけ異なる中国が見えてくる。だからこそ、中国は実際に触れそして感じてみないとわからない国でもある。東京五輪と大阪万博の時代を髣髴とさせる現代中国。かつて公害大国と呼ばれ、深刻な食品汚染も経験してきた日本。「中国産=農薬汚染の冷凍ギョウザ」の情報の洪水に流されることなく(もちろん、原因究明は重要)、よき先輩として、一衣帯水の国、アジアの大切な仲間として向き合い続けるには、巨大なパワーとエネルギーに負けない熱意と、複眼的な視点、そしてワイドショーに惑わされない冷静さが必要、と感じた旅でもあった。

厚生委員会から

共に生きる社会とは

白石区の食堂で働いていた知的障害者4人が、給料が払われず障害年金も横領され「奴隷のように働かされた」として、経営者などに損害賠償を求める訴えを起こした事件で、次のように札幌市の対応の遅れを指摘し、責任を追及しました。市の知的障害者相談所を訪れた障害者の、服装やツメの汚れなどの異常に気がついたのは06年10 月であり、07年6月に施設に移すまで、8カ月間も放置したのは怠慢である。市は食堂の経営者に対し4人が暮らす生活寮の運営費として、13 年間にわたって年二百万円の補助金を交付しており、4人の勤務や生活状況をきちんと把握し適切な指導を行う責任があったはずである。全国各地で、知的障害者の施設で年金や賃金が支払われない事件は相次いで起きており、市が障害者の立場に立ってもう一歩踏み込んだ対応をすれば事件は未然に防げたのではないか。岡田障害福祉担当部長は、「市が直接現場を訪問したことは一度もなく、事実の確認に時間を要したことは大変遺憾である」と陳謝するとともに、「このようなことが二度と起こらないよう、対応が遅れた状況を詳細に検証し、不正をいち早くキャッチし迅速に対応するための対策を早急に実施する」と、再発防止に取り組む考えを明らかにしました。自立支援法が制定され、ようやく就労や地域生活を可能にする施策の充実が図られる中で、障害者の基本的人権を踏みにじるこのような事件を二度と起こしてはなりません。私たちには、身近に暮らしている障害者と共に生きるための「地域力」が求められています。制度とタテマエに縛られる「お役所仕事」をなくし、共生社会実現に向けた取り組みを進めます。

灯油価格安定は国の責任

灯油は積雪寒冷地で生活する私たちにとって欠かすことのできない生活必需品ですが、昨年秋ごろから徐々に値上がりし、1リットル100円に手が届くまでに高騰しています。民主党・市民連合では昨年12 月3日に、上田市長に「灯油高騰に伴う緊急支援の申し入れ」を行い、市は、非課税世帯を対象に5万円を上限として貸し付ける「あったか応援資金」をはじめ様々な対策を講じています。これに対し共産党は「国が半額助成するのだから市の負担は半分ですむ」として、非課税 世帯などに一世帯あたり1万円、総額13 億円を超える「福祉灯油条例」を提案してきました。市は「行財政改革を実施している厳しい財政状況や、実施に要する経費とその実質的効果を総合的に判断し、福祉灯油の実施は困難」との見解を繰り返し表明しています。会派としても①今の交付税の仕組みでは、経費の半額とされる補助金は全く当てにできず、直接間接の事務費も相当な額に上る。②実施している自治体に比べて、既に多くの低所得者や高齢・障害者事業に取り組んでいる。③原油価格の高騰による市民生活への影響は広範囲にわたっており、今後の成り行きを含めて慎重に見極める必要があるとの立場から、条例には反対することとしました。原油価格の高騰が生活必需品にまで影響を及ぼし始めている状況を考えると、国に対し、抜本的な価格安定策と経済対策を求めていかなければなりません。