2007年8月2日木曜日

札幌市 2007年度 補正予算 ― 身近な市民生活を支え、その質を高める ― 市民と職員の力を引き出す「ゼロ予算政策」も

上田市長は、厳しい財政の中でも市長選で掲げたマニフェスト(選挙公約)76項目の全ての政策に検討着手し、うち年度内に5項目を達成、33項目で予算措置を行うなど公約実現に強い意欲で臨んでいます。

当初予算とあわせて総額7802億3400万円で前年度比0・5%の減となりましたが、市の借金に当たる市債残高は4年連続で減らし、貯金に当たる 財政調整基金も手をつけず、また、特別の予算措置をせず職員の努力でカバー、知恵と汗を活用する「ゼロ予算政策」を導入するなど苦心の跡が見られます。

特に、子どもを生み育てやすい環境づくり、安全・安心なまちづくりや市民自治の推進など、市民の身近な日常生活を支え、その質を高めるような事業に重点化するとともに、経済や雇用など札幌の活力を高めていくような事業を拡充しています。特徴的な事業内容を紹介します。


子どもを生み育てやすく健やかにはぐくむ街

妊婦検診の公費負担の拡充(現行1回を5回まで)

妊婦の健康を確保するとともに不安を取り除き、安全な出産と健康な子どもの出生のため、異常を早期に発見し適切な指導を行う目的で実施。(07年10月から、政令市ではトップの水準、約1億円)


地域主体の子育てサロン

まもなく全小学校区に開設。これまでの立ち上げ時の支援に加え、開催回数など一定の条件を満たしたサロンに継続的な支援を行う。

児童会館の夜間延長、20館から40館へ

小学生の遊び場というイメージが強い児童会館を中・高生にも開放。コンビニの駐車や公園より屋根のある温かい会館で、スポーツで汗を流し、バンドの練習や友達と語ろう。中高生の放課後・夜の居場所を倍増。(9月から)

悩みを抱えている子どもの相談体制

不登校への対応・いじめ問題の解決に向け、スクールカウンセラーを全ての小中学校へ派遣。より専門的な知識をもつスーパーバイザーを2名から5名に増員。

子育てアドバイザー

親と子を支援できる専門的な知識をもつ子育てアドバイザーの養成講座の実施。ファミリー子育てひろばを開催。

主体的な活動が生まれ経済の活力みなぎる街

市民主体の地域づくりを推進

区民協議会を中心として新たな市民意見反映の仕組みづくりを進める。また、地域が主体的にまちづくりを進めるため「まちづくりセンター」の地域自主運営化をめざし、希望する地域に必要な支援を行う。

大学は地域まちづくりのパートナー

大学の知的資源と学生の活力をまちづくりに活かすため、大学地域連携ネットワーク会議やワークショップを開催する。

ものづくり産業の革新を支援

製造業を営む市内中小企業や企業グループ等に対して、新製品開発や既製品改良、人材の育成・確保、企業ネットワークの構築への補助を行う。

食のまち・札幌を道外に発信

金融機関や経済界と連携して市内の中小食品関係企業の販路拡大を支援。

高齢者・障がい者へのぬくもりあふれる街

夜間も利用可能な訪問介護を開始

地域密着型サービスとして夜間対応型訪問介護サービスを実施する際に必要となる通信設備の整備に補助。(3事業者で全区をカバー)

障がい者の雇用の場の拡大

障がい者を一定割合雇用し、サポート体制を有する障がい者協働事業所を3カ所から6カ所へ。知的障害者を対象としたホームヘルパー3級養成講座を開始。

若年性認知症の方を支援

保健師、社会福祉士などの専門職による電話相談や研修会・交流会を実施。

特別養護老人ホーム新設

小規模の地域密着型特養を2カ所新設。当面各区1カ所を目標。


安全・安心で人と環境にやさしい街

環境首都・札幌宣言

環境憲章・行動目標の素案策定とエネルギー戦略会議の設立。大規模な太陽光発電の共同設置や「次世代エネルギーパーク」構想の検討。

花博の誘致

環境都市を国内外に発信する国際園芸博覧会(花博)について、誘致の是非を検討するための基礎調査。

循環型社会の構築

家庭ごみの減量リサイクルに関する意識調査や市民意見交換会、定山渓(生ごみ堆肥化)やススキノ地区(ごみ分別)などのモデル事業。

救急体制の向上

119番通報の発信場所が特定できなかった携帯電話・IP電話等も位置が特定できるシステムを導入して出動時間を短縮。

消費者被害の防止

高齢者の消費者被害の早期発見や救済に努めるネットワーク事業を3区(中央、北、東)で試行実施。

文化の薫る都市の魅力が輝き、にぎわう街

文化情報ステーションの開設

札幌市内で行われる様々な文化イベント情報を集約し、紹介、発信するため、地下鉄大通駅構内に開設。(10月)

都心の魅力アップ

今後の取り組むべき施策や事業を体系化したアクションプログラムを策定。実行主体となる「まちづくり会社」の設立準備などを行う。

大通り公園にスケートリンクを!

08年度の本格実施に向け、雪まつり期間に西1丁目で試行的に開設。

北海道厚生年金会館の存続

行政・経済界・市民の協働による、文化活動の拠点施設である厚生年金会館ホールの取得や運営方法の検討。


その他の取り組み

円山動物園の魅力アップ

北方圏動物展示ゾーンの再整備や、子ども動物園の学習効果を高めるため、ふれあい重視型に改修、障がい者対応トイレを設置。

山口斎場の「友引」開場

4月から里塚斎場の大規模改修で、友引翌日は一日63・2件の利用になり一時間待ち状態。交通渋滞の冬期間(12月から3月)の混雑緩和のため。

除雪体制維持のため除雪車を13台購入


咲かせよう さっぽろの花 上田市政2期目がスタート

6月7日に第2回定例会が招集され、上田市長は所信表明の中で施政方針「札幌元気ビジョン第2ステージ」を明らかにしました。

少子高齢化による人口減少社会の到来、地域間格差や経済格差の拡大、子どもやお年寄りをターゲットにした犯罪の増加など将来に対する不安の高まり、大規模災害や異常気象など地球環境問題の深刻化―将来に確たる見通しがもてない時代だからこそ、189万人市民のリーダーとして、市民の力、市民の英知を結集し未来を切り開いていくと、力強く宣言し、「まちづくりの方策」「市政運営の基本的な方向」が示されています。

①子どもを育てやすく、健やかにはぐくむ街、②主体的な活動が生まれ、経済の活力みなぎる街、③高齢者・障がい者へのぬくもりあふれる街、④安心・安全で、人と環境にやさしい街、⑤文化の香る、都市の魅力が輝き、にぎわう街、をまちづくりの基本的な方向として今年度中に実行計画を策定する。また、情報共有や市民参加、地域のまちづくり支援、人権と平和を基本とした市民自治の推進、市民サービス、人材育成、対話による「市民のための市役所」づくりに取り組み、人件費の削減、事業仕分けなど行財政改革を進めるとしています。

今年4月から施行された「自治基本条例」、「人を大事にすること」を原点としてまとめられたマニュフェストの実現によって、皆さんと一緒に「市民一人ひとりの花」を咲かせていきたいと思います。

市議会第一会派としての重い責任

22人の民主党・市民連合は、札幌市議会で初めて第一会派となり、議長ポストを得ることになりましたが、それ以外にも多くの変化があります。議会運営委員長をはじめ、幹事長会議(兼議会改革検討委員会)では座長役を務め、代表質問、委員会質問では一番手の権利を得ることになります。本会議場の議席の位置も中央から少し右よりの定位置から右端(はし)に移りました。責任与党として上田市長を支え、市民の注目する議会改革をリードしていくためにも、会派の副会長としてまた若手(一期生二期生が半分の11人!)のよき相談相手として、皆さんの期待にしっかりと応えていきたいと思います。

二つの裁判から見える「希望」

ワーキング・プア、ニート、偽装請負、はたまた「消えた年金」と、労働者の雇用環境は明らかに「使い捨て」の時代に向かっているかのようである。福祉を「くいもの」にしていると批判されるコムスンの虚偽申請問題は、日本の企業社会が19世紀にタイムスリップしたかのような錯覚を起こさせる。何でも手に入る日本に「希望」だけがない。

そんなイライラがつのる中、「女性自衛官人権裁判」と「ルミエール裁判」、二つの公判を傍聴した。状況も現場もまったく異なってはいるが、現代社会が抱える闇を浮き彫りにしているように思える。そして、人間としての尊厳、あたりまえの思いを語る彼女たちの姿に「希望」が見えてくる。

人権と女性としての尊厳を取りもどすため国とたたかう ― 女性自衛官人権裁判


6月11日に第一回弁論が行われた「国家賠償請求訴訟」。原告の女性は、深夜、宿直勤務中に泥酔した男性自衛官に呼び出され、暴行を受ける。部隊の責任者は女性の訴えを放置し、隊内の行事や通信制大学のスクーリングに参加させないなどの嫌がらせを行い、事件から約5カ月後に退職前提の有給休暇を強制する。道内のある自衛隊基地で起きた強姦未遂、勤務中の飲酒、退職強要、そして嫌がらせ。いわば組織ぐるみの人権侵害に対するたたかいである。


どんな会社や組織であっても、性的な嫌がらせや退職を強要するような行為は許されない。加害者と被害者の個人的な関係に矮小化することなく、とりわけ被害者の人権に配慮した対応を行い、安心して働くことができる職場環境を維持する責任がある。しかし、異議申し立てするよりも、我慢し、泣き寝入りすることが「自分の身を守る」最良の方法であるという「常識」がまかり通っていることもまた現実だ。社会から閉ざされ、勤務も生活も基地の中、階級が優先する自衛隊にあってはなおさらである。

そんな「常識」に立ち向かい、提訴後も続く陰湿な嫌がらせと、過酷な緊張状態の中で「私の踏みにじられた人権を取りもどすため、同じ経験をした女性の人たちに勇気を与えるため、たたかいます」と宣言する彼女の勇気は、私たちと閉塞する今の社会に対する問いかけでもある。

利用者の尊厳を守るという原点に立ち戻って欲しい ― 特養ルミエール虐待裁判

特別養護老人ホーム内での虐待を内部告発した職員、支援労組、記事を掲載した道新が、施設を運営する法人から名誉毀損で訴えられたのは、04年の10月。告発を受けた札幌市が、「虐待が強く疑われる」との中間報告を行ったその日に提訴した法人は、福祉関係者だけではなく、多くの市民から怒りと不信を買うことになる。12月には札幌市から「改善命令」が出されるが、法人は一言の反省もなく裁判は続行される。

判決では、当然にも法人の訴えは退けられる。同時に、進行していた利用者の家族からの虐待に対する損害賠償請求が認められ、法人は全面敗訴となるのだが、長沼理事長を中心とする懲りない面々は即刻控訴の手続きをとった。


内部告発者であり被告でもある多田めぐみさんは、同僚職員による虐待の事実に気づき上司や施設長に報告したが、放置され、逆に恫喝や嫌がらせが始まる。そして報復ともいえる慰謝料請求訴訟。「こんな施設から逃げ出したい」―彼女自身何度もそう思ったが、「一番辛い思いをしているのは利用者」と自分を奮い立たせたという。

この裁判は、介護保険制度が始まる際に指摘されていた様々な問題を浮き彫りにしている。施設という閉鎖された社会、劣悪な条件を強いられる介護職員、法人を含めた介護事業者のモラル、監査指導を含めた自治体の役割、などなど。多田さんが判決を受けて語ったように、「利用者の尊厳が守られ、告発してよかったと実感できる日」に向かって歩んでいきたい。

追記:

この裁判は6月11日に勝利判決しました。詳しくは http://www.infosnow.ne.jp/~sgu/sgu-rumieru/RNEWS28.htm