
札幌パートユニオンのメンバーと
2000年のスタートから5年を経過して制度の見直しが行われている。第2号被保険者を20歳まで引き下げて財源の安定をはかろうとした厚生労働省案は、介護保険への統合に反対する障害者団体と新たな負担を拒む経済団体の挟み撃ちに会い先延ばしとなった。そして、現在国会に上程されている改革案では
予防重視型システムへの転換
施設給付の見直し
新たなサービス体系の確立
サービスの質の向上
負担のあり方・制度運営の見直し
これらが挙げられている。
介護保険会計は、札幌市でも毎年10パーセント程度の伸びを示してきた。スタート時には555億円であった予算は、来年度842億円となる。当然、保険料が値上げされ自治体、国それぞれの負担分も増加してきているが、高齢社会を支える制度として定着してきているのは間違いない。制度上、財源の5割を負担することになっている国が財政圧縮に向かっている中、政策形成に市民が積極的に参加し創り上げてきた「介護の社会化」の行方そのものが問われている。
税金から社会サービスまで、あらゆる分野で負担増の議論が行われている。しかし、租税負担と社会保障負担を合わせた国民負担率をみると、日本は約 38%。これは米国と同水準で、イギリス・フランスは50%、北欧諸国は約70%となっている。一方、内閣府が実施した「年齢・加齢に対する考え方」と題する意識調査では、将来の社会保障の給付と負担の関係について「水準維持・負担増」が約6割となっている。
介護を必要とする状態になっても安心して生活できる社会制度を創るために、負担や責任を引き受けると考える市民は、間違いなく増えているのではないだろうか。
要支援や要介護1の人に利用される「生活援助」が予想以上に広がり、かつ期待された予防効果が上がっていない―これが筋力トレーニングや栄養指導などの新予防給付を導入する理由である。
介護保険制度は、各種の介護サービスを利用して高齢者が自分らしい自立した生活を実現するという理念のもとに創られた。不十分なケアプランや地域での自立を支える仕組みの未熟さを問わずに、効果のはっきりしないサービスを導入して利用を抑制しようとするのは、明らかに理念に反するのではないだろうか。5年を経ていまだに施設志向が強い現状を踏まえ、在宅支援に重点を置いた改革が望まれる。
在宅と施設の利用者負担の公平性を保つために、施設利用者の居住費用や食費を自己負担とする―その理由は「欧米諸国では、施設入所者の居住費用や食費は自己負担が原則である」としている。しかし、基本的な生活条件の違いを見ると唖然とさせられる。北欧では個室が90%を越え、ドイツでは約50%、残りは二人部屋である。トイレやシャワーも専用で、食事も好きなメニューを選べるバイキング方式が多い。日本は4人部屋が75%、トイレ・風呂は共同、食事のメニューも時間も決められている。さらに、年金制度の格差も歴然としている。こんなギャップを隠したまま、都合のいい論理のみで一方の負担を引き上げる。騙(だま)されないようにしなければ。
昨年夏、勇気ある内部告発によって明らかになった、特別養護老人ホームでの虐待問題。二度にわたって開かれた厚生委員会での厳しい指摘を踏まえて、札幌市は異例とも言える「改善命令」を行い、施設側からはこれに対する「措置結果報告書」が提出された。その後、保健福祉局では2回の確認調査を行い、改善に向けての体制が整いつつあるとされている。
しかし、最近の新聞報道によっても、介護施設職員の3割が入所者に憎しみを感じ、6割がひもで縛り付けるなどの身体拘束を経験していることが明らかになっており、虐待を防止するためには、法的な整備を含め総合的な取り組みが求められる。
施設の適切な運営を促すために利用者の聞き取り調査を行うなど、実態の解明を行うのは自治体の責務といえる。一定の状況のもとでは、立ち入り調査などによって命令・指導など迅速な判断をし、改善状況についての確認調査を継続するなど、より強い指導権限が求められる。
外部機関による第三者評価が施設の経営者や職員に緊張感を生み、虐待の防止のみならずサービスの質の向上につながることは明らかである。地域やボランティアの人たちと積極的な交流を行っているかも情報公開の一つの手段として重要だ。評議員や理事会の構成メンバーも施設運営の理念や質を判断する要素となる。
石川県のグループホームで起きた殺人事件に心を痛めている福祉関係者は多い。パートで夜勤専門、一人で認知症のお年寄りを支えていた。 この事件の背景には、情熱を持って福祉の現場を支えている若い人たちが希望を失っていく現状がある。パートや派遣などが職員の半数以上を占めるようでは、技量や資質の向上をはかるための研修や日常の指導は不可能といってよい。
また、人件費を不当に低く抑えて過剰な余剰金を生み出している法人も多い。ガイドラインを示すなど、職員の処遇改善への努力が求められる。
(薫風第18号より)
上田市長は、「かつて経験したことのない極めて厳しい財政状況の中にあっても、『地域におけるまちづくり活動の推進』『子ども関連施策の充実』『高齢者や障がいのある方の社会参加の促進』など、施政方針の基本理念である『市民自治が息づくまちづくり』を推進するための取り組みについては重点化をはかり、『元気ビジョン』の実現に向けた成果を実感できる予算編成を行った」と、議会冒頭にその所信を明らかにしました。
さらに、市役所の縦割りを取り払うための「部局間の連携」、市民、NPO、企業とともに取り組む「民との連携」、「北海道や近隣自治体との連携」によって、新たな知恵や発想が「集まり、つながり、広がる」まちづくりに取り組むことを宣言しています。
生活保護などの扶助費や国民健康保険料金を軽減するための繰り出し金が増え、また、これまでの都市基盤整備のために行った借金(市債)の返済がピークを迎え、歳出が増えること。歳入では、引き続き厳しい経済雇用環境が続くことが予想され市税収入の伸びが見込めない一方、小泉政権が進める三位一体改革により税源委譲のないまま地方交付税や補助金が削減され、さらには、将来交付税で補填(ほてん)するとされていた市債についても約束が守られるかどうか危うい状況にあることなど、自治体財政はまさに転換点を迎えています。
昨年12月に公表された「財政構造改革プラン」では、05年度に約242億円の収支不足が発生する見込みとされていましたが、事務事業の見直しの前倒しによって143億円、企業会計(交通事業、下水道事業)に対する繰出しの工夫、財政調整基金(貯金)の取り崩しによって何とか解消することができました。しかし、まだまだ厳しい財政運営を迫られることが確実なこれからの5年間、収入の不足を借金でまかなうという「悪魔の誘惑」は何としても断ち切らなければなりません。
いち早く、持続可能な財政構造への転換を進める上田市長とともに、「自治と分権」の時代に果敢に挑戦します。
(薫風第18号より)