2014年10月7日火曜日

「議員辞職を求める決議」の提案理由説明全文



テレビのニュースでも報道されましたが、9月22日(月)に開催された、平成26年度第3回定例市議会本会議でおこなわれた「金子やすゆき議員に対する議員辞職を求める決議」の提案理由説明全文を掲載します。


今日明日の二日間、国連本部で開催される先住民族世界会議に、アイヌ民族2名が初めて政府代表団の一員として出席するとの報道がありました。

アイヌ民族を代表する発言が、アイヌ民族の権利回復の歩みを進める大きな力となることを願い、本決議案の提出会派であります、公明党、日本共産党、市民ネットワーク北海道、改革および民主党・市民連合所属議員全員、並びにみんなの党・木村議員を代表して、以下提案理由を述べてまいります。

まず、アイヌ民族が先住民族であることについて、私たちの歴史的な立ち位置を確認したいと思います。

明治時代の1899年に制定された「旧土人保護法」が、アイヌ民族を「旧土人」と定め、土地の没収、日本語教育の義務化、漁業・狩猟の禁止など、保護とは名ばかりでの「同化政策」の下、土地や仕事をはじめ独自の文化や言葉を奪い、差別を助長し固定化する役割を果たしてきたことは皆さんご承知のとおりです。

不幸なことに、政治の怠慢から新憲法の時代になっても「旧土人保護法」は廃止されることなく生き残りました。1970年代からの、アイヌ民族による権利回復運動の広がりを背景に、1984年、当時の北海道ウタリ協会総会においてアイヌ新法制定に向けた基本案が了承され、19887月には北海道議会において新法制定を求める意見書が、全会一致で採択されます。そして、約10年の議論を経てようやく1997年、「旧土人保護法」を廃止して「アイヌ文化振興法」が制定されますが、「民族」や「先住性」についての記述がなかったため、多くの批判にさらされました。

さらに10年、国会や有識者会議、国連での議論が積み重ねられて、07年に「先住民族の権利に関する国連宣言」に我が国も署名して採択され、08年には衆参両院において「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が全会一致で採択されます。

決議には「法的には等しく国民でありながらも差別され貧窮を余儀なくされたという事実を、私たちは、厳粛に受け止めなければならない」と記され、先住民族としての権利回復のみならず、アイヌ民族との共生社会を目指す新たな歩みが始まりました。
このような歴史を踏まえれば、「アイヌ民族なんてもういないんですよね」との発言や、国会決議が「なんの議論もなく通ってしまった」「旧土人保護法」が「アイヌの生活を向上させる役割を続けてきた」との主張の誤りは明らかです。
金子議員の民族問題に関する理解は、極めてお粗末と言わなければなりません。

中国のチベット族やウィグル族問題を例に出して、「民族には紛争という言葉がつきものです」としていますが、民族問題の現われ方は、歴史的背景や地理的、社会的な条件によって全く異なることが常識です。

国民国家への移行の過程における「同化政策」や権利回復が問題とされている先住民族問題と、国家の統合や分離をめぐって衝突している民族問題を同列に扱う議論は、論理的に成り立たないと知るべきです。

また、「同じ日本人として平和に暮らしているのに」という言い訳は、民族問題や差別問題に無理解か意図的に目を背けようとする人が使用する常套句であることを指摘しておきます。さらに、アイヌ民族に関わる様々な施策や事業を「利権」「特権」と決めつけていることは、あまりに短絡的です。
戦後も「旧土人保護法」が半世紀にわたって生き続け、就職や進学などで差別され、北海道が実施した生活実態調査においても、平均的な道民との経済格差は解消されていません。

憲法にもとづき、格差是正のために積極的な措置を講じることは民主主義国家として当然であり、私たちの責務でもあります。

制度や事業の運用面で、不備や不正と思われる点があれば、それを正していくのは当然のことと言えますが、「利権」「特権」と断ずる根拠は何も示されていません。
ましてや、「私も選挙に落ちたら○○○になろうかな」との書き込みは、差別意識がそのまま表わされているものです。

差別の再生産をやめようと言いながら、アイヌ民族に対する憎悪や差別を扇動しているのは、金子議員自身であります。
以上、金子議員が「アイヌ民族なんてもういない」とする様々な説明に対して、その誤りを指摘してまいりました。
「滅びゆく民族」とされる苦難の歴史を強いて来たのは、ほかでもない私たちが住む日本という国家です。そして、アイヌ民族であることを隠して生きなければない社会が今も存在します。
国連人種差別撤廃委員会は8月末、日本の人権状況の悪化に強い懸念を示し、日本政府に対し、「国連人種差別撤廃条約に依拠して、民族差別禁止のための包括的な立法処置をとる」ことを強く求めています。

また、国連人権委員会からは「アイヌ文化振興法」を見直し、アイヌ民族の政策立案や土地などに関する権利を保証すべき」との勧告が出されている国際社会の現実に、私たちは誠実に向き合う必要があります。
もとより、議会及び議員は言論の自由のもとで様々な課題について議論・発言することにより、市民の負託に応えることが期待されています。
しかし、「何を言っても自由であり、許される」ということではありません。

誤りを認めずに、自分に都合のいい断片的事実や根拠のない言説をつなぎ合わせて自説に固執する態度をとり続けることは、決して許されないとの姿勢を、札幌市議会の決意として示すべきと考えます。
最後に、アイヌ民族の権利回復と、民族の誇りが尊重される共生社会の実現に向けて、更に歩みを重ねることを誓い、同僚議員の皆さんの賛同を心からお願いして、提案説明を終わります。ご清聴ありがとうございました。