2018年3月28日水曜日

薫風50号から


大島かおるの市議会リポート
足もとを見つめなおす
―混とんとする社会の中で―

シバレル2月が過ぎ積雪も例年並み、平昌(ピョンチャン)五輪の熱気も過ぎホッとしていると3月の大嵐。インフルエンザはA型B型ともに大流行という今冬、皆様にはいかがお過ごしでしょうか。
札幌市議会第一回定例会は2月20日に開会し、3月29日までの会期で来年度予算案の審議が行われます。
秋元市長は、「札幌が飛躍し、目的を遂げていく」との想いを込めて、任期の最終年度を迎えるこの一年を象徴する一字として「翔」の字を挙げました。
初の一兆円越えとなる一般会計予算が、着実に将来の札幌のまちづくりにつながるよう、議会の役割を果たしていきます。

あいつぐ看板の掛け替え
第2次安倍政権の政策スローガンを見てみます。
あまりにも有名で、しかし古びてしまったのは「アベノミクス三本の矢」。
そして「地方創生」。新三本の矢と称する「一億総活躍社会」。
お次が「働き方改革」で、ついに「生産性革命」と「人づくり革命」。
辞書には「革命―物事が急激に発展、変動すること」とありますが、なに(・・)が(・)どうして(・・・・)どう(・・)なる(・・)のか、具体的な説明は何もありません。政策目的があいまいなまま、効果についての検証も十分には行われずに、次々と看板を掛け替えて国民の目をそらしているのではないでしょうか。   

開会中の通常国会での「目玉」とされていた「裁量労働制」の対象拡大は、厚労省のデータ捏造(ねつぞう)であえなく頓挫。森友問題では新たに決裁文書の改ざん問題が浮上するなど、安倍政権の「おごり」と「ゆるみ」は止まるところを知りません。

明治礼賛でいいのか!?
今年は明治元年から150年。政府は「明治の精神に学び、更に飛躍する国へ」として、様々な記念行事を計画しているようです。文明開化・殖産興業・富国強兵など、明治(=維新)の英雄たちは確かに、西欧列強と肩を並べる近代国家への転換を果たしました。

一方、王政復古の号令のもとに誕生した天皇制国家は、日清・日露戦争、第一次大戦を経て、無謀な大東亜戦争へと暴走していきます。「錦の御旗」は「天皇の神聖化」へとつながり、「昭和維新」を唱える青年将校のテロによって、立憲主義と民主主義が葬られた歴史があります。
官軍=開明派=正義、賊軍=守旧派=悪としてこれまでは常に勝者の側から語られてきた明治維新。「薩長史観」とも称される近現代史を、視点を変えて問い直す必要があるのではないでしょうか。
おりしも、松浦武四郎による「北海道」命名から150年。アイヌ民族との共生を願った武四郎の歩みと「開拓」の歴史にも、目を向けたいものです。

東日本大震災から7年
今年もまた、全国各地で様々な行事が行われ、テレビや新聞での特集が報道されました。多くの被災地では、復興と再建に向けたたゆまぬ歩みが続けられる一方、その歩みから取り残される多くの人々がいます。いわば「被災地の分断」のような状況が生まれつつあることに目を向ける必要があります。

とりわけ福島第一原発では、30~40年かかるとされる廃炉作業はまだ入り口の状態であり、増え続ける汚染水と除染土の行き先さえ決まらず、今なお約5万人が避難生活を続けています。

政府や東電は、放射能汚染による「帰還困難区域」を縮小し、賠償金の打ち切りによって帰還を促しますが、故郷の再生にはほど遠い現実があります。

「復興五輪」の掛け声のもと、一人一人の思いは切り捨てられて、再処理や廃棄物処分の問題は棚上げされたまま、原発の再稼働へと進む日本。その場しのぎを絵にかいたようなエネルギー政策と復興事業を見直すことこそ「未来への責任」と言えるでしょう。

全世代型社会保障!?
安倍首相が昨年の衆議院選挙で突然打ち出した「全世代型社会保障」。民主党政権の末期、自民・公明・民主による三党合意―消費税の引き上げと、税と社会保障の一体改革―の中に、民主党が描いた未来図でした。

そして、人づくり革命の「2兆円パッケージ」は、民進党が準備した「オール・フォー・オール」の政策を盗用したものです。

当然、現実を無視した「無償化=バラマキ」は厳しい批判を浴びています。「まず、待機児童の解消」「保育士や介護士の待遇改善」「義務教育の私費負担をゼロに」など、課題は切実です。
雇用を取り巻く現状にも厳しいメスを入れる必要があるでしょう。

経済のグローバル化や産業構造の変化によって、中核を担うエリート層は残業代ゼロでも会社に忠誠をつくし、周辺的な労働は非正規で使い捨てという格差の固定化が進んでいます。労働市場の二極化と分断は、社会の分断につながります。

憲法を政争の具にしている余裕などありません。私たちが目指すべき社会の姿について、地に足の着いた議論が望まれます。


未来への土台を築く
内外を取りまく不透明な状況が続く中、札幌のまちづくりは成長期から成熟期を迎え、都市機能のあり方についての目標を共有し合意形成を図っていく必要があります。

秋元市長は予算編成にあたり、重点分野として、子どもの育成支援、女性の活躍推進、経済・雇用分野を挙げ、部局間の垣根を越えて、市民の視点に立った事業の再構築、投資効果のある事業の厳選に臨んだとしています。

主な内訳では、子ども関連予算は前年比11・1%増の1720億円。建設費はほぼ前年並みの1116億円。まちのにぎわいを創る再開発事業では、1900億円の民間投資を見込んで約300億円などとなりました。

一方、借金でもある市債残高は、地方交付税の振りかえとされる臨時財政対策債の増加もあり、1兆1227億円と約400億円の増となり、貯金(財政調整基金)から19億円の取り崩しが予定されています。

日ハムのボールパーク構想の行方はまだ見通せませんが、新幹線ホーム位置がようやく決まり、JR札幌駅南口周辺の再開発に向けた計画作りもようやくスタートします。新札幌市民芸術劇場が10月にオープン。懸案だった大型国際会議場(MICE)の整備計画も明らかにされ、国際観光都市としての具体的な取り組みが試されることになります。

秋元市長が描く「誰もが安心して暮らし生涯現役として輝き続ける街」「世界都市としての魅力と活力を想像し続ける街」の実現に向けて‼
リニューアルした下水道科学館を視察















寄り添い、支えあう新しい枠組みを
―東区「自立支援住宅」の火災から―
最後の砦 
11人が犠牲になった「そしあるハイム」の火災事故。同様のケースは、昨年5月に北九州市、8月には秋田県横手市と相次いでいます。
入居者に共通するのは、元ホームレスだったり、アパートの入居が困難、あるいは一人暮らしが難しい高齢者や障がい者であること。見守りや支援が必要だが制度のはざまの中で行き場のない人々だということです。

道内には同様の施設が200ヵ所以上あるとされていますが、公的な支援はほとんどなく民間の善意に頼っているのが現状です。
11人が犠牲となった「ソシアルハイム」





歩道に設置された献花台にて

 





 






 




無策の厚労省
出火原因の究明や避難体制の点検・強化はもちろん大切ですが、「お上」意識が治らない厚労省の大臣や役人から真っ先に出る言葉は「規制強化」と「行政指導」。有料老人ホームではなかったのか、スプリンクラーの設置義務はなかったのかといった建て前論でしかありません。

秋元市長は記者会見で「現行制度で対応できないことがあれば、新たな制度や仕組みを考えていくことになる」と述べています。

厚労省は、老朽化した木造建築を活用してもなお、厳しい運営状況や、縦割りの制度からこぼれ落ちる多くの人々の現状を正面から受け止め、速やかに、住宅の確保や生活支援のあり方についての議論を始めるべきでしょう。

リスク社会
現代社会は、自己責任論が蔓延し将来への不安が広がり続けています。失業、高齢単身、長期の引きこもり、家族との絶縁、多重債務、障害など、突然生活の糧や住居を失うリスクは、特別なことではなく誰もが負っていると言えます。

近年、サービス付き高齢者住宅が急速に増えていますが、年金で月々の費用をまかなえる人はそう多くはありません。無年金や低年金などによる行き場のない高齢者が、今後さらに増加すると予想されています。

誰も排除しない
老人福祉法に基づく「有料老人ホーム」は、一人以上の高齢者に対して、入浴、排せつ、食事など日常生活におけるサービスを提供する施設と定義されています。

しかし、無理やり制度の枠に押し込むことで、地域に存在する多様なニーズを見失ってしまうことを、今回の火災事故は示しているのではないでしょうか。

私の周りにも、古い寮を利用した高齢者下宿で、食事や買い物、生活相談などほんの少しの支えを受けて、人としての尊厳を失わず、寄り添いながら暮らしている人たちがいます。
見守りや比較的軽い支援を付けた「誰でも入れる生活付き共同住居」のような、制度の創設が望まれます。

会派名が変わります
昨年10月の衆議院選挙で、立憲民主党と希望の党に分裂し、結局民進党も存続しているというややこしい状況。皆さんにもご心配をかけています。
西区では、一区は道下大樹が選挙区で、四区は本多平直が比例で、共に立憲民主党公認で当選を勝ち取ることが出来ました。

現在20名の仲間で秋元市政を支えている「市議会民進党市民連合」は、4月1日から「市議会民主市民連合」と名称を変更します。

2017年12月8日金曜日

薫風49号から

膨らむ不安と、細る民主主義

国難突破??
突然の解散総選挙は、どのような経過の中で行われたのでしょうか。
6月に通常国会閉会後、野党は、森友・加計学園問題や、PKO活動の日報隠しを明らかにするために、臨時国会の召集を求めていました。

しかし、安倍首相は開催を9月末まで引き延ばし、ようやく国会を開いたと思ったら冒頭での解散を強行。
自己保身解散と批判され、明らかな憲法違反を覆い隠すための言いわけが「国難突破解散」―何と大げさで時代錯誤な表現でしょうか。
国難の一つは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル発射実験と核開発問題だと言います。

Jアラートが象徴するように、今すぐにでも戦争が起きるかのような危機を煽(あお)り、トランプ大統領にただただつき従う姿は、自作自演の一人芝居を見ているようです。

二つ目は、消費税の使途変更だと言います。
5年前、消費税引き上げを決定した自民・公明・民主の三党合意は、「全額、社会保障費の安定財源と子ども施策に」というものでした。
二度の消費税引き上げによって不足した財源を借金で賄い、その借金返済に消費税を充てることを巧妙に隠しているのが、「全世代型社会保障」という大風呂敷のからくりです。

闘い済んで…

解散総選挙の流れが決定的になると、吹き荒れたのが「小池旋風」
「排除します」の一言で失速すると、新しく誕生した立憲民主党への強烈な追い風。
極端な政治主張によって社会を分断し、イメージ優先の「劇場型政治」で期待を膨らませる―トランプ現象はアメリカだけの出来事ではなく、日本でも芽生え始めているように思われます。

北海道では一区をはじめ、有権者の皆さんから多くの支持をいただいた立憲民主党ですが、全国的には政権与党の圧勝という結果となりました。
しかし、安倍首相が言う「国難」をはじめ多くの課題が、「まっとうな議論」のないまま先送りされ、政治へのあきらめが広がっていくことは、何としても止めなければなりません。

「学校」で、「会社」で、「世間」で、生きづらさや閉塞感を抱えながら、政治をあきらめずにいる多くの人たちとつながる回路を創りだす道を、悩み、つまずきながらも歩み続けたいと思います。

例年より早い積雪となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
日々、ワイドショー化された政治の動きに、不安や怒りを膨らませている方も多いと思います。

「日ハムボールパーク構想」「冬季オリ・パラ誘致」などにかき消されがちな、札幌市の将来のまちづくりに関わる課題、皆さんの率直なご意見をお待ちしています。

2017年10月11日水曜日

大島かおるの市議会リポート 



 薫風 第48号から 2017年10月1日

地域からの政治改革を
民進党政令指定都市政策協議会会長に就任

全国20の政令指定都市の民進党系の議員で構成する「政策協議会」。8月22日に新潟市で開かれた第13回総会で、会長に選出されました。
「政策協議会」では年2回の研修会を行い、先進的な政策を学び意見交換を積み重ね、党本部に対しても要望・提言を行ってきました。
大役ですが、政治不信が広がる中、市民・地域と政治の回路がしっかりとつながるよう全力を尽くします。
会長就任のご挨拶

膨らむ不安と、細る民主主義

めぐみの秋に…
秋も深まり、大自然の恵みに感謝する催しが、札幌市内はもとより道内各地で行われていますが、今年もまた「記録的な」大雨による災害が、全国各地で発生しました。
台風による被害や集中豪雨のニュースを見るたびに、大規模な気候変動=地球温暖化について考えさせられるのですが、北海道の秋の味覚の代表であるサンマとサケの不漁が続いていることも、その影響なのかと不安になります。

そして、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル発射と核実験を巡り、「犬」「ロケットマン」とお互いをののしりあう姿が毎日映し出される異常な世界。明日にでも世界を破滅させる「核戦争」が起きるかのような恐怖を、私たちに刷り込ませているかのようです。
そんな秋に、突然の解散総選挙。問われるべきは政党であり候補者のはずですが、立場が逆転し、私たちの側が突然答えを迫られる受験生のようにさせられていませんか!?

Jアラート…
朝7時、突然鳴り響く呼び出し音。見ると「ミサイル発射、ミサイル発射。うんぬんカンヌン」―いったい何時に発射されてどこに向かって飛んでいるのかさっぱりわからない。さらには、実験なのか攻撃(=戦争)なのかもわからない。
これでは、私たちも自治体も判断のしようがありません。

安倍首相は、今回の弾道ミサイル発射について「すべてを把握していた。」はずですが、なぜ国民に対して正確な情報を伝えようとしないのでしょうか。危機を煽(あお)れば、国民は全てつき従うと思っているのでしょうか。
また「日本にとって最大の脅威」とも言っていますが、すでに中距離ミサイル実験の成功によって、日本は射程内にあります。「最大の脅威」と言うのであれば、何よりも「核兵器禁止条約」に加わり、東アジア地域の非核化に向けてリーダーシップを発揮すべきです。

「密室政治」が問われ続けています。そして「寄らしむべし。知らしむべからず」―権力にすり寄るものには便宜(=忖度?)を与え、疑問や異議申し立ては力で封じ込める手法が幅を利かせています。
東京都政を「ブラックボックス」と批判して登場した小池知事もまた、自らの政治判断の説明責任を果たしているとは思えません。

「決められる政治」がいつのまにか「強権政治」に衣替えをして、民主主義が市民から遠ざかっていく―STOPするのは、私たち一人ひとりの力です。

「復興」への重い課題
東日本大震災の被災地を訪ねて
東日本大震災から早や6年半が過ぎました。多くの被災地は復興に向けて着実に歩んでいます。しかし、福島第一原発事故の放射能汚染により帰還困難区域に指定された地域では、まだ手がかりさえつかめない状態です。
7月、同僚議員と共に宮城県仙台市、山元町、福島県浪江町、富岡町を訪ねました。
浪江町「まち・なみ・まるしぇ」にて
富岡町職員(左から3、4番目)と、「さくらモールとみおか」の前で

帰還への苦渋の選択
福島県浪江町

原発城下町と称される双葉郡5町の中で、一番北側に位置する浪江町。人口2万人ほどの農業の町は、バラエティー番組「ザ!鉄腕!DASH!」のDASH村があった町としても知られています。
今年3月31日、市街地を中心に町内の3分の1の地域で「避難指示」が解除されました。人口では8割が対象になります。

昨年9月の町民アンケートでは、「戻りたい」17・5%、「判断がつかない」28・2%、「戻らない」52・6%との結果。南相馬市までの常磐線の開通、診療所の開設などは明るい材料ですが、放射線量への不安や農業の再開が見通せない中での決断でした。
町議会でも賛否両論がある中、「これ以上帰還が遅れるとまちがなくなってしまう」との危機感が、まさに「苦渋の選択」となったわけですが、今後は住民一人一人が「悲しみ、悔しさ、無念の思い」の中での決断を迫られることとなります。

仮設商店街で

雑草が生い茂る田畑を抜け、人気のない市街地にある町役場の敷地内に、仮設商店街「まち・なみ・まるしぇ」はあります。B1グランプリでお馴染みの浪江焼麺太国のアンテナショップやカフェ、コンビニ、コインランドリーなど10店舗が並び、そこそこにぎわっているように見えました。
しかし、商店街の浅見事務局長の話では「近隣の飲食店がまだ再開しておらず、ここに集中しているだけ」とのこと。除染や家屋の解体作業の作業員の出入りは今後増えていくと予想されますが、1割に満たない帰還者の中での厳しいスタートです。

模索の日々続く
福島県・富岡町


今年4月1日に避難指示が解除されたのは、町面積の約3割、住民の7割が対象になります。
くしの歯が抜けるように解体された建物が目立ち、人通りもない商店街で、1軒だけ「営業中」ののぼりを掲げる金物店があります。
居住制限地域に指定されていた2013年に、復興事業の作業員が使用する工具や消耗品を販売するために再開しましたが、他の商店主が「戻る」という話は聞こえてこないと言います。
町民自慢の桜のトンネルで有名な夜が森地区も、まだ「居住制限地域」の中です。


復興への足がかり

今年3月に国道6号線沿いに、スーパー、ドラッグストアー、ホームセンターなどが入る複合商業施設「さくらモールとみおか」が開業し、周辺にある公設の診療所や復興住宅などの真新しい建物が、帰還への希望を象徴しているように思えます。
来年4月の小中学校の再開も決定され、住宅の解体―再建への動きも増えてきており、東京方面に向かうJR常磐線も10月には運転再開とのことです。
一方「時給1300円でも人が集まらない」「帰還が先か、環境整備が先か―まるでニワトリと卵だ」など、条件整備に取り組む自治体職員の深いため息も聞こえてきます。


6年半の空白と放射能汚染

福島復興局が毎年行っている住民意向調査では、浪江町、富岡町ともに「戻らない」と答える割合が5割を超えているように、6年半という年月は、住民の意識に大きな変化をもたらしています。

新しい仕事に就いたり子どもの学校生活など、避難先で新しい生活基盤が出来るのは当たり前のことであり、生活インフラが未整備のため過大な負担を強いられる現状では、やむを得ない選択でもあります。
また、除染作業が進み政府の安全宣言があるとはいえ、平常よりひと桁以上高い空間放射線量は、とりわけ子供のいる世帯にとって、帰還への気持ちを削ぐ大きな要因となっているのではないでしょうか。

馬場浪江町長が「まずは町の基盤を残す〈まちのこし〉」と語るように、自治体の悩みは深い。
福島第一原発のお膝下の双葉町、大熊町ではいまだに帰還の見通しが立たない中で、このままでは忘れられ、見捨てられてしまうのではないかとの危機感も大きい。
一方、帰還への取り組みは自治体任せであり、避難指示が解除された地域の住民は、東京電力からの補償金が打ち切られることになります。

号令をかけるだけのこれまでの政府のやり方では、帰還する人としない(できない)人との新たな対立や分断が起きてしまいます。
政府には、帰還する人も避難生活を続ける人も、どちらも故郷の復興に希望を託すことが出来るよう、経済的、社会的、健康的なサポートに責任を持つこと、私たちには、住民の決断に寄り添い続けることが求められています。

津波の記憶鮮明に
仙台市・荒浜小学校

震災遺構として仙台市が整備した旧荒浜小学校は、今年4月30日から一般公開が始まりました。海岸から約700m内陸に位置する荒浜小学校は2階部分まで津波が押し寄せ、児童や教職員、住民ら320人が屋上に避難して難を逃れました。
約800世帯、2000人が暮らしていた荒浜地区は現在、住宅の新築が出来ない災害危険区域に指定され、コンクリートの土台だけが残されています。海岸には長さ830m、高さ7・2mの防潮堤が完成し、太平洋を望むことはできません。

2階部分まで津波が押し寄せた荒浜小学校



震災メモリアル事業

校舎の1・2階は被災した当時のまま残され、剥がれ落ちた天井や傷ついた教室の床、倒れたベランダの壁などが、津波の破壊力を物語ります。

3・4階は、津波の発生時から避難状況の生々しい映像や写真、震災前の暮らしを伝える映像や模型の展示などがあり、訪問者を引き付けます。

脅威を伝えるだけではなく、津波で失われた記憶をも復元しようとしているかに思える震災遺構―未来の世代への貴重なメッセージとなるでしょう。
一方、集団移転によって空いた広大な跡地利用は、ようやく基本方針が決まったばかり。今は、南北を貫く県道のかさ上げ工事のトラックが行き交っています。本格的に始まる震災メモリアル事業が、美しい砂浜を隔てる巨大な防潮堤によって象徴されることにならないよう、今後の「復興」事業も注目していかなければなりません。

新たなまちづくりへ
宮城県・山元町

宮城県南部に位置し、特産のイチゴやリンゴ栽培、米作が基幹産業の山元町は、約40%が浸水し、常磐線沿いにあった6つの集落が壊滅、600余名の死者を出す大きな被害を受けました。

札幌市では震災翌年の4月から、都市計画や区画整理などの課長・係長職7名を長期派遣(現在は3名)して、復興・復旧事業の支援を行っています。

大胆な移転計画

町は、常磐線を山側に移設し、新駅予定地など3地区に新市街地を造成して集団移転を図り、コンパクトシティを目指す復興計画をつくり、いち早く実行に移しました。
昨年12月にはJR常磐線が運転を再開し、駅周辺には規模は小さいながら新興ニュータウンの雰囲気が漂っています。復興公営住宅はすべて完成し、129戸あったイチゴ農家を52戸に集約する「イチゴ団地化整備事業」によって、生産量は震災前の水準に回復しているとのことでした。
今後は、600haを超える規模の水田整備事業や災害避難道路、防潮林の整備が進められることになります

マンパワーが不足

齋藤俊夫町長は挨拶で「震災から6年が過ぎ、ハード面では8割程度復興したが、多くの事業をこなしていくには、マンパワーが圧倒的に不足している」と話されました。
町の年間予算規模は、震災前の55億円に対して、震災後の5年間は平均400億円と約8倍になりました。全国の自治体からの応援で、何とか市街地の整備事業に目途はついたようですが、ソフト面での遅れが懸念されるようです。

町では現在280名の職員のうち87名が全国の自治体からの派遣職員となっています。阿部町議会議長が思わず「被災地域から出ていた議員は、みんな引退してしまった。悩ましい。」と漏らしたように、新市街地と旧市街地との意識の違いや、新たなコミュニティづくり、将来の財政負担など、今後の課題と向き合う人材の育成が求められています。
山元町役場。隣りは阿部均町議会議長